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サムエル記第二8章-1

2024年6月28日

サムエル記第二8章-1(1-14)
=本章の内容=

❶イスラエルの覇権の拡大

=ポイント聖句=

1,その後のことである。ダビデはペリシテ人を討って、これを屈服させた。ダビデはメテグ・ハ・アンマをペリシテ人の手から奪い取った。

14,彼はエドムに守備隊を、エドム全土に守備隊を置いた。こうして、全エドムはダビデのしもべとなった。主は、ダビデの行く先々で、彼に勝利を与えられた。

=黙想の記録=

❶1-14節:イスラエルの覇権の拡大・・・本章では、ダビデが周辺諸国と戦いのイスラエルの覇権を拡大していく過程が要約されています。しかし彼の治世のどの時期に彼らが繰り広げられたかは述べられていません。戦いの経緯をまとめてみます。
[1]ペリシテ人との交戦・・・「1,・・・ダビデはメテグ・ハ・アンマをペリシテ人の手から奪い取った」とありますがメテグ・ハ・アンマとは「母なる都市の束縛(支配)」とあることからペリシテ人の主要五都市を奪取したかまたは都市としての機能を破壊したと思われます。

[2]モアブとの交戦・・・「2,彼はモアブを討ち、彼らを地面に伏させ、測り縄で彼らを測った。縄二本で測った者を殺し、縄一本で測った者を生かしておいた。モアブはダビデのしもべとなり、貢ぎ物を納める者となった。」ペリシテ連合軍の動きに呼応して弱体化したと思い込んだモアブ人がイスラエルを攻撃したことによる反撃とも言われています。交戦しただけにとどまらず捕虜となったモアブ人にかなり無慈悲な対応を取っています。ところでかつてダビデを受け入れ両親に庇護を与えた国民になぜそのような恐ろしい態度を取ったのでしょうか。ユダヤの伝承によればモアブの王がダビデの信頼を裏切りダビデの両親を殺害したことが要因とされています。

[3]アラム軍との交戦第一・・・ツォバはダマスカスの北東、ハマスの南、オロンテス川とユーフラテス川の間にあったようです。サウルは、おそらく独立した族長達と戦争をしましたが(1サムエル14:47)、ダビデ時代には一人の支配者の下に統合されかなりの富と権力を持つ国となっていました。「4,ダビデは、そのすべての戦車の馬の足の筋を切った。ただし、そのうち戦車百台分の馬は残した」とありますが、軍馬を使えないようにするのは申命記17:16にある王の規定に基づく処置です。「百台分の馬」とは軍馬100頭の意味で恐らく戦勝記念で繁殖して利用する意図はありません。・・・イスラエル人は戦争と農業の両方で馬の利用は禁じられていました・・・注目すべきはダビデ軍に騎兵はいません。全て歩兵師団です。したがってこの個所は歩兵のみで勝利で北ダビデの軍事的手腕の優秀さを紹介したものと言えます。一方ハダドエゼル王は敗戦し苦境に立たされます。騎兵千七百、歩兵二万を失ってしまいます。

[4]アラム軍との交戦第二・・・自ら軍の指揮官となっていたハダドエゼル王を救出するために本国の軍隊が駆け付け戦闘になりました。さらにこの戦いで二万二千人のアラム兵が失われます。

[5]ハダドエゼル王が支配していたアラム人の町々を占拠・・・ダビデはアラム人の要塞化された町々に守備隊を置きアラム人の国を属国としました。属国では内政を自分たちで管理する自由を残されていましたがその代償として貢納しなければなりませんでした。守備隊は貢納を円滑にするために置かました。「7,ダビデは、ハダドエゼルの家来たちが持っていた金の丸い小盾を奪い取り、エルサレムに持ち帰った。」とありますが、「家来たち」とは王の親衛隊のことで彼らは金を被せた小盾を常備していた様です。これはハダドエゼル王から親衛隊が剥ぎ取られ無防備な状態であったことを意味しています。「8,・・・非常に多くの青銅を奪い取った」とありますが、これは神殿建立に使われる金属です。

[6]ハマテの王トイが使節団を送る・・・ハマテはカナンの地の北にあったシリアのもう一つの小さな王国でハダドエゼルの攻撃をからの防衛の為に建てられたとの説があります。ハマテの王トイが朝貢の為息子ヨラムをダビデに送ります。同時に銀の器、金の器、青銅の器を献上しました。その後もソロモン時代でも朝貢国になっています。
[7]分捕り物・貢物を神殿建立の為に聖別する・・・ダビデは神殿を建てることを禁じられたことから、征服した国々の戦利品や属国とした国々の朝貢品は神殿建立の為の備蓄されました。

[8]エドム人との交戦・・・「12,アラム、モアブ、アンモン人、ペリシテ人、アマレク」の国々を征服した後、最後の戦いはエドム人との交戦でした。エドム全土に守備隊を置くとはエドム人の町々が属国となり朝貢を維持させるためです。
これらの戦いに勝利し各地を支配下に置くことにとり「アブラハム契約(創世記15:18-20)」が成就したと言えるのです。推定では紀元前1001年ダビデ39歳の出来事です。

=注目語句=

語句①「縄二本で測った者を殺し、縄一本で測った者を生かしておいた。」(2)・・・この表現は、ダビデが地面にうつぶせになったモアブ人を三等分し、三分の二は処刑し、残り三分の一を生かしておいたということ。1歴代誌18:2にはこのことについての言及はない。

語句②馬の足の筋を切る(4):英語houghed[筋を切る,引き抜く,摘出する] all the chariot horses[軍馬](KJV);ヘブル語アケール・コウ・レヘブ[軍馬・筋を切る(引き抜く・不自由にする)]・・・ヨシュア11:6を参照

=注目地名=

地名①メテグ・ハ・アンマ(1):英語Methegammah;ヘブル語メセクハエマ[母なる都市]

地名②ツォバ(3):英語Zobah;ヘブル語ツォバー[駅,駐屯地]

地名③ダマスコのアラム(5):英語Syrians of Damascus;ヘブル語ダマセク・アラーム・・・古代の貿易都市、シリアの首都で、エルサレムの北東205kmのヘルモンの平原に位置している。

地名④ベタフ(8):英語Betah;ヘブル語ベタッフ[安全]・・・ハダドエゼル統治下のツォバの首都。

地名⑤ベロタイ(8):英語Berothai;ヘブル語ベロサー[ひのき林]・・・ハマテ近郊の町

地名⑥ハマテ(9):英語Hamath;ヘブル語ハマス[要塞]・・・オロンテス川の谷にあるシリアの主要な都市

=注目人名=

人名①レホブ(3):英語Rehob;ヘブル語レホブ[広い場所]・・・ハダドエゼル

人名②ハダドエゼル(3):英語Hadadezer;ヘブル語ハダッドエゼール[ハダドは助け]・・・アラム人の国ツォバの王。ダビデの最大のライバル。ハダドはシリア人の太陽神のこと。

人名③トイ(9):英語Toi;ヘブル語トウ(トイ)[さまよう]・・・ダビデ時代のハマスの王

人名④ヨラム(10):英語Joram;ヘブル語ヨラム[高い,高貴な]・・・トイの息子