士師記18章-1
士師記18章-1
=本章の内容=
➌ダン族が送った斥候❹ライシュをロックオンする
=ポイント聖句=7,五人の者たちは進んで行ってライシュに着き、そこの住民が安らかに住んでいて、シドン人の慣わしにしたがい、平穏で安心しきっているのを見た。この地には足りないものは何もなく、彼らを抑えつける者もいなかった。彼らはシドン人から遠く離れていて、そのうえ、だれとも交渉がなかった。
ダン族の歴史(士師記18章以前の様子)(1)ダン族はカナンに割り当て地を与えられた7番目の部族であり、その領土はエルサレムの西で、地中海にまで広がっていた。それはユダに割り当てられた領土の北とエフライムに与えられた領土の南に広がっていた。(ヨシュア19:41-48)
(2)ダン部族はアモリ人のために山地に追いやられ平地にある彼らの領土を完全に占領することができなかった。(士師記1:34)
(3)ペリシテ人はサムソンの時代にダン部族に何度も戦いを挑んだ(士師記13:1、14:4、15:11)。
*西はアモリ人とペリシテ人の圧迫があり南はユダの領土であった為、丘陵地帯に押し上げられたダン族は、ツォルアとエシュタオルの地域のごく狭い地域に閉じ込められていた。ダン族は新しい領土を求め移動し始める。ところがこの願望は「本来の領土」の取得を認めて下さった主なる神様の御心を無視する結果となった。信仰による選択ではなかった。
=黙想の記録=●18章は主なる神様の御心に反して実行に至ったダン族の領土拡大の様子が記されています。またなりふり構わない数々の蛮行が記録されています。士師記18章は士師記17章に記されていたミカの家族の偶像崇拝の物語の結論です。ミカという一人の指導者の罪が、まず祭司を腐敗させ、次に部族全体を、最後にはイスラエル全体を腐敗堕落させることを暗示しているものです。
➌1-6節:ダン族が送った斥候・・・ダン族が5人の斥候を送るのはヨシュア記19章で割り当てられた場所ではありません。本来ダン族はツォルアやエシュタオルから西方に向かい進軍しなければならないはずです。しかし西方には強力な軍事力を誇るペリシテ人が居てことあらばダン族と事を構えようとしているのです。そこでイスラエルの他部族が異教徒たちを大方一掃してしまった場所で尚且つ軍事力を持たない村々を攻略しようとしたのです。モーセ・ヨシュアに次ぐ第三世代のイスラエルにとって主なる神様によって戦った記憶など単なる神話の類と思い込んでいたようです。斥候が出会ったのはミカの家にいたレビ人です。恐らく礼拝所で祈祷している声でも聞こえて来たのでしょう。会ってみると祭司の服を着こんでいたのです。本来いるはずのない場所でレビ人に遭遇しまた祭儀を行っていることに違和感を覚えたことでしょう。レビ人に今までの顛末を聞いたところで斥候は自分たちの旅の吉凶を占ってもらいます。斥候はここで「5,どうか神に伺ってください。」と言っていますが、ここで使った「神」は異教の神々と同列の言葉でした。主に伺いをたて「具体的な指針を下命していただこう」という意思は一つもありません「旅の目的は順調に果たせるか」また「戦いは勝てるか負けるか」ということです。万が一何れも凶と占われた時はレビ人を亡き者にする可能性もあります。一方レビ人はミカの所に身を寄せるまで旅をして諸地域を見聞してきたのですからそれなりの情報を彼らに与えることができます。恐らく「ライシュ」が如何なる場所かも情報を得ていたのかもしれません。レビが「安心して行きなさい。あなたがたのしている旅は、主がお認めになっています。」と言えたのは主なる神様に伺いを立てたからではなく自分の情報の引き出しから容易に得た結論だったと思われるのです。ここにレビ人のご都合主義の性格が読み取れるのです。
❹7-12節:ライシュをロックオンする・・・5人の斥候はライシュを偵察するのですが、ここはツォルアとエシュタオルから直線距離でも約200km離れています。徒歩で行くなら200km÷時速4km=50時間ですから丸2日。敵を避け警戒しながらの旅ですから少なくとも丸5日程度はかかるでしょう。「7やがて五人は、ライシュの町に入り込みました。そして、住民がみな安穏と暮らしているのに気づきました。生活ぶりもフェニキヤ人らしく、たいそう裕福なものでした。この辺りでは脅威を与える強い部族もなかったので、彼らは無防備同然で、安心しきっていました。そのうえ、シドンにいる同族とも遠く離れ、近隣の村々ともほとんど交渉を断っていたのです。」(リビングバイブル)これはダン族にとっては打ってつけの獲物です。彼らはライシュをロックオンしたのです。斥候は帰国しありのままを伝えます。その後ダン族はたった600人の部隊を作って進撃して行くのです。ダン族は元の位置にいたのなら当然ユダ王国に組み込まれています。ところが北に大移動したことで北イスラエルに組み込まれやがて亡国の憂き目にあうのです。
語句①神(5):英語God;ヘブル語エロヒム[支配者,裁判官,神々,天使たち]・・・ここでダン族が用いたのは神々であって主なる神「イエホバ」ではなかった。
=注目地名=地名①ライシュ(7):英Laish;ヘブル語ライイシュ[ライオン]・・・ヨルダン川上流のある町でシドンア人によって植民地化されたがダン族に占領されダンと呼ばれるようになった。ヨシュア記19:47には、その名が「レシェム」と記されている。が士師記1:34では再びアモリ人に占拠されている。
地名②キルヤテ・エアリム(12):英語Kirjathjearim;ヘブル語キリヤ―・アェリム[森の町]・・・ユダの北境界とベンジャミンの西と南境界にある町
地名③マハネ・ダン(12):英語Mahanehdan;ヘブル語マハニ・ダン[ダンの野営地]