マタイの福音書16章

マタイの福音書16章
=本章の内容=

➊観天望気➋パン種➌弟子の告白➍キリストの死と復活の預言(1)

=ポイント聖句=

いのちを救おうと思う者はそれを失い、わたしのためにいのちを失う者は、それを見いだすのです。(16:25)

=黙想の記録=

●主義主張の全く異なるパリサイ人とサドカイ人が利権の為に一致してイエス様を貶めようとする場面です。これは明らかにサタンの所業です。彼らの求める「しるし」は、イエス様が「ユダヤ人の王」であることのパフォーマンスです。「天からのしるし」とは「エリヤが天から火を下し、いけにえを焼き尽くした」といった目を見張るようなパフォーマンスのことです。彼らにとっては「病人を癒すくらいの些細なこと」はどうでも良いのです。観天望気と言う言葉があります。自然現象や生物の行動の様子などから天気の変化を予測することを意味します。メシヤ預言を理解し受け入れる素地ができていれば、数々の奇跡こそが「イエス様は来るべきメシヤである」ことの証明になっているはずなのです。さらにローマ侵攻でユダヤ人は世界中に散らされる運命となることぐらい予測できるはずです。この火急の時代に必要なのは「メシヤ」のはずです。さらに彼らの背景にあったのは「ユダヤ人の王なら政治的活動をしてみろ。」というイエス様へのサタンの誘惑だったのです。「ナザレの田舎者たちができるはずもない」と踏んでいたにも拘わらず。
●ここで使われている「姦淫」とは、彼らの生活態度のことで、神を敬っているふりをしているのですが、信仰心の片鱗もない、金銭を含むこの世の神々を恋い慕っている状態のことです。サタンはこのように現実から目をそらせることを得意技としています。また、「ヨナのしるし」とは、三日三晩魚の腹の中にいて完全に死んでしまったヨナが蘇生したことを指しています。つまりイエス様の復活のことを指しています。やがて「十字架で絶命し墓に葬られ、三日の後に復活すること」が「メシヤ」としての重要なしるしとなると預言をされたのです。
●「パリサイ人やサドカイ人たちのパン種」とは、彼らのこの世での安定した生活を希求する人生観のことです。これは現代基督者にも教会にもすでに潜んでいる物です。所謂「現実至上主義」のことで、彼らの父祖たちが歩んできた「信仰生活」のことではありません。いったんこのパン種が入り込むと、「神により頼む」ことを忘れ、「この世でいかに快適に生きるか」の思いで心は充満してしまうのです。こうなると、肉の欲・目の欲・暮らし向きの自慢が彼らのスケールになっていくのです。ところが弟子たちは、やはり彼らと同類で「信仰生活」には無頓着だったので、「パンを忘れてきたことを責められている」などという頓珍漢な考えしか出てこなかったのです。「私達の必要をすべて知っておられる父なる神」をあの二度にわたる「給食の奇跡」で明らかにしていたはずなのに、弟子たちはまだ、「パリサイ人やサドカイ人たち」の様な特権階級に憧憬を抱いていたのです。
●「人々は人の子をだれだと言っていますか。」の初めの質問に弟子たちは「メシヤです」とは答えないのです。すでにイエス様のことを「ダビデの子」と呼称していた人々を脇に置いているのです。彼らにはこの時点で、「メシヤが何をされる方」を理解できなかったのです。シモン・ペテロの「あなたは、生ける神の御子キリストです。」の答えは単なる思い付きの発言であることをイエス様は百も承知でした。また自分を否む情けない人物だと言うことも。ですが、イエス様の目は、そこを通り過ぎ、やがてスタートする「教会」に関心が向かっているのです「岩」はペテロのことではなく「イエス様ご自身」のことです。「かぎ」とはペテロや他の弟子たちに委ねられた「宣教」のことで、閉ざされた救いの門を開き、ユダヤ人を始め全ての人々を救いに導く働きのことを指しています。そしてこの奉仕をなす人物こそはペテロを筆頭にする弟子たちだったのです。
●本章最後はイエス様ご自身による「十字架と復活」の預言です。ところが先ほど、大正解を出したイエス様にほめられたペテロは、図に乗って口走った言葉が「そんなことが、あなたに起こるはずはありません」でした。十字架による「贖罪」以外に「救い」はありえないのです。この「十字架の御業から引き離そうとする行為」こそは、大正解を出した愛弟子の口を借りたサタンであり、イエス様に仕掛けた罠だったのです。
●(変更)「ここに立っている人々の中には、人の子が御国とともに来るのを見るまでは、決して死を味わわない人々がいます。」の「死を味わわない人々」はペテロとヤコブとヨハネです。17章で彼らは「神の臨在としての栄光」を直接目にしてしまうのです。旧約で神の箱を覗き見たものたちが即死した記事が出てきます。(サムエル第一6:19)彼らは神の栄光を見てなお死ぬことがなかったことを指しているのです。