サムエル記第二13章-3
サムエル記第二13章-3(30-39節)
=本章の内容=
❸アブシャロムの行方
=ポイント聖句=37,アブサロムは、ゲシュルの王アミフデの子タルマイのところに逃げた。ダビデは、毎日アムノンの死を嘆き悲しんでいた。
=注目聖句=39,アブサロムのところに向かって出て行きたいという、ダビデ王の願いはなくなった。アムノンが死んだことについて慰めを得たからである。(新改訳2017版)
39, ダビデは、アムノンの死についてしばらく嘆き悲しんでいましたが、ようやくあきらめがついたのか、アブシャロムに会いたいと思うようになりました。(リビングバイブル)
39, And the soul of king David longed to go forth unto Absalom: for he was comforted concerning Amnon, seeing he was dead.(KJV) 【直訳】ダビデ王の魂はアブサロムに行くことを望んだのです。彼はアムノンが死んだのが分かったのでアムノンの死に慰められた。
39, And King David now reconciled to Amnon’s death, longed to be reunited with his son Absalom.(NLT)【直訳】ダビデ王はアムノンの死を諦め、息子アブサロムと再会することを切望しました。
=黙想の記録=❸30-39節:アブシャロムの行方・・・突然の出来事である為に参列者に大混乱が起きます。王子に先んじて現場から逃げ出してエルサレムに辿り着いた者がいたようです。恐怖のあまり「30,アブシャロム様が王子たちを皆殺しになさいました。生き残った方は一人もありません!(リビングバイブル)」と報告してしまうのです。「31王はびっくりして立ち上がり、服を引き裂き、地にひれ伏すようにその場に倒れ込みました。家臣たちも、恐れと悲しみに包まれて服を裂きました。(リビングバイブル)」とあるようにダビデとその臣下たちは狼狽するだけです。「アブシャロムが王子全員を殺す」ということは王位継承権をアブシャロムが強奪したことになります。これは明らかにダビデ王に対する反逆罪なのです。この時点でダビデはアムノンとアブシャロムの確執をすっかり忘れているのです。どれだけ鈍感なのでしょう。ところが直後ヨナダブがダビデに謁見し事の次第を語るのです。「32-33,違います。王子たちがみな殺されたのではありません! 殺されたのはアムノン王子だけです。アブシャロム様は、タマル様のことがあった日から、ずっとこの機会をねらっていたのでしょう。王子たちみなではなく、アムノン王子だけです。(リビングバイブル)」ヨナダブはアムノンに悪知恵を吹き込んだ人物でアムノンが犯した事件の詳細を一番よく知りうる人物です。アブシャロムとの接触があったかは不明ですが同世代であるためにアブシャロムの同行には関心があり情報が入っていたのでしょう。場合によると自分のアドバイスの結果巻き起こしてしまった不祥事でもあり良心の呵責が絶えずあったのかもしれません。このヨアブの言葉でダビデはアムノンが起こした不祥事を思い出し同時にこの二年間何のアプローチもしてこなかったことに気が付くのです。王子たち一行が戻ってくるのを見届けダビデと臣下たちは一応の安堵に包まれるもののこの悲劇に再び驚き悲しむのです。ダビデが悲しみに打ちのめされる原因はアムノンの一件だけではありません。それはウリヤを激戦地に送り殺害したのをナタンに責められた時の言葉「今や剣は、とこしえまでもあなたの家から離れない。あなたがわたしを蔑み、ヒッタイト人ウリヤの妻を奪い取り、自分の妻にしたからだ。(Ⅱサムエル12:10)」という神託が実行に移されたことを思い返したからです。この事件以降「37-38,アブサロムは、ゲシュルの王アミフデの子タルマイのところに逃げた。・・・アブサロムは、ゲシュルに逃げて行き、三年の間そこにいた。」とあるように母方の実家に身を隠します。もちろん身の安全を確保するためですが、イスラエルに残った場合親アムノン派の重臣がアブシャロムに反逆罪を問う可能性があったからです。ゲシュル人と言えば、ダビデがペリシテ人のツィクラグに居留していた際、略奪先となっていた民族(Ⅰサムエル27:8)です。アムノン殺害の相応の裁きの為アブシャロムを引き渡すよう要求したのなら何らかの抵抗が起こるやもしれません。孫娘を凌辱したアムノンの罪を裁かず正義を貫いたアブシャロムを犯罪者扱いにすることはゲシュルの王アミフデの面子をも潰すことになるのです。場合によると武力衝突まで発展しかねません。さらに武力衝突に発展した場合にはアブシャロムに同情し組するイスラエル人も出てくるかもしれないのです。ならばダビデはアブシャロムがイスラエルに自ら帰国するまで待機する方が懸命と考えるのです。この時点のダビデは主なる神様から顔を背けていた状態ですから正しい方法を主なる神様に伺うことすらしたがらないのです。「39,ダビデは、アムノンの死についてしばらく嘆き悲しんでいましたが、ようやくあきらめがついたのか、アブシャロムに会いたいと思うようになりました。(リビングバイブル)」とありますが、長男アムノンの愚かな行為には目を瞑り、当然の怒りを形にしてしまったアブシャロムに対しては同情の欠片もないとも思えるダビデの行動です。それにしても「三年間」は長すぎるのです。
=注目語句= =注目地名=