サムエル記第二章1章-2

サムエル記第二1章-2(17-27節)
=本章の内容=
❷哀悼の歌
=ポイント聖句=23,サウルもヨナタンも、愛される、立派な人だった。生きているときも死ぬときも、二人は離れることはなく、鷲よりも速く、雄獅子よりも強かった
26,あなたのために私はいたく悲しむ。私の兄弟ヨナタンよ。あなたは私を大いに喜び楽しませ、あなたの愛は、私にとって女の愛にもまさって、すばらしかった
❷17-27節:哀悼の歌・・・この哀歌がサウルとヨナタンの死を悼むためのものであるのは間違いありませんが、18節の「ユダの子らに弓を教えるため」との言葉は多くの説があります。ユダの子弟への武道教育で用いられる頌歌(しょうか)とも言われています。ギルボア山での敗北はサウル軍の弓術の不足であることが要因であり以降、ダビデ軍は弓術を重んじるべきであるとの趣旨からこの歌が詠まれたという説もあります。また18節は省くべきとの説もあります。19節以降について実際の出来事とともにまとめてみます。
19,The beauty of Israel is slain(殺される・屠られる) upon thy high places: how are the mighty fallen!(KJV)【直訳】イスラエルの美しさはあなたの高い所に殺されています、強い者はどのように倒れるのですか!
19,「イスラエルよ、君主はおまえの高き所で殺された。ああ、勇士たちは倒れた。(新改訳2017)
19,ああ、イスラエル。おまえの誇りと喜びは、しかばねとなって丘に横たわる。大いなる英雄たちは倒れた。(リビングバイブル)
※主語はサウル王とヨナタンであることに間違いはない。KJVではslain(屠られる)が使われている。彼らの戦死は無駄死にではなくイスラエルの礎となるべきものだったの表現を意味している。
20, Tell it not in Gath, publish it not in the streets of Askelon; lest the daughters of the Philistines rejoice, lest the daughters of the uncircumcised triumph.(KJV)【直訳】ガートでそれを言うな、アスカロンの通りでそれを公表するな。ペリシテ人の娘たちが喜ぶこと、割礼を受けていない娘たちが勝利することを恐れてはなりません。
20,これをガテに告げるな。アシュケロンの通りに告げ知らせるな。ペリシテ人の娘らを喜ばせないために。無割礼の者の娘らが喜び躍ることがないために。(新改訳2017)
20ペリシテ人には告げるな。喜ばせてなるものか。ガテとアシュケロンの町にも告げるな。神を知らない者たちを勝ち誇らせてなるものか。(リビングバイブル)※ガテやアシュケロンはペリシテ人5大都市の一つ。ダビデはサウルやヨナタンの死の背景に主なる神様の介入を覚えている。ペリシテ人を通してサウル家が罰せられただけでイスラエルの神の敗北ではない。「ペリシテ人よ。ぬか喜びするな。」のダビデの確信が込められたもの。
21,Ye mountains of Gilboa, let there be no dew, neither let there be rain, upon you, nor fields of offerings: for there the shield of the mighty is vilely cast away, the shield of Saul, as though he had not been anointed with oil. (KJV)【直訳】ギルボアの山々よ、露も雨も供え物の畑もなくしてください。そこでは、強大な者の盾が卑劣に捨てられ、サウルの盾は油で油を塗られていないかのように捨てられているからです。
21,ギルボアの山よ。高原の野よ。おまえたちの上に、露は降りるな。雨も降るな。そこでは勇士たちの盾が汚され、サウルの盾に油も塗られなかったからだ。(新改訳2017)
21ギルボアの山よ、露も降りるな。雨も降るな。いけにえのささげられた野にも。偉大なサウル王が倒れた地だから。ああ、その盾は油も塗られず打ち捨てられた。(リビングバイブル)
※本来なら露も雨も畑に収穫をもたらす恵みの賜物である筈がここでは、戦死した者達は丁重に扱われず野ざらしのままであることを表現している。戦闘後は武具の全ては油を塗り大事に保管されるところを放置されたままでこのままなら火事場泥棒が盗むままとなる。
