士師記9章-1
士師記9章-1(1-22節)
=本章の内容=❶アビメレク(専制君主国家の末路)(1)❷国王宣言したアビメレク・ヨタムの呪い
=ポイント聖句=5,アビメレクはオフラにある彼の父の家に行って、自分の兄弟であるエルバアルの息子たち七十人を一つの石の上で殺した。しかし、エルバアルの末の子ヨタムは隠れていたので生き残った
=本章のあらすじ= [1] 70人の兄弟の殺害 [2]アビメレクが王を宣言 [3]シェケムの戦い [4]テベツの戦いとアビメレク王の死 =黙想の記録=❶1-5節:兄弟69人の殺害・・・ギデオンは民との約束通り確かに国王になりませんでした。しかし息子たちにその素地をしっかり残していきました。ところが息子が70人もいれば王位を狙って骨肉の争いが起こるのは必死でした。「主なる神に油注がれた者が王位を継承する」などの考えは全く脳裏にありません。異教世界のご多分に漏れず「王位とは如何なる手段によっても戦い抜いた末に勝ち取るもの」だったのです。アビメレクはシェケムの実力者だった母方の叔父たちに会いに行き、ギデオンの血を引き継ぐ自分が支配者になることを打診します。「アビメレクの腹違いの兄弟たちはシェケムに誰も血縁者などいない。もし他の兄弟が支配者になろうものなら、必ずシェケムは圧迫される。私が王位に付けばシェケムを優遇する。」と説得するのでした。シェケムの住人はこの申し出を受け入れその証として異教の神殿の奉納物であった銀70シェケルを渡します。ところがアビメレクはそれを私兵を雇うための資金に充当します。この私兵はアビメレクの兄弟を殺害する暗殺団だったのです。「一つの石の上で殺した」とありますが文字通り大きな一枚岩の上で次々と殺害したとも取れますが「石の心=無慈悲・無感覚」という解釈もあるようです。つまり自分の兄弟を殺害するのに何のためらいもなかったことを表現したものと言えます。この時主なる神様の不思議な配慮でギデオンの末子ヨタムは生き残ります。
❷6-22節:国王宣言したアビメレク・ヨタムの呪い・・・アビメレクはギデオンの妾の息子に過ぎなかったので、異母兄弟を殺すことでマナセ部族の支配者であるとの主張を正当化しました。「6シェケムとベテ・ミロの住民は、シェケムの要塞のそばにある樫の木の下に集まって相談し、アビメレクをイスラエルの王にまつり上げました。(リビングバイブル)」難を逃れたヨタムはアビメレクが王位に祭り上げられたのを知りゲリジム山の頂上に行き、シケムとベテ・ミロの民を譬えをもって警告しますが、それは近い将来実現する呪いでもあったのです。「ゲリジム山」は主なる神様が語られた「ゲリジム山の上には祝福を、エバル山の上にはのろいを置かなければならない。(申命記11:29)」とモーセに語られた山です。ですがヨタムはこの真逆のことを行っているのです。つまりヨタムは「茨」であるアビメレクを国王として担ぎ上げたシェケムと暴君アビメレクを呪うことがイスラエルの祝福を願うことになることを主張したかったのです。ヨタムの言葉にあった「木々」とはシェケムの住人のことを指し、「オリーブの木」「いちじくの木」「ぶどうの木」「茨」は特定の人物または特定の職位にある人を指しているように思われます。「オリーブの木」は「木の中の第一の王様」と言われるのでギデオンを指していると思われます。確かにギデオンは王位継承を拒みました。「いちじくの木」「ぶどうの木」は丹精込めて育てられる貴重な木を表していることから、側女ではない正妻の子供達を表現したものでしょう。一方「茨」は雑草雑木の一種で明らかにアビメレクのことを指しています。ヨタムの言葉には69人のギデオンの子供の殺害はシェケムの住人もその共犯者であることも断罪しています。暴虐なアビメレクを国王としたからにはやがてアビメレクの強権政治の餌食になるとヨタムは最期の言葉としています。
=注目語句=語句①シェケム(1):英語Shechem;ヘブル語シェヘム[背中]・・・マナセの分割地内にあった地域。エルサレムから北54km、サマリアから南東へ10.5kmのエバル山とゲリジム山の間の谷にあった。エフライム部族の割り当て地だったがカナン人との融和が進んでいる地域でもあった。ギデオンで娶ったギデオンの側女はカナン人であった。
語句②バアル・ベリテ(4):英語Baalberith;ヘブル語バァェール[契約の主(盟主)]・・・ギデオンの死後、シェケムで崇拝された神の名。46節では、「エル・ベリテ(契約の神)」と呼ばれている。
=注目人物=人物①ヨタム(5):英語Jotham;ヘブル語ヨサーン[エホバは完全]・・・兄弟の虐殺から逃れたギデオンの末息子。名前から察するにギデオンが主なる神を認識した後に授かった子供の様に思える。