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サムエル記第二20章-3

サムエル記第二20章-3(14-26節)
=本章の内容=

❹シェバの最期❺エルサレムの重臣たち

=ポイント聖句=

22,この女は知恵を用いて、民全員のところに行った。それで彼らはビクリの子シェバの首をはね、それをヨアブのもとに投げた。ヨアブは角笛を吹き鳴らし、人々は町から散って行き、それぞれ自分の天幕に帰った。ヨアブはエルサレムの王のところに戻った。

=注目聖句=

15,・・・この町に向かって塁を築いた。それは外壁に向かって立てられた。ヨアブにつく兵はみな、城壁を破壊して倒そうとしていた。(新改訳2017版)
15,・・・城壁に向かってとりでを築きました。城壁を打ち壊そうというのです(リビングバイブル)

15,・・・they cast up a bank against the city, and it stood in the trench(KJV)【直訳】町に向かって土手を打ち、そこは塹壕の中に立っていました

※塹壕は土手の手前にあるもので城と土手の間の溝のことではない。そんなところに兵を配置すれば敵に狙い撃ちにされしまう。一説によると城壁と同じ高さ以上の土手を俄か作りし、その上から攻撃を掛けるという包囲戦と思われます。

18,・・・「昔、人々は『アベルで尋ねよ』と言って、事を決めました。(新改訳2017版)

18. ・・・ They were wont to speak in old time, saying, They shall surely ask counsel at Abel: and so they ended the matter.(KJV)【直訳】 昔から,「アベルに相談する」という習慣があったので,この問題を終わらせたのです。

※アベルはここでは人名ではなく地名のこと。『アベル周辺地域では論争が起こったとき「アベルのところに行って助言を受けよう」という習慣になっていた。それほどまでに評価されたアベルがシェバを無条件で受け入れる筈はない。同胞が逃げ込んで来たので止む無く受け入れたが、ここはイスラエルの律法((申命記20:10-20)の戦争についての規定に則り相談しようではないか。』と意味と思われる。「知恵のある女」とある「知恵」とはイスラエルの律法に精通していることを意味するらしい。ここに登場する女性がイスラエルの律法を知っていたのでヨアブにこの律法の規定を順守して欲しいと訴えたというのがこの場面だろう。

=黙想の記録=

❹14-22節:シェバの最期・・・「14一方、シェバはイスラエル全部族の間を駆け巡って、ベテ・マアカにあるアベルの町へ行き、自分が属するビクリ氏族に、総決起を呼びかけました(リビングバイブル)。」とあるようにシェバは結果的にどの部族の支援も得られなかったのです。イスラエル10部族の長老や軍団長達が声高に叫んできた時のギブオンのパッションはどこに行ってしまったのでしょう。シェバは梯子を見事に外されてしまうのです。結局敗走先が自分の故郷になってしまっただけのストーリーになってしまうのです。実質ダビデ軍の最高司令官となったをヨアブは、12部族の連合軍を編成し、シバとその部下が隠れていたユダヤ人の城壁の町を包囲します。「15,塁を築いた」とありますが、要塞を包囲する程の土手を一日二日程度で俄かに作るのは不可能です。これは兵糧攻めも含めての作戦なので数週間を要したかもしれません。ですから城内にいる者達には脅威に他ならないのです。ところで申命記20:10-20には戦争についての規定が記されており、徹底抗戦の前に和平を提唱する様に書かれています。同じく20:19-29には包囲戦についての諸注意が記述されていることをご存じだったでしょうか。そこには「実を結ぶ木を伐採してはならない」との包囲戦に関する規定があるのです。この規定が意味する者は「その地を荒廃させてはならない」ということに他なりません。つまり包囲戦は和平工作の一プロセスなのです。ヨアブが無慈悲であるならこんな遠回しな作戦は立てないでしょう。案の定その城壁内から全面降伏を願う人物が出て来たのです(16-19節)。城内にいる人々は決して一枚岩ではなかったのです。シェバがここに逃げ込んで来たのはベニヤ民族にさへ見捨てられているからです。シェバから恩恵を受けて来たこともないのです。匿う必要性などありません。このシェバと心中するつもりなど決してあり得ないのです。勇気ある女性がヨアブとの和平交渉に向かいます。ヨアブはイスラエルの正義を行使するためにシェバを追って来ただけです。ヨアブは「シェバの首を差し出せば攻撃しない」と約束するのです。女性はヨアブの提案に従いシェバを殺害し首を差し出すのです。無論この女性がシェバを殺害したわけではなくシェバに賛同する城下の男たちの手を借りたことでしょう。すわ全面戦争となろうとしたところをこの女性の行動がアベル・ベテ・マアカを救ったのです。ヨアブは自らシェバの首を携えてエルサレムの王ダビデのところに戻ったのです。無論エルサレムは諸手を上げて戦勝記念を行ったことでしょう。ダビデはアサフ殺害についてここでも不問に付しています。

