列王記第一12章-4(20-24節)
❹イスラエルの分裂
20,全イスラエルは、ヤロブアムが戻って来たことを聞いたので、人を遣わして彼を会衆のところに招き、彼を全イスラエルの王とした。ユダの部族以外には、ダビデの家に従う者はいなかった。
❹20-24節:イスラエルの分裂・・・ヤロブアムが「全イスラエルの王」に就任することに関して、ヤロブアムと10部族の族長に躊躇い(ためらい)はなかったのでしょうか。「ヤロブアムを全イスラエルの王にできる」根拠を、彼らは持っていたのです。その根拠とは次の3点です。
①ヤロブアムはエフライム部族です。エフライム部族の族長を辿ればヤコブの息子ヨセフに辿り着きます。ヨセフはヤコブ一家を危機から救い出した立役者です。そこで思い出してほしいのは、ヨセフ家の家系です。ヤコブ存命中にヤコブはヨセフの二人の年長の子供、マナセとエフライムの出生順を入れ替えて、二番目に生まれたエフライムを長子にし、子孫の繁栄を預言していたのです。(創世記48:19)
②ユダヤ人が約束の地を征服した時の指導者ヨシュアはエフライム部族でした(民13:8、14:6-9)。この時他の部族の斥候はカナンに向かうことを躊躇(ためら)っていたのです。エフライム族のヨシュアの進言がなければ、イスラエル定住はあり得なかったのです。
③エフライムの部族は士師の時代、その領土内で契約の箱を守り、犠牲を払ってイスラエル全家の為に3つの大祭を主催し。イスラエルのアイデンティティを守っていたのです(ヨシュア18:1)。この3大催事を守り抜いたからこそ、エフライムは12部族の事実上の首都と言えるのです。
ところが、エフライム族以外のサウルやダビデがにわかに登場し、あれよあれよという間に王権を奪い取り、首都をエルサレムに勝手に遷都してしまうのです。ペリシテ人などの外敵に立ち向かい駆逐してくれたことは確かに有難いことです。しかし行き過ぎです。その後もエフライム族は王権を取り戻すために何度も画策してきましたが、時代はダビデ家に傾いていったのです。(士師8:1,12:1-3,Ⅰサムエル22:7, Ⅱサム2:12-4:12)。ソロモンが死に時代はダビデ家の終焉を迎え、レハブアムの横暴ぶりは目に余るものがあり、「ユダの部族以外には、ダビデの家に従う者はいなかった。」のは当然だったのです。いよいよ新時代到来と思っていたのが他ならぬエフライム族のヤロブアムだったのです。正に「この恨み、晴らさずにおくものか」の好機到来であったのです。
レハベアムはイスラエルに戦争を仕掛ける準備をしますが、これは預言者シェマヤによって禁じられています。ところで「21,・・・選り抜きの戦士十八万を召集し・・・」とありますが、当時のユダ族の人口は約50万人なので、兵士の数は36%に及びます。若い兵士だけではこれだけの人数を集めることはできません。すでにリタイヤした人間や若年層まで収集したと考えられます。これでは端から勝ち目はなく、自殺行為になってしまいます。戦闘行為が始まれば、11部族は徹底抗戦するでしょう。そうなればユダ族は皆殺しにされ、部族が抹殺されるのです。「24,・・・そこで、彼らは主のことばに聞き従い、主のことばのとおりに帰って行った」とありますが、戦闘をとどまったのはレハブアムの意志であるというよりユダ族の民意の方が勝っていたと思われるのです。つまりレハベアムは同胞からも見くびられていたことになります。ところで視点を替えると、シェマヤの預言は正に主なる神様の介入でした。ユダヤの未来の王はユダ族から出自する(創世記49:9-10)のですから、ここで根絶やしになってはならないのです。

