詩篇第一巻 第9篇

詩篇第一巻 第9篇
=本章の内容=

❶歴史に介入される神❷ゲヘナの入り口にいたダビデ

=ポイント聖句=

①シオンに住まうその方(9:11)・・・他国の地境は絶えず変更されているがイスラエルの地境は揺るがなかった。
①血に報いる方は彼らを心に留め貧しい者の叫びをお忘れにならない。(9:12)
②死の門から私を引き上げてくださる方よ。(9:13)

置かれた状況

●ムテ・ラベンの言葉の由来が真実のものであるとすると遠い過去の出来事を引き合いに出し、イスラエルと国家単位でまたゲヘナに落ちそうだったダビデの個人の事情にも、いつでも介入してくださる主なる神のへ確信がこの詩編に込められていると思われる。

祈りの内容

①主よ私をあわれんでください。私を憎む者から来る私の苦しみをご覧ください。
②主よ立ち上がり人間が勝ち誇らないようにしてください。国々が御前でさばかれるようにしてください。(9:19)

祈りの確信

①義の審判者(9:4)
②虐げられた者の砦苦しみのときの砦(9:9)
③お見捨てになりません(9:10)
④シオンに住まうその方(9:11)・・・他国の地境は絶えず変更されているがイスラエルの地境は揺るがなかった。
⑤死の門から私を引き上げてくださる方(9:13)

=黙想の記録=

=黙想の記録=
●「─彼らの記憶さえ消え失せました(9:6)」・・・力ある近隣諸国は歴史から姿を消したが、神の国イスラエルは作者がいる時点でも存続している。主なる神様は歴史に介入されイスラエルを特別に保護し続けておられることの確信を得られるの。小国イスラエルと歴史に登場した近隣諸国との比較はまさに主に信頼する者と主を無視する者との比較につながっている。「悪しき者はよみに帰って行く。神を忘れるあらゆる国々も。貧しい者は決して忘れられることがなく苦しむ者の望みは永遠に失せることがない。(9:18~19)」この神は私の人生に正しく介入されひと時も忘れることのないお方である。その確信をさらに強めていこう。
●「主よ彼らに恐れを起こさせ国々に思い知らせてください。自らが人間にすぎないことを。(9:20)」・・・この聖句は主に信頼する者の核心である。「自らが人間にすぎない」ことの自覚は主の創造の御業や歴史へ介入の偉大さを気づく足がかりである。この偉大な神こそが私達の味方なのだから。また私は大いなる方が選び出した者なのだから。敵を恐れそうになるときまたこれからの人生の行く末を悲観するようなときこの聖句は大きな励ましとなる。
●この9章を地上再臨の地への裁きの預言と考えることもできる。(9:8)
●「死の門から私を引き上げてくださる方よ。(9:13)」・・・「死の門」とあるがダビデは何故に死の門まで追い込まれたと思ったのだろうか。死の門を「ゲヘナへの入り口」とすると、これはダビデの犯した数々の神様へ不忠実の罪(バテシェバとの姦淫・その夫ウリヤの殺人を命じた・民の数を数えた)を想起した時のものと言える。ダビデはゲヘナに行くべき存在と認めながらもそこからも主の一方的な慈愛によって自分は救い出されたことを確信していた。

=注目語句= 語句①ムテ・ラベン
・・・BlueLeterBibleを見ると「意味不明」と紹介されている。
※ネットで検索すると『ムテ・ラベンとは、「息子の死」という意味です。そこから、この賛歌はダビデがペリシテ人ゴリヤテを倒したとき、ゴリヤテの母の立場から彼の死を「ムテ・ラベン」と言ったのではないかとも言われています。』の説明を見つけた。また一説によるとムトラベンは、直訳すると『息子の若さ』。そこから『息子の死に寄せて、という曲に合わせて』とか『ボーイソプラノで歌う』『オーボエやハープに合わせて』などと訳されるとのこと。この詩の背景には、サムエル記第二8章の諸国との戦いが背景にあるとのこと。
語句②(ヒガヨン)
・・・英語Higgaionヘブル語הִגָּיוֹן(ヒガ―ヨン)瞑想, 鳴り響く音楽。セラ同様音楽用語であるが詳細は不明
語句③(死の門)
・・・英語the gates of deathヘブル語מָוֶתשַׁעַר(シャーラマウベス)死の門と訳されるが「黄泉の穴」とも同意
「黄泉」シェオルシェオル(שאול, Sheol)は、ヘブライ語の音訳であり、新改訳聖書では「黄泉」。新約聖書のギリシア語は、「ハデス Ἅιδης」「ゲヘナ γεεννα」がこれに相当する原語である。新共同訳聖書では「陰府(よみ)」と訳されている。