サムエル記第二15章-1

サムエル記第二15章-1(1-6節)
=本章の内容=
❶アブシャロムの人心掌握
=ポイント聖句=1,その後、アブサロムは自分のために戦車と馬、そして自分の前に走る者五十人を手に入れた。
=黙想の記録=❶1-6節:アブシャロムの人心掌握・・・ダビデ57才、アブシャロム26才、ソロモン16才。本章ではアブシャロムが陰湿な陰謀者に豹変しているかのように思われます。アブシャロムはなぜダビデ王を排斥し自ら王になろうと画策したのでしょうか。その鍵を説くのがソロモンの年齢にあります。この時ソロモンは16歳ですでに成人式を済ませ青年王族(日本で言う「成年皇族」)として政務に参加していたと思われます。どの時点で約束したかは不明ですがダビデ王はソロモンを次期国王にするとバテ・シェバに約束しているのです(Ⅰ列王記1:17)です。ということは2年間の追放と3年間の蟄居期間はソロモンの表舞台に出すための準備期間であったと言えるのです。エルサレムでの3年間の沈黙の後ダビデ王に謁見する(14:33)のですがダビデ王が冷たくあしらったのは「ダビデ王の継承者はソロモンでありアブシャロムではない」ことが理由だったと知るのです。この時からアブシャロムは「力ずくでの王位奪取」を決意したものと思われるのです。以降のアブシャロムの動きをまとめてみます。
[1]「1,このあとアブシャロムは、りっぱな戦車とそれを引く馬を買い入れました。さらに、自分を先導する五十人の馬丁を雇いました。(リビングバイブル)」とありますが、ここでの馬で引く二輪戦車とその御者は王の前を走らせる謂わば飾りです。アブシャロムは自分があたかも次期国王の様な存在として威厳を表現したかったのです。サウル王もダビデ王もこんな真似はしていません。こんな表現はきっと母方の親戚つまりゲシュルの王タルマイから学んだものでしょう。場合によるとタルマイからダビデ王打倒をけしかけられていたかもしれません。
[2] 「6こうして、アブシャロムは巧みにイスラエル中の人たちの心をとらえていったのです。(リビングバイブル)」とありますが、2-6節がその方法です。本来民からの訴えの多くはダビデ王自身の公務です。全イスラエルから持ち込まれる膨大な訴えにダビデ王や側近だけでは到底処理しければならないのです。早朝から民の様々な訴えを聞き対処するのアブシャロムが自ら率先して国王の公務を肩代わりする姿はダビデ王から見れば殊勝な心掛けです。その為ダビデ王は黙認してしまうのです。当然この熱心はアブシャロムから一旦離れてしまった民の人気を取り戻す為に過ぎなかったのです。初めは「国王は公務で忙しいのであなたの申し出(訴え)を聞いている時間がない」と語っていたのが、次第に「国王や臣下はあなた方平民の申し出など端から聞くつもりはない」と国王を含む現政府の怠慢を批判する様に変化させていくのです。「5,人が彼に近づいてひれ伏そうとすると、彼は手を伸ばし、その人を抱いて口づけしていた。」とありますがまた王子自らがスキンシップを計るのです。国民に寄り添う姿を実に上手に演出しているのです。いつの世界でもこれが野心を隠しながら権力の掌握を着実に進める方法なのです。
語句①戦車(1):英語chariots;ヘブル語メルカバー[二輪戦車]
語句②自分の前に走る者(1):英語men to run before;ヘブル語イッシュ・ルッツ・パネイム[男・走る・前]