サムエル記第二14章-1

サムエル記第二14章-1(1-11節)
=本章の内容=
❶テコアの女の演技
=ポイント聖句=11,彼女は言った。「どうか王様。あなたの神、主に心を留め、血の復讐をする者が殺すことを繰り返さず、私の息子を消し去らないようにしてください。」王は言った。「主は生きておられる。あなたの息子の髪の毛一本も決して地に落ちることはない。」
=注目聖句= 1,ツェルヤの子ヨアブは、王の心がアブサロムに向いていることを知った。(新改訳2017版)1,将軍ヨアブは、アブシャロムに会いたがっている王の気持ちを察しました。(リビングバイブル)
1,ツェルヤの子ヨアブは、王がアブシャロムに敵意をいだいているのに気づいた。(新改訳3版)
1,Now Joab the son of Zeruiah perceived that the king’s heart was toward Absalom.(KJV):直訳:さて、ゼルヤの子ヨアブは、王の心がアブサロムに向かっていることに気がつきました
※新改訳3版ではダビデがアブシャロムに対して「敵意を抱いている」と訳しているが、リビングバイブルでは「会いたがっている」と真逆な訳となっている。その他の翻訳は「向いている・向かっていると」は肯定・否定どちらにもとれる訳になっている。「向いている」はヘブル語でアェールで「向かっている」の意味の他に「反対して,不賛成で,難色を示して,不可として」の意味がある。
=黙想の記録=❶1-11節:テコアの女の演技・・・ヨアブは前述した様にダビデとの間に確執(Ⅱサムエル3:28-39)はあったもののイスラエル国家の為なら己を捨てて尽くすことのできる人物です。アブシャロムが国を追われてから三年が経過し重臣たちを含めた国民感情がアブシャロムに対して微妙に変化してきたのを察したこともこの行動の要因と思われます。アブシャロムは「三年間の国外追放の処罰」を受けたも同然であるから恩赦をかけて当然ではないかという国民感情です。また国民は長子アムノンよりはるかに品位品格があり政治力のあるアブシャロムを待望する雰囲気をヨアブは汲み取ったものと思われます。ヨアブがダビデとアブシャロムの間を取り持とうとしたのは国家の安定を保つヨアブ自身の願いからでありダビデへの忖度からとは思えません。しかし国王に直訴した場合ヨアブとの間にわだかまりを持っているダビデが端から否定するかもしれません。そこで預言者ナタンが「たとえ話」でダビデを改心させた例に倣い「テコアの女」に大芝居を討たせ間接的に国民の声を伝えまたダビデの不作為の罪に対して諫言しようとしたものです。しかしこの行動はヨアブの忠義心から出た善意の行動ではありますが信仰心からではありません。ダビデもヨアブもこの件に関して主なる神様の御心を伺うことはありません。
【テコアの女の芝居内容】
●こんな重要な任務を任すわけですからテコアの女性とヨアブとは前から面識があった考えるべきです。聡明な女性にダビデとアブシャロムの仲を取り持つための大芝居をするように依頼します。内容をまとめてみます。
※二人の息子とはアムノンとアブシャロムのことで、アブシャロムが加害者でアムノンは被害者という想定。 [3]親族が「残った息子を殺人を犯した犯罪者として死罪にする」と脅迫している
※血の復讐の規定「21怒りに狂ってなぐりつけたりして人を殺した場合は、明らかに殺人罪だから、犯人を処刑してもかまわない。(民数記35:21)」を根拠にして親族が加害者の息子に制裁をするというもの。アブシャロムは律法によれば殺人者となる。臣下の中にはアムノン側の人物もおりこの血の復讐を求める声もあったのかもしれないのです。 [4]残った息子は家督を継ぐものでこの息子が殺害されれば女の家系は絶やされることになる。親族は我が家の財産を横取りするために「血の復讐」を実行しようとしている。だから親族の要求を無効にしてほしい。
※品格品位の点でもまた政治の実力でも優秀でなおかつ王位継承の一人アブシャロムに血の復讐を適応することは国家の損失である。ゆえに何の咎めもなくエルサレムに召喚していただきたい。 [5] 「9,主君である王様、責めは、わたしとわたしの父の家にございます。王様も王座も責めを負ってはなりません。」はテコアの女が一番強調したかったセリフです。
■『責めは、わたしとわたしの父の家にございます。』とは「加害者である残された息子は律法に照らし合わせれば殺人者そのもの。もしこの律法が適用されてしまうのなら私と息子に処罰がくだされるのは必然です。」との意味です。
■『王様も王座も責めを負ってはなりません。』とは「王様が対応してくださる内容は律法の文言に明らかに違反となります。「律法を曲げてまで息子と我が家を守ると約束される」のは王様ご自身と王座に傷をつけることになるのです。それが私の一番の心配です。」という意味なのです。
※「アブシャロムを赦免するのは律法を曲げる重大な行為。その責任をダビデ王は負うことになるが大丈夫なのか」とダビデに迫る言葉なのですが、ダビデはよもやアブシャロムのことを言っているとは思ってもいません。
【ダビデの約束】
●このテコアの女大芝居でダビデは思わず以下の約束を明言してしまいます。ダビデがテコアに約束した内容は以下の通りです。
地名①テコア(2):英語Tekoah;ヘブル語テコア[要塞,収容所, 柵で囲んだ陣地]・・・エルサレム南南西15kmの丘の上にある村。預言者アモスの家。また、ダビデの30人の英雄の一人であるイラの出身地でもあり(2サムエル23:26)、ヨアブの故郷であるベツレヘムに十分近く、ヨアブはこの「賢い女」について個人的に面識があったと思われる。