ヨアブはなぜダビデを裏切るのか
なるほどTheBible2024/04/04
=ヨアブはなぜダビデを裏切るのか=
Q:ヨアブは最高権力者となる欲に取りつかれたあわれな男なのですか?
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[参考聖書箇所] サムエル記 第二 20章11節
ヨアブに仕える若者の一人がアマサのそばに立って言った。「ヨアブにつく者、ダビデに味方する者は、ヨアブに従え。」
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A:結論から言えばNOです。ヨアブは国家に忠義を尽くして来た男です。ヨアブを「最高権力者となる欲に取りつかれたあわれな男」の様に評するのは如何なものでしょうか。ヨアブはダビデの荒野時代から最前線でダビデの盾となり剣となってきました。「エホバが選ばれた国王」であるとダビデを尊敬しその命令に何の疑いも感じず従ってきたのです。ヨアブがダビデの目に従わなくなってターニングポイントは、第一にアブネルがヨアブの弟を殺害したのにも拘わらずアブネルをしかし、ウリヤ事件ではダビデの暗黒部分を、バテシェバとの婚姻はイスラエルの正義に従わないダビデの弱さを見せつけられてしまったのです。数万に同属を死に追いやった将軍アブネルを歓待し全イスラエルの総司令官に据えるのは、エホバに伺いを立てないダビデの独断行動です。かと思えばサウルの一残った一族をギブオン族の言いなりになって売り渡してしまうのです。行き当たりばったりのその場の雰囲気に流されて政策を決めていくダビデにはエホバの正義と公正に満たされた麗しい感性を見いだせなくなっていたのです。「国家の為」との正義を振りかざしながら、何のためらいもなく親族(アブネル・アブシャロム・アサフ)を冷酷に殺害できた人物であることは確かです。しかし今の体たらくのダビデにはエホバの正義を実行する力はないと踏んだのです。このままではイスラエルは衰退すると危惧したヨアブには「ダビデに代わり私ヨアブが国家に仇名す者は必ず抹殺されなければならない」という方程式を持ったのは当然のことなのです。しかしこの冷徹にして峻厳な人物がイスラエルにいたからこそ、ダビデ王朝はその基礎が作れたとも言えるのです。ならば一番に殺害するべきターゲットはダビデその人です。しかしダビデの四男アド二ヤの反乱に組するまで彼は黙々とダビデに仕えているのです。しかし、民の数を数え多くの民の命(七万人)を奪うというダビデの愚行(Ⅱサムエル24章)は、「ダビデはイスラエル国家に不用な人物である」との裁断を下してしまう決定打になってしまうのです。ダビデのソロモンに託した遺言にヨアブ殺害をほのめかす一文(Ⅰ列王2:5-6)があります。ダビデが抹殺したいと願っていた人物はダビデ王朝の基礎を作ったヨアブであったことが明らかにされる遺言です。ダビデもまたヨアブと同じことを繰り返すのです。側近中の側近が最大の敵であったとはなんという皮肉でしょうか。