士師記9章-2

士師記9章-2(23-55節)
=本章の内容=
➌シェケムの反逆❹ゼブルとガアル❺第一次シェケムの戦い❻第二次シェケムの戦い❻アビメレクが1000人を焼死させる❼テベツの戦いとアビメレクの死
=ポイント聖句=57,神はまた、シェケムの人々のすべての悪の報いを彼らの頭上に返された。エルバアルの子ヨタムののろいが彼らに臨んだ。
=本章のあらすじ= [1] 70人の兄弟の殺害 [2]アビメレクが王を宣言 [3]シェケムの戦い [4]テベツの戦いとアビメレク王の死 =黙想の記録=※各事件の模様を詳しく把握することでアビメレクの残忍さや今回の事件に関わる人物の性格が見えてきます。
➌23-25節:シェケムの反逆・・・「23,神は、わざわいの霊をアビメレクとシェケムの住民の間に送られたので、シェケムの住民たちはアビメレクを裏切った。新改訳2017」「23三年が過ぎたころ、神がアビメレク王とシェケムの住民との間にもめ事を起こさせたので、シェケムの住民は、アビメレクに反旗をひるがえしました。(リビングバイブル)」「わざわいの霊」より「もめごと」の方が分かりやすいと思います。いずれにせよ、アビメレクとシェケムの住民との間に何らかのトラブルが起きたのです。「士師記9章-1」で記述した通り、そもそも利害の一致で盟約を結んだだけですから、片方に不利益が起きれば当然不協和音が生じてくるのです。そもそもシェケムとアビメレクは親戚関係でしたが利害が絡んでくるとかえって憎悪感が激しくなってきたのです。アビメレクがシェケムに来訪する時を狙ってシェケムの住人は峠で暗殺集団を忍ばせていましたが、この集団はこともあろうに誰彼となく通行人に襲い掛かり略奪をほしいままにしていたのです。アビメレクが雇った粗暴なならず者はギデオンの息子たちを単に殺戮しただけでは済まなかったはずです。恐らく息子たちの所持品を身包み剥いで持ち去ったと思われます。またアビメレクはそれを黙認していたことでしょう。峠に潜んでいた暗殺集団もそれを真似したのです。シェケムの住人はその行いを責めようとしないのです。住民はそれも正当な行為と考えたのです。悪事には悪事で対応する悪循環が起こっているのです。この峠での事件がアビメレクがシェケムを壊滅させる正当なきっかけを与えてしまったのです。悪者が悪事を企てる時、自分は正義を行なっていると思い込ませるのです。
※基督者は利害関係の一致ではなく主にある兄弟姉妹の関係が結ばれています。基督者も「一致」と言う言葉を使う場面がありますが、奉仕活動と言う一方向を向いているだけの関係性なら不協和音がなってくると途端に袂別れすることが出るのは兄弟姉妹の関係が結ばれていないことが最大原因です。
❹26-33節:ゼブルとガアル・・・ガアルが兄弟といっしょにシェケムに移住し、町の要職に就いていました。異教の神の宮で収穫祭が行われた時、酔いに任せてガアルは大言壮語を吐くのです。そこには町長ゼブルが同席しています。ガアルはアビメレクを罵りそればかりか酔った勢いでクーデターを起こし政権を転覆させると叫んでしまうのです。ところがその場に居合わせた多くの住民がガアルに賛同してしまう姿を見て、町長ゼブルは震え上がるのです。この状況はすぐにアビメレクに伝わってしまうはずです。ガアルが少数の私兵を持っているからと言ってアビメレクの軍隊に勝てるはずがないと踏んだゼブルは我が身と一族を守るためにアビメレクにガアルの企てを密告します。
❺34-41節:第一次シェケムの戦い・・・アビメレクはゼブルの進言を受け入れガアルとそれに追随するシェケムの住民が城外に出たところで攻撃を仕掛けます。ガアルに追随し城外に出て戦ったシェケムの兵はアビメレクの前に遭えなく撃退されます。ガアルとその一族は町長ゼブルに追い立てられ場内に入れずシェケムから命からがら逃げ出します。
❺42-45節:第二次シェケムの戦い・・・ガアルがシェケムから追放された直後、アビメレクはアルマに向かいそこから平原に出て来たシェケムの兵を殲滅します。さらにアビメレクはシェケムの町に残ったいた者達を攻撃し城壁を破壊し、さらに大量の塩を撒き長らく作物が取れない不毛の土地にしてしまいます。
❻46-49節:アビメレクが1000人を焼死させる・・・シェケムの高台 (ミグダルの町) の住民がバアル・ベリテの宮に続くとりで逃げ込むと、アビメレクは自ら薪を集めとりでを囲むように薪を置くように命じます。そして逃げ出せない住民1000人を焼き殺してしまいます。恐らく武器を持たない民間人です。しかしこの1000人の中にはすでに戦死した者たちの家族もいたことでしょう。アビメレクはこうした人々の反抗を決して許さないのです。戦争とは復讐が復讐を産み出す機会でもあるのです。
❼50-57節:テベツの戦いとアビメレクの死・・・アビメレクと彼の軍隊はテべツの町を包囲します。町には堅固なやぐらがあったので住民はみなそこに逃げ込み、バリケードを築いて立てこもり、屋根に見張りを立てました。住民は男女の境無く総力戦で戦います。、一人の女性が屋根から石臼を投げ落とすとそれがアビメレクの頭に直撃し致命傷となります。女性にしかも武器ではなく石臼で攻撃されたという不名誉な死を避けるためアビメレクは鎧持ちの若者に剣で突き刺すように命じました。それがアビメレクの遭えない最後でした。こうしてヨタムののろいがシェケムの住民とアビメレクに実行されたのです。
●無論アビメレクは士師には数えられていません。むしろ悪党とも言えるアビメレクの言動をなぜここまで詳細に記録しておく必要があるのでしょうか。他の士師の様子は簡潔に記録されているのに。士師記に続く歴史書にも同様な悪王が登場してきます。これらの悪王の言動はアビメレクのそれに酷似しています。それは主なる神様を無視する人物の行動があまりにもパターン化していることを示すかのようです。この言動は基督者の大敵悪魔の所業そのものなのです。悪魔は傍若無人血も涙もない冷血漢なのです。
=注目語句==注目語句=
語句①わざわいの霊(23):英語an evil spirit;ヘブル語ラー・ルアフ [悪い,邪悪,不快な・風,息,心,魂]・・・もめ事(リビングバイブル),険悪な空気(共同訳)
語句②アルマ(41):英語Arumah;ヘブル語アルマ[私は高くなる]・・・アビメレクの故郷であるシェケム近郊
語句③シェケムのやぐら[ミグダル](46) :英語the tower of Shechem;ヘブル語ミグダル・シェケム[シェケムの高台]
=注目人物=
人物①ガアル(26):英語Gaal;ヘブル語ギャアール[強い嫌悪、憎しみ]
人物②エベデ(26):英語Ebed;ヘブル語エベドゥ[召使い、使用人]
人物③ゼブル(28):英語Zebul;ヘブル語ゼブール[地位の高い、高貴な]