💙ヨアブを「最高権力者となる欲に取りつかれたあわれな男」の様に評するのは如何なものでしょうか。ヨアブは「全ては国家の為」との正義を振りかざしながら、何のためらいもなく親族(アブネル・アブシャロム・アサフ)を殺害できた人物です。「国家に仇名す者は必ず抹殺されなければならない」という方程式を持っていたのです。誰が見ても人畜無害と思われていたアサフさへもです。しかしこの冷徹にして峻厳な人物がイスラエルにいたからこそ、ダビデ王朝はその基礎が作れたとも言えるのです。ならば一番殺害すべきターゲットはダビデその人です。しかしダビデの四男アド二ヤの反乱に組するまで彼は黙々とダビデに仕えているのです。民の数を数え多くの民の命(七万人)を奪うというダビデの愚行(Ⅱサムエル24章)は、「ダビデはイスラエル国家に不用な人物である」との裁断を下してしまう決定打になってしまうのです。ダビデのソロモンに託した遺言にヨアブ殺害をほのめかす一文(Ⅰ列王2:5-6)があります。ダビデが抹殺したいと願っていた人物はダビデ王朝の基礎を作ったヨアブであったことが明らかにされる遺言です。ダビデもまたヨアブと同じことを繰り返すのです。側近中の側近が最大の敵であったとはなんという皮肉でしょうか。

❺23-26節:エルサレムの重臣たち・・・ダビデはヨアブを将軍職から退位させる決意をしたのです。しかし今回のシェバの反乱の最大の功労者はヨアブです。臣下も民意も実力を認めるヨアブを否定するわけにはいかないのです。重臣リストは、Ⅱサムエル8:16-18にすでに記述されています。新たに加わったのは書記シェワと祭司イラで、いなくなったのはヨシャファとセラヤですがその理由は不明です。ヨルダン川東岸のギルアデからイラを登用しますが理由は不明です。祭司にダビデの子供たちが明記されていません。家庭内の混乱ぶりから公職に付けることに躊躇したものと思われます。王の子供であるという地位が必ずしも国家の役に立たないことをダビデは身に染みたようです。

=注目語句=

語句①ベリ人(14):英語Berites;ヘブル語べリーム[私の井戸]・・・イスラエル北方にすんでいたベニヤ民族のことと推測されている
語句②ヤイル人(26):英語Jairite;ヘブル語ヤイール・・・ギルアデの丘陵地帯

=注目地名=

地名①アベル・ベテ・マアカ(14):英語Abel, and to Bethmaachah;ヘブル語アベイル・ベイス・マアッハ・・・ナフタリ族のの近くにあるパレスチナ北部の都市、マアカの家がある草原。強力な要塞都市。「イスラエルの母」とも呼ばれている

=注目人物=

人物①エホヤダ(23):英語Jehoiada;ヘブル語イェホヤダ[エホバは知っている]・・・ダビデの勇敢な戦士の一人

人物②ベナヤ(23):英語Benaiah;ヘブル語ベナヤ[エホバは建てられた]

人物③シェワ(25):英語Sheva;ヘブル語シェヤー[エホバは争う,論争する,競争する]

人物④イラ(26):英語Ira;ヘブル語イラー[町を見張る]