士師記10章

士師記10章

=本章の内容=

❶二人の士師(トラ・ヤイル)の時代❷背教と他国人による虐げ➌民の叫び❹アンモン人との戦い

=ポイント聖句=

16,彼らが自分たちのうちから異国の神々を取り去って主に仕えたので、主はイスラエルの苦痛を見るに忍びなくなられた。

=黙想の記録=

●本章には2人の士師の記録がありますが、彼らの業績については記録されていません。むしろその後のイスラエルの背教の深刻さを浮き彫りにしています。

❶1-5節:士師トラとヤイル・・・アビメレクの死後イスラエル救済の第6番目の士師がイッサカル人ドドの子プアの息子トラです。第7番目の士師がギルアデ人ヤイルです。ギルアデ人とはマナセ族(ヨルダン東の半部族)、ガド族、ルベン族の3部族の総称です。つまりヨルダン川東のイスラエル人です。トラは23年間でヤイルは22年間イスラエルを外敵から守ったわけですが、二人の人物が歴史に被ることはありませんでした。トラとヤイルの業績は記録されていません。、「アビメレクの後」とあるように、その活躍の内容はアビメレクによって引き起こされたイスラエルの混乱を鎮め平和をもたらすことでした。この二人の人物はアビメレクのように王になりたいという欲求はありませんでした。むしろ与えられた期間を主なる神様に指示された任務を忠実に果たしただけです。ヤイルは30の村々を統治していたなどの表記からギルアデ人の諸地域に繁栄をもたらした人物とされています。特筆すべき業績がないほど平凡な時代と言えます。しかし「平凡な時代」ということは言葉を換えれば「平安な時代」であったわけで、神様の祝福を肌身に感じることができた時代であったのです。とかく業績実績を云々するのがこの世です。平凡な生活にこそ神様の祝福があると思いましょう。

❷6-9節:背教と他国人による虐げ・・・バアルは豊穣の神また天候を司る神でアシュタロテは多産の神です。この2つの神々を筆頭に当時のイスラエルに蔓延していた宗教は現世での幸福の追求です。そしてこの世の宗教の共通点は自分を取り巻く環境が自分の思うとおりに良い方向に向かうことであり、不幸不運な人生とならないことを願うことでした。つまり幸せの中心にいつでも自分がいることなのです。また形式的な宗教儀式を行うことで危険から守られ豊かさが増すと信じることでもあります。ところが自然の脅威が激しい場合、人身供養など特別な犠牲を捧げることで危険を避けることができるという異常な思い込みをしているのも当時の宗教の共通点です。ところがこれらの神々を信奉しているのにも拘わらずヨルダン川西方の地域をペリシテ人やアンモン人に侵略され18年間も大変な苦境に立たされという不幸を経験するのです。侵略者と同じ神々を信奉していても人間の利害関係は宗教の上に位置しているのです。つまりイスラエル人がカナンに住むことは彼れにとって最大の不利益となっているからです。

※基督教特異の宗教儀式(日曜礼拝や祈祷会への参加。賛美歌を歌う。大声で祈る。聖書を朗読するなど)をしていれば難から逃れられると思い込んでいる基督者もいることは確かです。それでは本章に出てくる宗教となんら変わらないのです。私達の信仰は「周囲の状況の好転を願う」ものではなく「状況が如何に変化しても変わらない心の平安を保つ」ことができるものです。

➌10-15節:民の叫び・・・イスラエルは無益な宗教に頼る愚かさを悟り本物の神様の存在に気が付くのです。本物の悔い改めは叫びとなって主なる神様の元に届きました。

❹16-17節:アンモン人との戦い・・・しかしこの叫びを聞き届けらた直後にアンモン人の本格的侵略を受けるのです。これはイスラエル人の悔い改めが本物であるかを試される神様のテストです。アンモン人の軍門に下り彼らに無条件降伏をし彼らに同化していく方法も取れたのです。しかし、この時のイスラエル人はアンモン人と対峙する道を選んだのです。この時の動機が主なる神様への本物の信仰心から出ているかどうかははっきりとしていません。「苦しい時の神頼み」にしか過ぎなかったかもしれないのです。

=注目人物=

人物①トラ(1):英語Tola;ヘブル語トラ―[緋色の虫]・・・イッサカル部族の士師

人物②ヤイル(3):英語Jair;ヘブル語ヤイェール[彼は悟りを開く]・・・ギルアデ人の士師記

※ギルアデ人=マナセ族(ヨルダン東の半部族)、ガド族、ルベン族の3部族をギルアデ人と総称している。

=注目語句=

語句①シャミル(1):英語Shamir;ヘブル語シャミイェール[ポイント,棘]

語句②ハボテ・ヤイル(4):英語Havothjair;ヘブル語シャボーシャイェール[ヤイルの村]

語句③カモン(5):英語Camon;ヘブル語カモーン[高められる]

語句④葬られた(2,3):英語was buried;ヘブル語カベエール[埋葬する]

語句⑤ミツパ(17):英語Mizpeh;ヘブル語ミツパー[見張り小屋]・・・エフタの出身地

 

士師記

Posted by kerneltender