サムエル記第二7章-1
サムエル記第二7章-1(1-17節)
=本章の内容=
❶ダビデが意図する神殿建立とナタンの忖度❷預言者ナタンへの神託
=ポイント聖句=2,王は預言者ナタンに言った。「見なさい。この私が杉材の家に住んでいるのに、神の箱は天幕の中に宿っている。」
13,彼はわたしの名のために一つの家を建て、わたしは彼の王国の王座をとこしえまでも堅く立てる。
Ⅱサムエル7:5
5,主はこう言われる。あなたがわたしのために、わたしの住む家を建てようというのか。(新改訳2017版)
5, Shalt thou build me an house for me to dwell in? (KJV)【直訳】あなたは私が住むために家を建ててくださいますか?
5,わたしのしもべダビデに、わたしのために家を建てる必要はない(リビングバイブル)
Ⅰ歴代誌17:4
4,あなたが私のために住む家を建てるのではない。(新改訳2017版)
4,神殿を建ててはならない。(リビングバイブル)
4,Thou shalt not build me an house to dwell in(KJV)【直訳】あなたはわたしの住む家を建ててはなりません
※ヘブル語でも同様にⅡサムエルでは建てることに肯定的な言い回しをしているがⅠ歴代誌では「建てるべきではない」と否定的な言い回しになっている。サムエル記が「ダビデ王朝興隆の記録」であるのに対して歴代誌は「イスラエル王朝没落の記録」であるために生じるニュアンスの違いであろう。後者がより真実に近いと感じる。
=黙想の記録=❶1-3節:ダビデが意図する神殿建立とナタンの忖度・・・自らはツロから輸入した高級素材の杉材で家を建てておきながら(Ⅰ歴代誌14:1)、その後思い出したように神殿建設を言い出すのはとても滑稽です。寧ろ神殿建築を最優先しその後で自宅を建設するのが信仰者としての順番ではなかったのではないでしょうか。正妻だけで9名、子供たち11人以上。(これらの家族に自宅建設をせかされていたかもしれませんね。だから後回しになったのかも。) さらにダビデの妻子それぞれに数名の侍従が付いているはずです。妻子それぞれに部屋を割り当てるだけでなく、この大所帯の食事など生活全般を準備する部屋や貯蔵室や納屋なども必要でしょう。重臣たちと会議する大広間を始め軍事部門や納税部門など各部門毎の部屋も併設していたことでしょう。ダビデの宮殿(自宅)建設に掛かる費用は莫大なものであったと容易に想像できるのです。ダビデはなぜこのタイミングで神殿建設を持ち出したのでしょうか。
【ポイント①】推測になりますが他国向のにまた国民向けの体面を保つ狙いがあったのです。他国で偶像を祭る神殿は全て巨大で豪奢な建物です。イスラエルの神殿は現在のところ材木と多くの布や動物の皮で覆われているただの天幕です。諸外国の神殿からすれば当然見劣りするのです。「イスラエル人は自分たちの神を軽んじている民族なのだ」と揶揄されても仕方がありません。またイスラエル同胞からも「自らは豪奢な家に住み主なる神様の御住まいは古びた天幕のままだ。主なる神様を軽んじている証拠だ」とダビデの信仰心を揶揄する者も出て来ることでしょう。ダビデは主なる神様よりも周囲人間の目を恐れているのです。
【ポイント②】可動式天幕である以上今後都が移転することもありうるのです。固定した建造物ならエルサレムが恒久的に都であり続けることになるのです。この建造物が存在する限りイスラエルに恒久的平和があり続けると考えたからです。実際は後の時代になっていとも簡単に建造物は破壊され民は他国に捕囚されるのです。
ダビデはこんな重要なことに対して公式な御伺いを立てていません。ダビデから相談を持ち掛けられた顧問預言者ナタンを呼び出して気に入る返事をもらいたかったのです。ナタンの最初の言葉は「さあ、あなたの心にあることをみな行いなさい。主があなたとともにおられるのですから。」です。しかしこのセリフは主なる神様からの指示ではなくダビデに忖度して発したものなのです。
❷4-17節:預言者ナタンへの神託・・・ダビデが独断専行する前に間髪を入れず主なる神様の言葉がナタンに臨むのです。(但しこの言葉がどんな環境下で語られたかは不明です。) 以下にその内容をまとめてみます。Ⅰ歴代誌17:4-14を突き合わせてみていきましょう。
[1]「5,わたしの住む家を建てようというのか。」とありますがⅠ歴代誌17:4では「神殿を建ててはならない。(リビングバイブル)」と手加減なく語られています。 [2]「6,わたしは神殿には住まない。イスラエル人をエジプトから連れ出した日以来、わたしの家はずっと幕屋(神のための天幕)だった。(リビングバイブル)」と「神殿は不要だ」とはっきりと明言されています。 [3]「7,そのことで、イスラエルの指導者や民を牧する者たちに不平をもらしたことは一度もない。『どうしてりっぱな神殿を建ててくれないのか』と言った覚えもない。(リビングバイブル)」と「神殿建設は不要だ」と畳み込んでいます。 [4]「8-11,わたしは、・・・どこへでも、あなたとともに行き、敵を滅ぼした。また、あなたの名声をいっそう高めた。あなたの名は世界中に知れ渡るだろう。・・・ここがイスラエル人の母国だ。もう、二度とこの地を離れることはない。(リビングバイブル)」民に平安を与えるのはダビデではなく万軍の主ご自身です。自らは気づいていないダビデの傲慢さをやんわりと指摘しています。 [5]「11-16, ・・・主があなたのために一つの家を造る・・・あなたの身から出る世継ぎの子をあなたの後に起こし、彼の王国を確立させる・・・あなたの家系は、永遠にわたしの王国を治める(リビングバイブル)」ここに登場する「家と造る」とあるのは建造物のことではありません。「造る」はヘブル語でバナー「構築、再構築、確立、継続」を意味していますからここで言う家は「家系」または「王朝」を指しています。単に次期国王であるソロモンのことだけのことではなく今後のダビデ王朝を指しています。「永遠」は美辞麗句の類ではなく文字通り「永遠」を意味します。このことから来るべき世のメシヤが統治する王国が到来するとの約束がなされています。ここが「ダビデ契約」と呼ばれる重要な部分です。 =注目人物=人物①ナタン(3):英語Nathan;ヘブル語ナサーン[与える人、贈与者、寄贈者]・・・ダビデとソロモンの顧問預言者