士師記6章-1
士師記 6章-1(6:1-16)
=本章の内容=
❶ミディアンに抑圧されたイスラエル❷歴史から悟っていないギデオン
=ポイント聖句=13,ギデオンは御使いに言った。「ああ、主よ。もし主が私たちとともにおられるなら、なぜこれらすべてのことが、私たちに起こったのですか。『主は私たちをエジプトから上らせたではないか』と言って、先祖が伝えたあの驚くべきみわざはみな、どこにあるのですか。今、主は私たちを捨てて、ミディアン人の手に渡されたのです。」
=黙想の記録=❶1-10節:ミディアン人に抑圧されたイスラエル
[1] 1-5節イスラエルの背信・・・「1,イスラエルの子らは、主の目に悪であることを行った。」で「主の目に悪であること」とは「偶像礼拝」だけを指摘しているのではありません。神様から与えられた律法を無視し、他宗教(他文化)とそれに伴う悪習慣に染まることを意味しています。先住民族の宗教では婦女子を人身御供にしたり、破廉恥な性交渉(同性愛を含む)が平然と行われていました。私達はこんな悍ましいことばかりに目が行きがちです。イスラエル人に与えられた律法は本来「人間らしい人間に成長させるためのガイドブック」です。家族を愛し家族を守る律法の精神、貧しき者また不幸な身の上の他者を援助する相互扶助が律法の精神のはずです。しかし当時のイスラエル人は、先住民族の例に倣いこの世の富に溺れ、弱い者貧しい者から搾取し差別する激しい格差社会に陥っていたのです。つまり本当の人間らしさがかけ離れた存在になっていたのです。ですから当然同胞を守る意識は薄らいでいたので、他民族の侵略には成す術がありませんでした。元はと言えばアモリ人(カナン人)の妻を娶るという同化政策が神の律法を無視する生活に陥らせる大きな要因だったのです。イスラエルの女性より洗練された性的な魅力や文化的な魅力があったとでも言うのでしょうか。
※基督者が警戒すべき「偶像礼拝」とは手で作られた神仏像を拝む「宗教儀式」だけのことではありません。この時代のイスラエル人同様、誰かを犠牲にしてまでも自分だけ良い目を見たり、悩む人たちに心を向けることのない人生を送ることも偶像礼拝同様なのです。つまりこの世の幸福の基準で生活をすることです。この場合偶像(拝む対象)が目に見えないだけなのことなのです。
[2]6-10節イスラエルの悔い改めと預言者の託宣・・・ミディアン人の抑圧から自らの背信行為に気付いたイスラエルが悔い改めの声をあげると、預言者が神の託宣「①出エジプトでの救出は神の手によるもの②ミディアン人の抑圧は自らの背信行為の結果である③アモリ人の神々を恐れるな(=宗教だけでなく彼らの生活習慣に染まるな)」を持って現れます。
❷11-16節:歴史から悟っていないギデオン
[1]ギデオンはごく平凡な農夫であったと思われます。彼もまたミディアン人の抑圧に怯える一人であったので、天使が現れ神が自分を神の戦士として召命しているなどとは信じがたかったのです。
「4,彼らはイスラエル人に向かって陣を敷き、その地の産物をガザに至るまで荒らして、いのちをつなぐ糧も、羊も牛もろばもイスラエルに残さなかった。」ギデオンが見ていたのはこの窮状だけです。この要因がイスラエル人自身にあったことを認めたくなかったのです。
[2]主はギデオンに言われた。「わたしはあなたとともにいる。あなたは一人を討つようにミディアン人を討つ。」』のやりとりはギデオンの謙遜を表したものではなく、臆病で気が小さい彼の性格そのもの。神がともにおられる「I will be with you」はヘブル語でハヤ―・イェムで「いっしょに立っている(現れる・通り過ぎる・終了する)」ですが、天使の言葉尻を掴んでギデオンは「主なる神が私達の側にいるというのなら、なぜこうした異常事態になっているのか。主は私達を見捨てているのでは?」との反論をしています。この時点でのギデオンにはイスラエル人全体の背信行為を認めていない風に見えるのです。ギデオンのこの反論に天使は一言も抗弁していません。天使はギデオンに背を向けていました。「この窮状は神様が原因ではなく根本原因はイスラエルの側にある」ことを敢えて沈黙することで教え諭していたのです。議論は議論を生むだけなのです。
[3] 『14節「行け、あなたのその力で。あなたはイスラエルをミディアン人の手から救うのだ。わたしがあなたを遣わすのではないか。」』とここで初めてギデオンに神様の召命を告げますが、ギデオンの反論に答えていないのです。ここでもギデオンは天使に言い訳をするのです。素直ではありません。『15-16節「ああ、主よ。どうすれば私はイスラエルを救えるでしょうか。ご存じのように、私の氏族はマナセの中で最も弱く、そして私は父の家で一番若いのです。」とギデオンは自分の出自や能力の無さをもって神様の召命を断っているのです。穿った見方をすればこの時点で目の前の人物が敵か味方かも判別できないのです。ギデオンが末子であるのは本当ですが、「自分の上に屈強の男たちがぞろぞろいるぞ。貴様ひとりぐらいなら難無くやっつけることができる」とでも言いたそうな口ぶりです。
語句①ミディアン人:英語Midian:ヘブル語メデ・イアーン[争い]・・・アカバ湾の東からモアブの南にわたる北西アラビアの砂漠地帯に居住していた遊牧民であったがモーセの時代にはシナイ半島の各所で都市をつくり交易で富を築き上げたと言われている。さらに他民族の集落を襲っては略奪を繰り返していたとも言われている。
語句②アマレク人:英語Amalekites,:ヘブル語アマ・レイク[谷に住む人]・・・シナイ半島と荒野を占領し、パレスチナ南部の丘陵地帯とエジプト国境の間に住んでいた遊牧民。
語句③アモリ人:英語Amorites:ヘブル語エモリー[高地の人]・・・彼らはもともと、死海の西の高原地帯からヘブロンまでの土地を占領していた。イスラエル人はアモリ人の妻を娶ることが多くこの結果背教へと陥っていく。「アモリ人の神々」とはイスラエル人が好んで娶っていたアモリ人の妻の宗教のこと。
語句④主の使い(11) :英語the angel of the LORD;ヘブル語メルアッハ・イェホバ[伝令・主なる神の] 人物①ギデオン:英語Gideon;ヘブル語ギドゥオン[(木・石などを)切る人、採炭夫]・・・マナセ族アビエゼル人ヨアシュの末子でオフラの小さな町の一住民。