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ルカの福音書21章-2

2024年11月10日

=本章の内容=

●終わりの時代に起こること

=ポイント聖句=

この天地は滅びます。しかし、わたしのことばは決して滅びることがありません。(21:33)

=黙想の記録=

●ここに登場するエルサレム神殿とはここではヘロデ大王の「第三神殿」のことです。ところが建立者であるヘロデ大王は異邦人で、ソロモン同様、ユダヤ人の民意を掌握するためだけの政策だったわけです。ユダヤ戦争においては紀元70年のエルサレムにおける最後の攻防戦の舞台となりました。(この戦争におけるエルサレム神殿の様子はフラウィウス・ヨセフスの『ユダヤ戦記(ちくま学芸文庫販売)』に詳しく記されている)。神殿もエルサレム市街も壊滅した後は、神殿はもはやユダヤ教の信仰生活の中心ではなくなり、同時に祭司を輩出するサドカイ派はなくなるのです。

●第三神殿崩壊までのシナリオはこうです。カリグラ帝(在位:37年-41年)は自らの祭壇をヤムニアの町に築きユダヤ人達に礼拝するよう強要します。これに激怒したユダヤ人のグループがこれを破壊行為を行います。以降、イスラエルに反ローマの気運が国中に満たされると、ついにネロ帝(在位:54年-68年)の末期の66年、フェリックスと続くフロルスの2人の総督によるユダヤ人に対する虐殺・略奪行為が引き金となり、ユダヤ人とローマとの間に全面戦争が勃発したのです。これをユダヤ戦争という。戦局は初戦、ユダヤ人に有利に展開し、ユダヤ側はエルサレムを占拠する。さらにユダヤ各地に要塞を築きローマへの迎撃態勢を整えるのですが、ネロによって派遣された鎮圧軍司令官のウェスパシアヌスにより全要塞は撃破されます。その後ウェスパシアヌスは皇帝に即位し(在位:69年-79年)、後を継いだ息子のティトゥス(のちに皇帝。在位:79年-81年)によってエルサレムはとうとう陥落してしまうのです。国土が完全に焦土と化しました。ユダヤ人最後の拠点であった要塞マサダにおいても、籠城戦の末74年に集団自決を遂げ、戦争は終結したのです。

●この21章後半部の話は、「ユダヤ戦争」と「世界の終末」について平行して記録されているものです。改めて構成を書くとすると①ユダヤ戦争とその後世界の終末までの様子②世界の終末時代の様子③終わりの時代に対する基督者の備えという順番で展開されています。

●5~24節に書かれていることと史実とを比較すると次のようになります

①「6節:石がくずされずに積まれたまま残ることのない日がやって来ます。」は、AD79~81ティトゥスによるエルサレム攻囲戦で第二神殿が破壊されること

②「8節:わたしの名を名のる者が大ぜい現われ、『私がそれだ。』とか『時は近づいた。』とか言います」は、AD135第二次ユダヤ戦争(バル・コフバの乱)バル・コフバが自らメシヤと名乗り、ラビ・アキバがそれを後押ししました。

③「9節:戦争や暴動のことを聞いても10節:民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり」と、以降イスラエルやその周辺で起きた戦争や紛争のことです。

AD636-1099アラブ征服時代(「岩のドーム」を建造)
AD1099-1291十字軍時代
AD1517-1917オスマン帝国時代

※絶えず紛争や戦争が起きているのがこの中東なのです。

④「11節:大地震があり、方々に疫病やききんが起こり、恐ろしいことや天からのすさまじい前兆が現われます。 」
【地震】エリコ城壁崩落・十字架の時の地震などが史実としてあるように、イスラエルでは80年周期で大地震があるとのこと。イスラエルはアラビアプレート・アフリカプレート・シナイプレートの3つのプレートがぶつかる真上にあることでも頷けます。

【疫病=感染症】AD542から60年間のユスティニアヌスのペストアテナイ以前は記述が見つからないが、以降、黒死病・天然痘・コレラ・チフス・結核・インフルエンザ・ポリオなど、世界的な感染症がいつの時代にも起きて、人類存続にも関わる、おびただしい数の死者がでています。

【飢饉】飢饉は各年代でいつもどこかで起きている。文献に残る世界的規模の飢饉は5世紀から現代まで、おびただしい数が起こっています。そのほとんどが気象変動によるもの。あるいは、疫病の蔓延によるのです。

【天体の異変】どんな大規模な異変が起こったのか不明ですが、これを気象変動と捉えるなら飢饉と関連があるのでしょう。しかし、イエス様が表現された様な天変地異がどんなものを表しているのかは今でも推測の域を出ていません。

⑤「17節:迫害」は、ユダヤ戦争だけでなく、第二次世界大戦でナチスによるユダヤ人迫害を始め、各時代にユダヤ人への強烈な迫害は続けられてきました。

⑥「20~24節:エルサレム包囲と捕囚」は、文字通り紀元70年のエルサレムは、最後の攻防戦の舞台となりました。以降現代の独立時まで、イスラエルに国家はなくユダヤ人は全世界に離散していたのです。

●25~33節に書かれていることについて現代との相違点

●イエス様が世界の終末を語る時、それはいたずらに信徒に恐怖心を持たせるものではありません。また、この恐怖心に煽られて落ち着きを失わせる意図は全くありません。むしろイエス様が教えていることは、他の譬えにもあるように、万全の準備を整えることにあるのです。最後の勧めで、「体をまっすぐに、頭を上に上げなさい」とは、「思い煩うことなく、またこの世に未練を残すことのない様に」との勧めです。「わたしのことばは決して滅びることがありません。」とは、「状況が悪化しても、み言葉に導きを託して生活しなさい」との勧めなのです。