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サムエル記第二章2章-2

2024年6月27日

サムエル記第二2章-2(8-16節)
=本章の内容=

❷サウル家とダビデ家の戦いの発端

=ポイント聖句=

13,一方、ツェルヤの子ヨアブも、ダビデの家来たちと一緒に出て行った。こうして彼らはギブオンの池のそばで出会った。一方は池の手前側に、もう一方は池の向こう側にとどまった。

[本章の経緯②] [5]アブネルがイシュ・ボシェテをマハナイムでイスラエル(11部族)の国王とする

[6]イシュ・ボシェテ軍ギブオンへ進出。

[7]ヨアブがギブオンに到着

[8]両陣営の若者による闘技(12人)

=黙想の記録=

❷8-16節:サウル家とダビデ家の戦いの発端・・・経緯に従って両家の争いの経緯をまとめてみます。

[5]イシュ・ボシェテを擁立するアブネル・・・一方サウルの叔父でありサウル軍の創設者であるアブネルはイズレエルの戦いに参戦していません。高齢であるとか病気であるとか何らかの理屈を作って出兵を拒んだと思われるのです。前述した様にアブネルはこの戦い以前にすでにサウロを見限っていたのです。自分の手を汚さずともサウルは自滅すると算段していたとのではないでしょうか。その為アブネルはダビデと関係性のないサウルの四男イシュ・ボシェテを次期国王として擁立する準備をしていたのです。アブネルはペリシテ人との戦いに精力を使うのを惜しみます。サウルがイズレエルに陣営を移動してしまった間にせっせとイシュ・ボシェテ擁立のためユダ族を除く11部族への根回し工作に奔走していたと思われます。「サウルの血を引く正統な後継者はイシュ・ボシェテである」ことがアブネルの政治上の正義であり、信仰など全く関心がなかったのです。この時のイシュ・ボシェテの推定年齢は40歳、アブネルは70歳。イシュ・ボシェテの治世はわずか二年。アブネルという後ろ盾が殺害された後程なくして暗殺されます。サウル王朝はたった二代で幕を閉じます。

[6]イシュ・ボシェテ軍ギブオンへ進出。・・・マハナイムはマナセ族領内にあるレビ人の町です。ペリシテ軍の追撃から逃れるための仮の首都でした。ギブオンはサウルの支持母体であるベニヤ民族の町で大都市です。サウルの出身地ギブアとは4kmの距離です。ヨルダン川西岸にこそイスラエルの諸氏族が集中している訳ですからイスラエル11部族と連携を取り易くするためにはギブオンに移動するのが得策と言えます。しかしそのためにはユダ族を支持母体とするダビデと一戦交えなければなりません。アブネルが取り付けた11部族との盟約はイシュ・ボシェテ軍を勢いづけてきたことでしょう。アブネルから見れば現時点でダビデ軍との戦力差は歴然としていたのでしょう。ダビデの国王即位の知らせをサウル王朝へのクーデターと見なし、遂にサウル王の配下時代に抱いた野心を遂行する為、アブネルは11部族から兵を招集しダビデ軍攻撃を開始するのです。ダビデ軍攻撃はユダ族の支配をも意味します。

[7]ヨアブがギブオンに到着・・・イシュ・ボシェテ軍進軍の知らせは即ダビデ軍にも届いたことでしょう。ここで素朴な疑問が湧いてきます。それはダビデがイシュ・ボシェテ軍との交戦の前に主なる神様に伺いを立てていないことです。こう推測してみました。『ダビデは如何なる場合でも独断行動をするつもりはなかったはす。合議の末の結論である。ならば誰でも納得できる結論を導くには「主に伺いを立てる」こと以外に考えられない。伺いを立てたところ「迎撃すべき」との結果が出た。がその記述を省略している。』ツェルヤ(ダビデの異母姉妹)の長子ヨアブはこの時点でダビデ軍の有力な司令官となっています。ダビデの直属の部下と一緒に参戦します。ヨアブはダビデよりも先行していたのかもしれません、ギブオンの池は37m×33mの大きな貯水池です。

[8]両陣営の若者による闘技(12人)・・・ここで両軍は対峙しますが、アブネルは「共通の敵であるペリシテ人に直面している今国全体を疲弊させる内戦を避けたい。少人数の兵士の直接対決で雌雄を決したい。」との提案をヨアブに告げ、ヨアブはこれを了承します。ところでここでも素朴な疑問が湧いてきます。ダビデ自身がアブネルのこの提案に承諾したという記録がないことです。すでにヨアブにダビデ軍を指揮する権限を全権委任していたと推測できます。ダビデはこの時点で推定30歳。ヨアブはダビデとだいぶ歳の離れた異母姉妹ツェルヤの子です。恐らくダビデと同年代と推測されます。以降ダビデに誠心誠意仕えているようにも思えますがアブシャロムの一件で露呈するように相当な野心家であったと思われます。サウルの叔父アブネルに似ています。16節の両陣営の若者による闘技の様子には防御用の盾がありません。初めから戦闘の体を成していないのです。つまり憎悪に満ちた男たちの死に物狂いの喧嘩で周りを取り囲む兵達は次第に冷静さを失っていくのは必然なのです。「少人数の兵士の直接対決で雌雄を決したい」との目論見は見事に脱線していきます。

=注目地名=

地名①マハナイム(8):英語Mahanaim;ヘブル語マハナイエム[2つの陣営]・・・ヤコブが神の御使いたちに出会った場所(創世記32:2-3)。マナセ部族の領内にあるメラリ氏族(レビ族)の子孫に分割され土地。アブシャロムの反乱があった時にダビデが避難してきた場所。ヨルダン川東に直角に流れ込むヤボク川南に位置する。ヘブロンから直線距離で約120km。

地名②ヘルカテ・ハ・ツリム(16):英語Helkathhazzurim;ヘブル語ヘルケス・ハ・ツリム[剣の戦場] =注目人名=

人名①イシュ・ボシェテ(8):英語Ishbosheth;ヘブル語イシュ・ボシェシュ[恥の人]・・・サウル王の四男。ダビデの妻ミルカは彼の妹。「ボシェテ」が「誇り、強さ」を意味するとの説もある。元の名前は「エシュバアル[バアルが存在する・バアルの火]」。