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サムエル記第二11章-2

サムエル記第二11章-2(6-13節)
=本章の内容=

❷ダビデの責任転嫁とウリヤの心情

=ポイント聖句=

8,ダビデはウリヤに言った。「家に帰って、足を洗いなさい。」ウリヤが王宮から出て行くと、王からの贈り物が彼の後に続いた。

11,・・・神の箱も、イスラエルも、ユダも仮庵に住み、私の主人ヨアブも、私の主人の家来たちも戦場で野営しています。それなのに、私が家に帰り、食べたり飲んだりして、妻と寝るということができるでしょうか。あなたの前に、あなたのたましいの前に誓います。私は決してそのようなことをいたしません

=黙想の記録=

❷6-13節:ダビデの責任転嫁とウリヤの心情・・・バテ・シェバとの関係を持ったダビデのその後の悪態は目に余るものがあります。ミカルとの再婚の件は元妻との復縁という大義名分がありますがそれにしても無理やり夫(パルティエル)と離婚させるのはあまりにも無慈悲な行為です。ですがこの無慈悲な行為ができるのですからバテ・シェバの夫ウリヤにが王の権威を使って離縁を命じれば良かったのです。それができないのは、第一にパルティエルの件は国外の出来事であり民衆に公にされることはありません。第二に第三者であるアブネルが離縁を命じたのでダビデが直接手を下したのではないのです。一方ウリヤに関しては第一に国内のできごとであり、勇猛果敢な兵士の妻に手を出したという卑劣な行為が民衆に知れ渡り、当然民衆からも蔑まれ国王としての威厳は地に落ちることでしょう。第二にダビデ王自らが離縁を命じるのです。律法を軽視している国王に重臣たちもまた兵士たちもさらに民全体が国王の品位を疑うようになるのです。バテ・シェバの妊娠の報告はダビデにとっての誤算ではなくウリヤ殺害の号砲のように聞こえたと思われるのです。「8,家に帰って、足を洗いなさい。・・・王からの贈り物が彼の後に続いた」とありますが、足を洗うとは「任を離れてくつろぎなさい」という意味があり、ここでの「贈り物」は「テーブルの上に乗せられたブドウ酒を含めた豪華な料理」を意味しています。つまり、家に帰って職務を忘れ妻バテ・シェバとの再会を喜べという意味が込められていますが、「早く家に帰って妻を喜ばせてやれ。抱いてやれ。」という裏の意味も込められているのです。6-14節のウリヤへの働きかけは、以下の二つのダビデの思惑があるのですが、ダビデは[2]を実行させたかったのでしょう。つまりバテ・シェバに責任転嫁することです。「責任転嫁」は悪魔の常套手段だからです。

[1]妊娠初期の段階のでの性行為によって流産させる・・・「妊娠をなし」にするという意味で言うならバテ・シェバとの関係は単なる遊興の類だったということになり、バテ・シェバはダビデの物になりません。

[2]子供を大事にするバテ・シェバにウリヤとの離縁を迫らせるきっかけつくり・・・戦場から帰国に要する日数は多くても1週間。妊娠してから5週程度は経過していますからお腹のふくらみは目立ちませんが流産のリスクが高い時期です。バテ・シェバが国母への野心を持っているのなら必ずウリヤとの性交渉を拒否するはずです。戦場から帰宅した夫を慰労するのが妻の役割ならこの段階で性交渉を拒否されればウリヤはどれほど傷つくでしょう。妻に冷たくあしらわれればウリヤの方から離縁を申し立てるかもしれません。ダビデの狙いはここにあったかもしれません。つまり、バテ・シェバに責任を擦り付け(責任転嫁)たことに他ならないのです。

【ウリヤの態度から】

ダビデの愚行に対しウリヤの潔い態度は際立っています。「9,しかしウリヤは、王宮の門のあたりで、自分の主君の家来たちみなと一緒に眠り、自分の家に帰らなかった。」とありますが、王宮に仕える侍従や護衛たちは王宮の玄関や長い回廊で寝るのが通例です。恐らくウリヤは帰宅せずにこの場所にいた護衛達と語り合い彼らに交じって雑魚寝でもしたのでしょう。ダビデの裏工作に乗らなかったのを訝しく思ったダビデの質問に「11,・・・神の箱も、イスラエルも、ユダも仮庵に住み、私の主人ヨアブも、私の主人の家来たちも戦場で野営しています。それなのに、私が家に帰り、食べたり飲んだりして、妻と寝るということができるでしょうか。あなたの前に、あなたのたましいの前に誓います。私は決してそのようなことをいたしません。」とウリヤは返答します。推測ですがこの時点でウリヤには「妻の不貞・ダビデ王の愚行」について告げる者があったはずです。煮えくり返る思いを押し殺しウリヤは間接的な言葉を持って王に諫言しているように思えるのです。ウリヤの言葉は「①王はなぜこの重要な戦いの陣頭指揮をとらないのか。②妻との一件は周知の事実になりかけているのに王はなぜ悔い改めないのか」と言っているように聞こえてきます。真相を知っているかのようなウリヤの言葉に対しダビデは「12,・・・今日もここにとどまるがよい。明日になったら、あなたを送り出そう。」と言ってウリヤを戦場に送り返す命令を下すのです。ウリヤは自分の運命をすでに悟っているかのように妻バテ・シェバと言葉を交わすことなく戦地に向かうのです。一言も残すことなく妻バテ・シェバから去ったのは妻への無言の戒めだったのではないでしょうか。「神の箱」を言葉に出すところを見ると改宗者であるヒッタイト人ではありますが、主なる神様の御心に自分の運命を託し、またイスラエル国家の繁栄を願うウリヤにとって、妻バテ・シェバとダビデ王との一件を表沙汰にするよりは、自らの口を閉じ静かに消えていく方が得策と悟っていたと思われるのです。これが真の軍人のあり方なのです。その意味で行くとウリヤは十字架に向かうイエス様のひな型とも言えるのです。

=注目語句=

語句①贈り物(8):英語a mess of meat;ヘブル語マセイス[プレゼント,テーブルに乗る料理]

語句②王の家来(9):英語the servants of his lord,;ヘブル語エベッドゥ・アドーン[奴隷(使用人)・主君]