イシュ・ボシェテの誤算

2024年7月4日

なるほどTheBible2024/02/27
=イシュ・ボシェテの誤算の誤算=
Q「アブネルは側女と関係を持った」は単なる噂だったのでは?
[参考聖書箇所]サムエル記第二 3章7-8節
7,サウルには、アヤの娘で、名をリツパという側女がいた。イシュ・ボシェテはアブネルに言った。「あなたはなぜ、私の父の側女と通じたのか。」
8,アブネルはイシュ・ボシェテのことばを聞くと、激しく怒って言った。「この私がユダの犬のかしらだとでも言うのか。今日、私はあなたの父サウルの家と、その兄弟と友人たちに真実を尽くして、あなたをダビデの手に渡さないでいる。それなのに今日、あなたは、あの女のことで私をとがめるのか。
A:アブネルの横暴ゆえの仕業がサウルの側女との一件だったと片付けてしまうのはあまりにも単純です。「あなたはなぜ、私の父の側女と通じたのか。」は単なる噂をイシュ・ボシェテが誇張してアブネルを弾劾しようとした目論見と私は考えました。
■恐らくダビデ軍との交戦はアブネルが計画したものでしょう。ユダ族を配下にしようと臨んだものの敗戦したことは、アブネルの将軍職としての威信を甚だしく落とすことになりました。また、イシュ・ボシェテ王もまた側近たちもこぞってアブネルに指導力に疑念を持ち始めていたことでしょう。「7,あなたはなぜ、私の父の側女と通じたのか。」とありますが、王の妻や側女(そばめ)は次期後継者の所有物であり、後継者以外の人間が彼女たちと関係を持つことは事実上イシュ・ボシェテの王位を無視し王位継承権を宣告したことになるのです。噂になるような事があったかもしれませんがアブネルが側女(そばめ)と実際に関係を持ったかどうかは不明なのです。何故ならアブネルはかなりの高齢でまたダビデ軍との戦闘に負けて来たのです。確かにアブネルは野心家ですが、道義に反するようなことをすれば当然部下たちの信用を落とし、諸部族からも侮られます。むしろイシュ・ボシェテのこの言葉は「噂を誇張しアブネルを部下たちの前で貶める」罠のように思えてなりません。重鎮たちも兵達も国民もアブネルに対して疑念を持ち始めた今だからこそ、その最大のチャンスなのです。アブネルの顔色を伺いながら国政を行う弱い国王というイメージを払拭するチャンスも今を置いては無いのです。ところが、アブネルの返答の第一声は「8,この私がユダの犬のかしらだとでも言うのか。」でした。ユダはつい先日まで戦いを交えていた敵です。「こんな馬鹿な真似をしてサウル王家に混乱を起こすようなことをするのはユダの犬(ダビデが送り込んだ工作員)の所業だ。そのユダの犬達の親分が私だというのか」という意味が込められているのです。アブネルはなおも「私はサウル王家の為に粉骨砕身尽くしてきたのに何という言い草だ」と怒りを爆発させるのです。しかしこれもアブネルのシナリオ通りだったのです。「疑念を抱かれただけならまだしも重臣たち部下たちの前で侮辱を受けたからにはそれ相応の態度をとずぞ」と言ってのけるのです。その内容はシナリオ通りダビデに寝返ることです。またダビデに王位を移譲する宣言を11部族に触れ回ることです。「11,イシュ・ボシェテはアブネルを恐れていたので、彼に、もはや一言も返すことができなかった。」とありますが、良かれと思った思い切った大見えだったのですが、反ってアブネルの絶大な権力を思い知らされるのです。イシュ・ボシェテの大きな誤算だったのです。