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サムエル記第二11章-1

サムエル記第二11章-1(1-5節)
=本章の内容=

❶バテ・シェバとの姦淫事件

=ポイント聖句=

4-5,ダビデは使いの者を送って、その女を召し入れた。彼女が彼のところに来たので、彼は彼女と寝た──彼女は月のものの汚れから身を聖別していた──それから彼女は自分の家に帰った。女は身ごもった。それで彼女はダビデに人を送って告げた。「私は子を宿しました。」新改訳20217版

4-5,彼女は、月経後の汚れのきよめをしていたところでした。ダビデは女を召し入れ、忍んで来た彼女と床を共にしたのです。こうして彼女は家に帰りました。それから、自分が妊娠したことを知ると、人をやってダビデに知らせました。(リビングバイブル)

=注目聖句=

4,彼女は月のものの汚れから身を聖別していた(新改訳2017)

4,彼女は月経後の汚れのきよめをしていたところでした(リビングバイブル)

4,she was purified from her uncleanness(KJV)【直訳】彼女は自分の汚れたものから清められたのです

4,She had just completed the purification rites after having her menstrual period.(NLT)【直訳】彼女は生理が終わってちょうど清めを終えたところでした。

ヘブル語:フー・カデッシュ・トーマー[彼女・聖別した・不潔]・・・レビ記15:19-28によれば女性が月経の期間7日間さらに終了後7日間は人との接触を禁じられている。とするとダビデはこの月経後の7日以内にバテ・シェバと性交渉をもったことになり、ダビデは人妻との姦淫の他に、清めの期間を無視する律法に抵触することになる。

=黙想の記録=

ダビデは37歳で全イスラエルの国王となり、40歳で神殿建立計画を立てます。そして44歳でウリヤを殺害しバテシェバと婚姻するのです。神殿建立と言う高邁なビジョンはダビデの霊性の成長に何の役にも立たなかったことが露呈してしまう章です。
❶1-5節:バテ・シェバとの姦淫事件・・・この事件を『国家の領域が確定されまた臣下に政権運営を任せても大丈夫と慢心しているダビデに起こった劣情(抑えきれない性欲)によるレイプ事件』と片付けていいのでしょうか。不可視的な霊的世界から考えると、この事件は悪魔の所業そのものなのです。悪魔は人間が困難を経験している時には登場しません。なぜなら主なる神様が強力な御手を伸ばしているので付け入る隙がないからです。ところが人間が順風満帆な時にこそ悪魔は人間の肉欲に手を添えて誘惑と言う武器で攻撃してくるものです。ダビデとバテ・シェバにとって今が人生の絶頂期で慢心つまり正しい意味での「主なる神様への緊張感」が無くなっている時だったのです。ダビデにとっては性欲、バテ・シェバにとっては自己顕示欲(承認欲求・出世欲)という肉欲が悪魔に利用されそして双方ともその欲に溺れてしまった結末がこの事件といえるのです。
●今回は本章のこの事件に関して、伝統的な解釈ではなく私流の黙想をさせていただきます。するとこんなストーリーになるのです。

【バテ・シェバの側から考える】

●四男アドニヤの造反事件からほどなくしてソロモンが王位を継承することになります。王位継承は他国同様血生臭いどろどろの骨肉争いとなっていました。列王記第一1・2章にソロモンの王位継承までのドタバタ劇が記録されています。この即位までの経緯に関してどうしても気になるのがソロモンの母バテシェバの存在です。歴代誌上3:5によるとエリアム[アンミエル](ヒッタイト人)はバテ・シェバの父となっています。とするとマキルはバテ・シェバの兄弟となります。ヨナタンの息子メフィボシェテはこのマキルの保護下にあったわけですから、ダビデはバテ・シェバとエルサレムではなくそれ以前に面識があったと思われるのです。想像の域を出ませんが、穿った見方をすればばダビデとバテ・シェバは既にバテ・シェバが故郷に居た頃からお互いに関心があったのかもしれないのです。

