サムエル記第二10章-1

サムエル記第二10章-1(1-13節)
=本章の内容=
❶ハヌンに礼儀を尽くすダビデ❷アラム人傭兵部隊との戦い
=ポイント聖句=4,そこでハヌンはダビデの家来たちを捕らえ、ひげを半分剃り落とし、衣を半分に切って尻のあたりまでにして送り返した。
13,ヨアブと彼とともにいた兵たちがアラム人と戦おうとして近づいたとき、アラム人は彼の前から逃げた。
[戦いの経緯]・・・Ⅰ歴代誌19章を参照にしながらまとめてみます
[1]ダビデが弔意を持った使節団をハヌン(アンモン人)に遣わす [2]使節団は辱めを受けて帰国する [3]アラム人の傭兵13000人戦車32000両を借り受ける [4]ヨアブを総司令官とするイスラエル軍を派兵する [5]ラバの門?(アンモン人の首都)で待機。アラム人傭兵はメデバに陣を置く。 [6]イスラエル軍を2つ(ヨアブ・アビシャイ)に分けて陣取りをする [7]ヨアブが攻撃を仕掛けるとアラム人傭兵部隊は逃げ出す [8]アラム人傭兵部隊が敗走するの見てアンモン人はラバの町に逃げ込む =黙想の記録=❶1-5節:ハヌンに礼儀を尽くすダビデ・・・ハヌンはヤベシュの戦いでサウル軍に敗退したアンモン人ナハシュ(1サムエル11章)の息子か孫です。ヤベシュの戦いから50年以上が経過しています。「2,・・・彼の父ナハシュには、常々、誠実を尽くしてもらった。私も新しい王に敬意を表そう(リビングバイブル)」とあることから、ナハシュと放浪中のダビデは友好関係を築いていたのかもしれません。ペリシテ人・アンモン人・モアブ人諸国を制圧し朝貢国にしてきた経緯をハヌンだけでなく重臣たちも周知のはずなのです。ハマテの王トイが朝貢の為に息子をダビデの元に送ったことも知っているはずです。ダビデとしても無益な戦争を避けたいところです。そこで弔問外交と称してダビデは使節団を送り込みアンモン人の出方を待ったのです。ところがアンモン人はダビデの使節団をスパイと断定し「4,そこでハヌンはダビデの家来たちを捕らえ、ひげを半分剃り落とし、衣を半分に切って尻のあたりまでにして送り返した。」(人の髭を切り落とすことは中東諸国では鞭打ちや焼印を押されるのとまったく同じ侮辱と見なされています。また下着を身に着けているのは聖職者だけですから下半身丸裸にしたということです。) という彼屈辱的な対応をして送り返します。つまり「国交を結ばない。交戦も辞さない。」という強烈なメッセージを送って来たのです。屈辱に打ち震える使節団を思いやるため、ダビデはエルサレムの東20kmにあるエリコにとどまるように命じます。
❷6-13節:アラム人傭兵部隊との戦い・・・アンモン人はイスラエルとの交戦に備えアラム人の兵士13000人を雇い入れ戦車を手に入れます。1歴代誌19:6によると、銀1000タラント(日本円で約10億円)でこの規模からするととても安価にすら思えます。仮に戦車等の高価な武器の購入費が50%とすると、兵士にあてがわれる賃金は約38000円。こんなはした金で命など掛けられるものでしょうか。アンモン軍2万人はラバの門(アンモン人の首都)で待機。一方アラム人傭兵はメデバに陣を置きます。メデバは木の無い岩だらけの場所で身を隠すことができません。つまりこの陣取りではアラム人傭兵は捨て駒同然なのです。更にこんな寄せ集めの俄か部隊では勇猛果敢な将軍はおろか戦争経験者も数少ないはずです。つまりアラム人傭兵部隊は敵前逃亡する要素が満載なのです。一方イスラエル軍は「7,・・・ヨアブと勇士たちの全軍を送った」とあります。百戦錬磨の将軍ヨアブと戦争経験者である猛者たちばかりが集結しているのです。さらに両軍を率いる将軍はヨアブとアビシャイで二人は兄弟です。強力な結束力を持っているのです。「12勇気を出せ! われわれの肩には同胞のいのちと、神の町々の安全がかかっている。がんばるのだ。必ず主のお心のとおりになるのだから。(リビングバイブル)」とあるように、ヨアブには主なる神様への全体的な信頼があります。主なる神様の計り知れぬ知恵と慈愛によって最善を成して下さるという信仰心です。ヨアブ率いるイスラエル軍(全員歩兵部隊)は、北側にアンモン軍2万人、南側に最新兵器で装備したアラム人傭兵部隊12000人が陣取る場所にやってきます。ヨアブはその場所でイスラエルの精鋭全員からさらに兵を選び出しより危険なアラム人攻撃をしかけ、アビシャイに残りの部隊全員を任せアンモン軍に向かわせます。これは推測ですが、最新兵器で装備されていても俄か部隊のアラム人傭兵部隊を蹴散らかせれば、本体のアンモン人軍は総崩れとなると踏んだからと思われます。しかしこの作戦には多くの兵を失うことを覚悟しなければならないのです。ところがをアラム人はヨアブの精鋭部隊を出くわすと総崩れになり敗走してしまいます。これは主なる神様の関与なしには起こりえないことでもあるのです。
=注目地名=地名①ベテ・レホブ(6):英語Bethrehob;ヘブル語ベイスレホーブ[通りの家]・・・ダンのハマスへの道にある場所
地名②ツォバ(6):英語Zoba,;ヘブル語ソバ―[駅]・・・サウル、ダビデ、ソロモンの時代に独立した王国を形成したシリアの一部。ダマスカスの北東に位置する。
地名③マアカ(6):英語Maacah;ヘブル語マェハー[圧政.抑圧]
地名④トブ(6):英語;ヘブル語
地名⑤門の入り口(8)・・・ラバの門と思われる(アンモン人の首都)。バテシェバの夫ウリヤがダビデの命令で自分の部下に裏切られて殺害された城壁はこの町のもの
=注目人物=人物①ハヌン(1):英語Hanun;ヘブル語ハヌーン[丁重な,親切な,慈悲深い,優雅な,上品な]・・・ナハシュの息子。アンモンの王。ダビデの大使たちを侮辱し、その後のダビデとの戦争に負ける。
人物②ナハシュ(2):英語Nahash;ヘブル語ナハシュ[蛇]・・・サウル王の時代のアンモン人の王。
人物③アビシャイ(10):英語Abishai;ヘブル語アェビシャイ[私の父は賜物]・・・ダビデの異母姉妹ツェルヤの子。ヨアブの弟