詩篇第一巻 第32篇
詩篇第一巻 第32篇
※詩篇第32篇は、6、38、51、102、130、143篇とともに、「七つの悔い改めの詩篇」と呼ばれ、交読詩篇として利用する教会もあるようです。
=本章の内容=赦しの神を紹介する
=ポイント聖句=幸いなことよその背きを赦され罪をおおわれた人は。(32:1)
置かれた状況●ダビデが大罪を犯したとすれば①バテシャバとの姦淫とその夫の殺害事件(サムエル記第二11・12章)と②民を数える事件(サムエル記第二24章)の二つ。本篇は民に関する記述がないこと、そして「あなたがたは分別のない馬やらばのようであってはならない。(32:9)」と自分のことを愚鈍な動物に例えていることから、性欲に弄ばされて大罪を犯した件、つまりバテシェバとの一件について悔い改めている詩篇ではないかと思われる。
祈りの内容祈りの確信 =黙想の記録=
●バテシェバとの姦淫事件は権力を乱用し目を付けた婦人と姦淫を行い、さらにその夫を戦場に送って戦死させたもので、この時のダビデは預言者ナタンから大罪を指摘されるまで、犯した罪を隠蔽し続けたことは凡そ信仰者の模範とは言い難い。歴史書にダビデの罪が赤裸々に記録されているということは、民衆もこの時にダビデの様子をつぶさに聞いていることになる。民衆がダビデにどれほど幻滅したか計り知れないものがある。しかし、ダビデ自身が本篇1・2節で告白するように「本当の神はいつまでも怒る方ではなく慈愛をもって赦す方でもある」ことを民は知るようにもなった。「七つの悔い改めの詩篇」が詩篇に組み込まれているのは、赦しの神を紹介するところにある。
●1・2節はパウロがローマ書4章7・8節で引用している箇所。「幸いなことよ、不法を赦され、罪をおおわれた人たち。幸いなことよ、主が罪をお認めにならない人。」
●新改訳2017年版では「背き」と訳されているが、「背く」は単に「罪を犯す」よりも重みに大差がある。「背く」とは、ある人・物・事にそっぽを向くまたは背中をを向ける姿勢・態度をとること,逆らって従わない,反抗する,謀反する,離れるの意味がある。このことから、ダビデが犯した罪は「神様の性質に相反する、神様に反抗する、神様の気持ちを踏みにじる」ともとれる。
●「2,幸いなことよ主が咎をお認めにならずその霊に欺きがない人は。」の咎は「その霊に欺きがない」と補足されているところから表面上宗教上の罪というよりは悪癖や傾きやすい邪推を意味しているのではなかろうか。バテシェバとの姦淫事件を犯す前のダビデは戦(いくさ)の連続であり、民のリーダーとしての激務の毎日であり肉体的にも精神的にも疲れ果てていた。悪魔の誘惑はこうした時に巧妙に仕掛けられてくる。悪癖や邪推が容易に心を支配しやすい状態になっている。3・4節は罪咎を犯した後の後悔の念ともとれるが、「4,昼も夜も御手が私の上に重くのしかかり骨の髄さえ夏の日照りで乾ききったからです」状態は外見的には熱く燃え活動してている様子だが、魂が枯渇状態であることを表現しているものともとれる。
●この魂の枯渇状態から脱出するためにダビデは以下の方法を5節以降でで勧めている。
第一に「罪咎の告白」である。心のうちに入り込んできた邪推を主に告白することである。己の弱さを必死で主に聞いていただくことが告白である。(5~7節)
第二に「主の助言」つまり御言葉による語り掛けである。魂の枯渇を感じている時こそ御言葉に親しむ必要がある。(8・9節)
第三に「確信」を持つこと。「赦される」「濁流は届かない」「主の配慮で囲まれる」と確信するまでデボーションの時を持つ必要がある。
●「敬虔な人(32:6)」「主に信頼する者(32:10)」「正しい者たち(32:11)」「心の直ぐな人たち(32:11)」とは全て心のあるべき状態を指している。御霊の賜物はこの基本姿勢の上に結実するものである。
1,幸いなことよその背きを赦され罪をおおわれた人は。
Blessed is he whose transgression is forgiven, whose sin is covered.(32:1 KJV)
語句①背き(32:1):英語transgression ヘブル語ペシェー(פֶּשַׁע)〔宗教・道徳上の〕罪、違反、逸脱、破戒、犯罪
語句②赦される(32:1):英語is forgiven, ヘブル語ナサー(נָשָׂא)赦す,持ち上げる,我慢する,運ぶ,支持する,支える,耐え忍ぶ,削除する,元気づける,精神的に支える
語句③罪(32:1):英語sin ヘブル語ハタアー(חֲטָאָה)罪,罪の捧げもの
語句④おおわれる(32:1):英語is covered ヘブル語カサ―(כָּסָה)覆う,隠す,隠匿する,秘密にする,かくまう,非表示にする
2,幸いなことよ主が咎をお認めにならずその霊に欺きがない人は。
Blessed is the man unto whom the LORD imputeth not iniquity, and in whose spirit there is no guile.(32:2 KJV)
語句⑤咎(32:2):英語iniquity ヘブル語アボーン(עָוֹן)罪を犯す,堕落する,不公正,不道徳,悪意,邪悪,悪行
語句⑥認めない(32:2):英語impute(…に)帰する,負わせる,(…の)せいにする ヘブル語ハシェーブ(חָשַׁב)計算する,考える,尊重する,計算される,責められる