使徒の働き23章-2
使徒の働き23章-2(23:12~35)
=本章の内容=
❷パウロ殺害の陰謀❸総督フェリクスへの書簡
=ポイント聖句=ところが、彼が訴えられているのは、ユダヤ人の律法に関する問題のためで、死刑や投獄に当たる罪はないことが分かりました。(23:29)
=黙想の記録=《12~24節》パウロ殺害の陰謀
(1)最高法院での裁決が空振りに終わってしまったのを見て、アジアのユダヤ人グループはパウロ殺害の陰謀をめぐらします。「彼らは祭司長たちや長老たちのところに行って(23:14)」とあるように、すでに祭司長や長老はこのユダヤ人との裏取引があったと思われますが、アナニアのことです。きっと裏金を要求していたことでしょう。アジアのユダヤ人グループと祭司長たちの利害が一致したのです。
(2)彼らは最高法院だけでなく千人隊長をも抱き込みパウロ殺害の陰謀を実行しようとしたのですが、神様はそれを見逃すはずがありません。「パウロの姉妹の息子がこの待ち伏せのことを耳にしたので(23:16)」は偶然そこに居合わせたのではなく、これも聖霊なる神様の絶妙な配慮の一つだったのです。さらに、正義を重んじる千人隊長だからこそ、陰謀者に加担しなかったのです。パウロを逃れさせる手段を即座に実行に移すのです。しかもパウロたった一人の為に「歩兵二百人、騎兵七十人、槍兵二百人(23:23)」の警護付きで。まさに悪魔の策略に対し、聖霊なる神様の徹底した配慮をここで見ることができるのです。
《25~35節》総督フェリクスへの書簡
(1)アントニウス・フェリクスは元は解放奴隷の身分でしたが、実兄が皇帝クラウディウスの寵臣となったことから、紀元52年より、ユダヤ地方総督に就任しています。武力による弾圧を行ない、反乱鎮圧のため多くのユダヤ人を殺害したため、ユダヤ人たちのローマ本国への訴えにより、次期皇帝のネロにより罷免されました。
(2)千人隊長クラウディウス・リシアが総督フェリクスに送った書簡の内容を以下のようにまとめてみました。
①パウロはローマ市民権を持っている人物であること
② ユダヤ人にパウロ殺害の意志を持ち画策していること
③ ユダヤ教の最高法院で審問を受けたが、「死刑や投獄」に当たる罪を犯してはいないこと。彼らの訴えの内容は政治色のないユダヤ教に関するもの
④ ローマ市民権を持っているパウロに対して殺害の陰謀を図っていること
⑤ 訴えてきたユダヤ人の弁明を聞いてほしいこと
(3) アンティパトリスはエルサレムから山道を50kmほど北西方向に下って行ったところにある都市です。さらに北北西40km行ったところに港湾都市のカイサリアがありました。約100kmの行程を470人の兵士に守らて行くのです。さらに総督はヘロデの官邸に軟禁状態にしておくなど、正にVIP待遇だったのです。しかも、翻って考えてみれば、エルサレムからローマまで一切の旅費はローマ帝国持ちなのです。これを神様の特別な配慮と言わずに何と説明したらよいでしょう。ところが、総督フェリクスは駆け引きにたけていた人物でしたから、双方からより高額な賄賂を取ろうとして裁定の日を伸ばしに伸ばし、パウロをカイサリアで2年間も軟禁状態にしておくのでした。
(4) パウロがキリキア出身であることから、自ら裁定を下すことになるわけです。高額な賄賂を引き出すためには自ら裁判官にならなければならなかった訳で、正義と公平を重んじるローマ人のの片鱗も見ることができません。