●バテ・シェバがウリヤとの間に子供を儲けることがなかったことから憶測するとバテ・シェバとウリヤにとっても愛情での結びつきはかなり希薄ではなかったのかと思えるのです。故郷では親を含む周囲の者達に強引にウリヤとの婚姻を決められてしまったのではないでしょうか。想像ですがバテ・シェバは上昇志向の強い人物だった思えるのです。故郷にいた頃からまたウリヤの妻となってからも「国王の妻の座」はまた「国母」となることに憧憬を抱いていたかもしれません。ユダヤ教の精神に従って貞節を守ろうとする婦人であり、夫ウリヤを心から愛していた人物であるなら、いくら王の命とはいえすごすごと王宮に上ることがあるでしょうか。丁重に断るのが筋です。バテ・シェバはヒッタイト人で生粋のユダヤ人ではなく改宗者です。イスラエルの律法に疎いからという理由ではなく、主なる神様への関心より「野心」を優先する生き方が根底にあるのです。

●さらに想像を膨らますならダビデに見える部屋の外で沐浴するのは夫が不在であることを知らせるサインまたは妊娠しにくい安全日を知らせるサインだったとは言えないでしょうか。つまりこの事件は二人の合意による不倫であったと思えてくるのです。バテ・シェバのことをダビデの一方的破壊的な恋心によって連れて来られた「悲劇のヒロイン」とするのは如何なものでしょうか。私には常にステップアップを図ろうとする野心に満ちた女性にしか見えきません。凡そ彼女から信仰の香がしないのです。Ⅰ列王記1章の我が子ソロモンが国王に就任するにあたりいろいろと画策している姿から初めからこれが狙いであったのではと思えてくるのです。

●月経周期は25~38日。月経が明けるとすぐに関係を持ったとすると妊娠が確認されるまでに3週間以上も時間経過があるのです。国王によるレイプと感じるのなら貞操を守れなかった後ろめたさから自死を選ぶこともありうるのです。または堕胎を考えるかもしれないのです。しかし、戦場から一時帰国を命じられた夫に事の次第を隠し通しているのです。そればかりか妊娠が分かると早速ダビデ王に報告する辺りは、国母の座を早く確定して欲しいとダビデをせかしているように思えてならないのです。

【ダビデの側から考える】

●Ⅱサムエル記3章辺りからみられるダビデの独断断専行は霊的慢心の表れと言えます。本来なら重臣や霊的指導者を集め主なる神様の意向を確かめてから行動すべきところですが、その形跡が見られません。またアブネルとの講和にはヨアブを除外していることつまり反対意見を封殺しているのです。講和条件の一つに元妻のミカルを要求していますが彼女には夫がいます。無理やり引き裂き自分の物にしようとしています。その再婚が政策上不可欠の物であってもこれではイスラエルの律法を無視する行為です。アブネルの葬儀まで賑々しく行ったのはユダ族を除く他11部族の体面を保つためだけです。またアンモン人アラム人攻撃に自ら出陣し陣頭指揮を執っていない事が挙げられます。更に今回の婚姻相手はヒッタイト人明らかに異邦人です。申命記7章3節、4節の禁止事項を完全無視しています。またバテ・シェバは人妻です。関係を持つことは申命記5:18「姦淫してはならない」の十戒を無視する行為なのです。つまりこの時点でダビデは主なる神様の言葉の重みを軽視し続けている霊的低迷期に陥っているのです。主なる神様しか満たすことのできない心の空洞は今肉欲で満たされ悪魔の言いなりになってしまっているのです。バテ・シェバからの妊娠報告は果たしてダビデを狼狽させるものだったのでしょうか。魔が差した行為とはどうしても思えないのです。バテ・シェバが妊娠報告をしたとき、ウリヤの殺害計画を考える前にお腹の子の始末を考えるか、バテ・シェバ本人の始末をする方がより簡単なはずなのです。バテ・シェバには以前から国母としての地位を約束していたのではないでしょうか。

=注目語句=

語句①ヒッタイト人(3):英語Hittite;ヘブル語ヘイス・・・カナン人であるがイスラエルの同化政策でダビデの時期では軍の主要ポストになれるほどイスラエル人に馴染んでいたと言える。

=注目人物=

人物①ウリヤ(3):英語Uriah;ヘブル語ウリヤー[エホバは我が光]・・・彼の名前は、ダビデの30人の主要な英雄のリストに登場し(2サムエル23:39)、物語全体は彼が勇敢で高貴な心の兵士として表現されている。王の護衛の一人で王宮近くに居を構えていた。

人物②エリアム(3):英語Eliam;ヘブル語エリアーム[人々の神,神は親族]

人物③バテ・シェバ(3):英語Bath-sheba;ヘブル語バットゥシバー[誓いの娘]・・・ダビデと婚姻後ソロモンを含む4人の息子を得ている。