最新情報

サムエル記第二15章-3

サムエル記第二15章-3(13-22節)
=本章の内容=

❸都落ちのダビデ

=ポイント聖句=

15-16,王の家来たちは王に言った。「ご覧ください。私たち、あなたのしもべどもは、王様の選ばれるままにいたします。」王は出て行き、家族のすべての者も王に従った。しかし王は、王宮の留守番に十人の側女を残した。

21,イタイは王に答えて言った。「主は生きておられます。そして、王様も生きておられます。王様がおられるところに、生きるためでも死ぬためでも、このしもべも必ずそこにいます。」

=黙想の記録=

❸13-22節:都落ちのダビデ・・・アブシャロムがヘブロンでクーデターを起こしエルサレムに入城したのは紀元前979年と推定されています。ところがその後ダビデの軍と戦闘中に殺害されるまでわずかに1か月。つまり在位期間はたったの1か月なのです。彼の王国がこんなに短命なのはアブシャロムの統治能力がただの見せかけだったことによるのです。ダビデは状況を把握し的確かつ早急な対策を取らなければなりません。アブシャロムは若さゆえの衝動や取り巻き連中の野望から今後直ちにエルサレムを攻略してくるに違いないと予測したからです。エルサレムは強固な要塞ではありますが長期の包囲戦には不向きです。長期戦なればエルサレム住民を餓死という危機に陥れるからです。また徹底抗戦をした場合城内の建造物は様々な攻撃により多くの損傷を受けることでしょう。時間を掛けて建設した宮殿や神殿建設の為に準備した物は恐らく全て破壊されるでしょう。ですから、現時点では「エルサレムから一刻も早く逃げ出すこと」が的確で懸命な判断なのです。ダビデは重臣たちと家族を連れだってエルサレムから脱出します。詩篇3篇は表題にある様にこの時の心境を歌ったものですが、このアブシャロムのクーデターが主なる神様の御意志(今や剣は、とこしえまでもあなたの家から離れない。Ⅱサムエル12:10))から出たものであることを自覚していたのです。『15家臣たちは、「あなたにお従いします。お考えどおりになさってください」と答えました。』家臣たちはダビデのどこを見てこのように従順な態度を取ることができたのでしょう。この家臣たちのほとんどはサウルの追撃時代からの臣下であり友でもあったのです。詩篇3篇は祈りの詩篇です。ダビデが信仰に立った時いつでも主なる神様が傍にいたことまたダビデに手を差し伸べて下さった現場を目撃した人々です。ダビデ同様暗黒の世界に入ろうとも主なる神様が必ず導いてくださることを確信していた人物でもあるのです。強靭で勇敢な兵士が数万いることよりも信仰の友が数人いるだけで集団はより強く結束できるのです。ところで「16,・・・しかし王は、王宮の留守番に十人の側女を残した。」にはどんな意味があるのでしょう。「留守番」と訳された単語は「家財道具や家具を守る」と言う意味で、アブシャロムとその部下たちによって損害を与えないようにするためだったとあります。アブシャロムは品行方正の青年(それが証拠にエルサレムに上るまで妻は一人)です。よもやダビデの側室たちに危害を加えないと思い込んでいたのです。アビシャロムが宮殿を乗っ取りそのまま利用するとなれば、使用人として使える筈です。またダビデと一緒の行動を取れば命の危険を冒す可能性が高いのです。ダビデは側室たちの安全を確保するためにこうした方法を取ったのではないでしょうか。しかし現実は全く異なってしまいます。この側室はⅡサムエル12:11の成就となってしまったのです。・・・ところで側室が十人とは呆れてきませんか。正室とは異なりダビデの夜伽の相手です。言い換えれば単なる性愛の対象です。・・・「17-18ダビデは町はずれでひと息つき、その間に、あとに従ってガテからついて来た六百人のガテ人と、ケレテ人、ペレテ人の外国人部隊を、先導役として王の前を進ませるようにしました。(リビングバイブル)」とありますが、彼らはダビデの荒野時代からの部下で精鋭部隊600人からなる軍団です。ですがこの600人が百戦錬磨の兵とは言え数万に膨れ上がったアブシャロム軍とは主の特別な介入がない限りまともに戦えるとは思えません。19-22節にガテ人イタイのことが挿入されています。「異国人で、自分の国からの亡命者」のダビデの言葉や「主は生きておられます」とのイタイ自身の告白の言葉から察すると敬虔な改宗者となりダビデに尽くしてきた人物と思われます。その後ダビデが彼に軍の三分の一の指揮権を取らせたことでも分かるようにダビデの信任の厚い経験豊富な将軍であったに違いありません。ここでイタイが登場するのは先に登場していたアヒトフェルとの比較です。作者は「主なる神様への敬虔な信仰があれば当然ダビデの側に付く」と言いたいのでしょうか。「20,あなたは昨日来たばかりなのに、今日、あなたをわれわれと一緒にさまよわせるのは忍びない。私はこれから、あてどもなく旅を続けるのだから。あなたの兄弟を連れて戻りなさい。恵みとまことがあなたとともにあるように。」のダビデの言葉に心を動かさない方はいないでしょう。平凡な人間なら「無理しても私についてきて欲しい」と手をすり合わせて懇願するでしょう。しかしダビデはイタイとその仲間のことをとことん思いやっているのです。しかしイタイとその仲間が去ってしまえばいったい誰がダビデ一行を守るというのでしょうか。ダビデのこの慈愛に満ちた言葉を受けてイタイは「主は生きておられます。そして、王様も生きておられます。王様がおられるところに、生きるためでも死ぬためでも、このしもべも必ずそこにいます。」と応えます。これこそ真の信仰者の態度です。主なる神様の為なら命をも投げだす覚悟は私達も心に刻んで置く必要があります。

=注目語句=

語句①留守番(16):英語keep the house.;ヘブル語シャメイル・バイイェス[守る(見張る),家]

語句②クレタ人(18):英語Cherethites;ヘブル語ケレィスィ[死刑執行人,実行者]・・・ダビデ王の護衛として働く外国傭兵のグループ。処刑人もいた。クレタ人または原始ペリシテ人のいずれか。

語句③ペレテ人(18):英語Pelethites;ヘブル語ペレィスィ[案内人,ガイド,急使;特使,密使.]・・・おそらくペリシテ人傭兵の子孫

語句④ガテ人(18):英語Gittites;ヘブル語ゲティー[ガテに所属する者]・・・彼らの存在については諸説あり、ダビデの荒野での放浪期に優れた武勲を残した600人の部下であり、特別な軍団を結成していたとの説がある。(Ⅰサムエル23:13、27:2、30:9)。クレタ人とペレテ人とガテ人による混成部隊であるのかガテ人だけの人数であるかは不明。

=注目地名=

地名①町外れの家(17):英語a place that was far off.;ヘブル語ベイスハメハク[移動可能な天幕,あずまや,仮設建築,] =注目人物=

人物①イタイ(19):英Ittai;ヘブル語イタイ[私と一緒]・・・ガテ人傭兵の指揮官