サムエル記第二18章-1

サムエル記第二18章-1(1-8節)
=本章の内容=
❶ダビデ軍の陣営❷エフライムの森
=ポイント聖句=1,ダビデは自分とともにいる兵を調べて、彼らの上に千人隊の長、百人隊の長を任命した。
5,王はヨアブ、アビシャイ、イタイに命じて言った。「私に免じて、若者アブサロムをゆるやかに扱ってくれ。」兵はみな、王が隊長たち全員にアブサロムのことについて命じているのを聞いていた。
=黙想の記録=❶1-5節:ダビデ軍の陣営・・・都落ちした時ダビデは親衛隊以外に兵は居なかったのはあまりにも突然な旅立ちだからでしょう。しかしマハナイムに拠点を移動したと分かると、求めに応じて元々のダビデ軍の兵達は続々と結集していったことでしょう。戦闘経験のある数千人以上の兵が集まってきました。彼らの中には常備軍ではなくダビデの荒野時代からダビデに従っていた民兵も多くいたはずですがいずれも戦いの熟練者ばかりです。「1,ダビデは自分とともにいる兵を調べて、彼らの上に千人隊の長、百人隊の長を任命した。」で「兵を調べて」は「招集する」の意味と思われます。マハナイムから兵達に伝令を飛ばしたのかもしれません。「千人隊の長、百人隊の長を任命した」とあるようにダビデは軍隊の綿密な組織化を図りました。ヨアブ・アビシャイ・イタイを三つに分けた旅団(連隊)の司令官に据え命令系統を明らかにしました。ヨアブ・アビシャイはダビデの異母姉妹ツェルヤの息子たちでイスラエル人部隊を統率させました。またイタイは外国人傭兵部隊を統率させました。フシャイはアブシャロムに最高司令官として出陣するよう進言していましたが、この作戦ならば「最高司令官が倒されることで全部隊総崩れとなる」危険性があるのです。フシャイがわざとこの作戦を提唱したのはここに目的があったからです。一方ダビデの参謀はこの危険性からダビデが最高司令官として出陣するのをとどめました。「ダビデが倒されてしまうのは全部隊総崩れの危険性」があるのは当然ですが、さらに言うなら「戦いの大義」さへも失うことになるからです。つまり他の将軍はダビデの代わりにはなれないのです。ダビデは先頭に向かう司令官たちに向け次のことを懇願しています。「5,・・・私に免じて、若者アブサロムをゆるやかに扱ってくれ。」とあります。端的に言えば「彼を捕虜として取り扱ってもよいが彼を殺さないでくれ。」との意味です。しかしその言葉の舌下には、「自分の息子は確かに反逆罪という大罪を犯してはいるが、最後のチャンスとして悔い改めを促すためにチャンスを与えてくれ」の意味が込められているのです。さらに「アブシャロムがこのような過ちを犯したのはもとを正せばダビデ自身が主なる神様を侮った故の裁きである。エルサレム追放という大きな裁きを自ら負ったのだから、アブシャロムをこれ以上苦しめないで欲しい」との良心の呵責がダビデにはあったからなのです。「3,・・・兵はみな、王が隊長たち全員にアブサロムのことについて命じているのを聞いていた。」とあり、アブシャロムの処遇に対するダビデ王の願いを一兵卒まで知っているのです。ですが、その願いは後で空しく帰ってくるのです。
❷6-8節:エフライムの森・・・「8,戦いはこの地一帯に広がり、この日、剣よりも密林のほうが多くの者を食い尽くした。」とあります。平原で隊列を組んで正面攻撃で臨むアブシャロム軍に対し、ダビデ軍の三部隊は三方向から包囲し一斉に攻撃を開始したところ、アブシャロム軍はパニックに陥り隊列を崩して森の中を四方八方に逃げ込みました。ダビデ軍はゲリラ戦にも長けています。森に潜んでいるアブシャロム軍など簡単に見つけ出し倒すことができるのです。
※詩篇27篇は「崩れ落ちたのは私に逆らう者私の敵(27:2)」アブシャロム軍が総崩れとなった時であることや「私のいのちの日の限り主の家に住むことを。(27:4)」から未だにエルサレムに帰還できない状況下にあることを察することができます。
●王位に返り咲くことよりむしろ「主の足元であるエルサレムで主なる神と親しい交わりの時を過ごすこと(27:4・6)」という動機こそエルサレムに帰還する目的であることを告白しています。
●ダビデ敵の陣営が総崩れと思われる時でさへ有頂天になっていない(27:11~14)のです。
●「待ち望め主を。雄々しくあれ。心を強くせよ。待ち望め主を。(27:14)」はヨシュアに向けられた主なる神の言葉に酷似しています。自分を奮い立たせるのは今までの実績ではなく主なる神様が共にいてくださるということをダビデは確信しているのです。
=注目語句=語句①兵を調べる(1):英語numbered the people;ヘブル語パケードゥ[注意を払う,観察する,召集する,呼び出す]
語句②千人隊(1):英語thousands;ヘブル語エリップ[旅団(連帯)の単位]・・・戦闘部隊のほか、食糧などの補給する後方支援部隊など様々な職種が集まった基本的な作戦部隊
語句③百人隊(1):英語hundreds;ヘブル語メアー[小隊の単位]・・・旅団を構成する兵の集団
語句④ゆるやかに扱ってくれ(5):英語deal gently ;ヘブル語アトゥー[優しく,柔らかく,取り囲む] =注目地名=
地名①エフライムの森(6):英語the forest of Ephraim;ヘブル語ヤエーイル・エフライーム[森・エフライム]・・・ヨルダン川西岸のエフライム部族の領地ではなく明らかにギレアデに広がる大森林のことと思われる。エフライムの領地にある森林がギレアデにも広がっていたという説やエフライム人がここやその近くで家畜を飼っているからという説もある。