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使徒の働き25章

使徒の働き25章(25:1~27)
=本章の内容=

❶フェストゥスの知略❷法廷に立つパウロ❸アグリッパ王に会うまでの経緯

=ポイント聖句=

そこで、フェストゥスは陪席の者たちと協議したうえで、こう答えた。「おまえはカエサルに上訴したのだから、カエサルのもとに行くことになる。(25:12)
ただ、彼と言い争っている点は、彼ら自身の宗教に関すること、また死んでしまったイエスという者のことで、そのイエスが生きているとパウロは主張しているのです。(25:19)

=黙想の記録=

《1~5節》フェストゥスの知略
(1)フェストゥス(AD59~61)はフェリクス(AD52~59)の後任総督です。両者ともあの悪名高きネロの治世(AD54~68)の人物達です。このフェリクスによって2年間も監禁されていたパウロをローマはユダヤ人の暗殺計画を免れローマ行きが決定します。
(2)パウロの対するフェリクスとフェストゥスの取り扱いを比べてみます。
フェリクス:「ユダヤ人たちの機嫌を取ろうとして、パウロを監禁したままにしておいた。(24:27)
フェストゥス:「ユダヤ人たちの機嫌を取ろうとした(25:9)」
ルカは両者の共通点、歴代の総督がそうであったように「ユダヤ人たちの機嫌を取ること」が、政策と思っていたのです。つまり可もなく不可もなく無事穏便に在任期間を過ごせばそれで良しとしていたのです。現在の役人の相通ずるところがあります。
(3)しかし、前任者からも「パウロがローマ市民権を持つ者」であることを引き継いでいたため、祭司長たちに引き渡すのは、反(かえ)って得策ではないと思い、パウロの身の安全確保の為に、ローマ行きを暗に勧めています。告訴しに来た祭司長たちのいるエルサレムには事情聴取しただけで、すぐにカイサリアに引き返します。その距離陸路で約90kmは徒歩なら3日以上、馬でも2日はかかる遠方です。徒党を組んでカイサリアに行くには莫大な経費がかかるはずです。フェリクスがパウロを置いてエルサレムに単独できたのはそこが狙いでした。ユダヤ人のご機嫌取りだけの為のエルサレム行きだったのです。
《6~12節》法廷に立つパウロ
(1)フェリクスがカイサリアに引き返した翌日に慌ただしく法廷を開いたのは、祭司たちの陰謀の態勢が整ってしまうことを避けたかったからの行動です。始めから予測していた通り、パウロに政治的な目論見があるような訴状は全くでてきませんでした。そこで出廷したパウロに身の振り方を尋ねるのです。「おまえはエルサレムに上り、そこでこれらの件について、私の前で裁判を受けることを望むか」と尋ねられれば、パウロは当然それを拒否することを知り抜いていたのです。残念ながらパウロをローマに引き連れていくということは、ユダヤ人指導者の反感を買うことになりかねないのですが。
(2)そのころキリスト者は猛烈な勢いで増えていき、ローマでもその影響力が出てきていました。この法廷は、キリスト者撲滅を図ったネロの厳命(AD64)が出る直前、さらにユダヤ戦争(AD66)が勃発する前の出来事がでした。ですから、このt時点でローマ行きが決定したということは、ローマで殉教してしまうまでの数年間を何の支障もなく、パウロはローマ宣教ができたのです。ここにもやはり聖霊なる神様の大きな配慮があったと言えるのです。
《13~27節》アグリッパ王に会うまでの経緯
(1)ここに登場するのはアグリッパ2世で、ヘロデ王朝最後の統治者です。キリストの処刑とヤコブの処刑に関わったのはアグリッパ1世(ヘロデアンティパス)です。彼は前の二人とは異なり、ユダヤ教に真摯に向き合ってきた人物です。パウロが伝道するに値する人物でもあったわけです。ところが、一方で「アグリッパとベルニケ」と書かれているのは、兄ヘロデ1世の娘ベロニケと婚姻関係があったために、ユダヤ人たちから近親相姦の疑いをもたれていたからです。さらにその妹ドゥルシラは総督フェリクスの妻でした。
(2)フェストゥスの二人への説明は、始めからパウロのローマ行きを決めていたものです。「イエス」のことが唐突に出てきますが、これは前王アグリッパ1世がイエスの処刑に関わったように、このパウロの裁定を下さないようにとの警告だったのです。今やキリスト者は無視できない存在になっていることを暗に認めさせたかったとも言えます。いずれにしても、本章は、「聖霊なる神様がすでにパウロが行動する前にお膳立てを全て済ませてくださっていたこと」を覚えさせる章でもあります。
(3)神のなさることは、すべて時にかなって美しい。神はまた、人の心に永遠を与えられた。しかし人は、神が行うみわざの始まりから終わりまでを見極めることができない。(伝道者3:11)

 

 

使徒の働き

Posted by kerneltender