22,From the blood of the slain, from the fat of the mighty, the bow of Jonathan turned not back, and the sword of Saul returned not empty. (KJV)【直訳】殺された者の血から、力ある者の脂肪から、ヨナタンの弓は引き返さず、サウルの剣は空には戻りませんでした。
22,殺された者の血から、勇士たちの脂から、ヨナタンの弓は退くことがなく、サウルの剣も、空しく帰ることがなかった。(新改訳2017)
22最強の敵を打ち殺したサウルとヨナタンは空手で戦場から引き揚げたことはなかった。(リビングバイブル)
※サウルもヨナタンも主なる神様の命により戦っていた時には目覚ましい働きを行っていた。「しかし今回の戦いではその戦果は帳消しになっている。」との思いが舌下にある。
23,Saul and Jonathan were lovely and pleasant in their lives, and in their death they were not divided: they were swifter than eagles, they were stronger than lions. (KJV)【直訳】サウルとヨナタンは、彼らの人生において愛らしく、愉快でした。そして、彼らの死において、彼らは分裂しませんでした。彼らは鷲よりも速く、ライオンよりも強かったのです。
23,サウルもヨナタンも、愛される、立派な人だった。生きているときも死ぬときも、二人は離れることはなく、鷲よりも速く、雄獅子よりも強かった。(新改訳2017)
23ああ、サウルもヨナタンもどれほど愛され、どれほどすぐれた人物であったことか。生死を共にした彼ら。鷲よりも速く、獅子よりも強かった。(リビングバイブル)
※サウルとヨナタンの親子は固い絆で結ばれ最期まで引き離されることはなかった。サウルはヨナタンを疎んじることがあってもヨナタンは最期まで父サウルを信じてい従っていった。ヨナタンは父サウルを見捨てることがなかった。父サウルの命に鷲のように迅速に獅子のように勇敢に従っていった。
24,Ye daughters of Israel, weep over Saul, who clothed you in scarlet, with other delights, who put on ornaments of gold upon your apparel. (KJV)【直訳】イスラエルの娘たちよ、あなたがたに緋を着せたサウルに泣きべそをかいてください。他の喜びと共に、あなたがたの衣に金の飾りを着せたのです。
24,イスラエルの娘たちよ、サウルのために泣け。サウルは、紅の衣を華やかにおまえたちに着せ、おまえたちの装いに金の飾りを着けてくれた。(新改訳2017)
24さあ、イスラエルの女よ、サウル王のために泣け。王は、おまえたちを惜しげなく着飾らせ、金の飾りをまとわせてくれた。(リビングバイブル)
※かつて、イスラエルの女性たちはサウルの勝利に酔いしれ心から祝っていたではないか。だが今はサウルの死を嘆くのがあなた方の勤めてはないか。
25,How are the mighty fallen in the midst of the battle! O Jonathan, thou wast slain in thine high places. (KJV)【直訳】戦いの真っ只中で、偉大な者たちはどのように倒れたのですか! ヨナタンよ、あなたは高い所で殺されました。
25,ああ、勇士たちは戦いのさなかに倒れた。ヨナタンはおまえの高き所で殺された。(新改訳2017)
25偉大な英雄たちは、戦いの最中に倒れた。ヨナタンは山の上で殺された。(リビングバイブル)
※百戦錬磨の勇士たちが戦死していく中でも、ヨナタンの死はサウル王の罪過のいけにえとして屠られたものとダビデは考えている。
26,I am distressed for thee, my brother Jonathan: very pleasant hast thou been unto me: thy love to me was wonderful, passing the love of women. (KJV)【直訳】私の兄弟ヨナタンよ、私はあなたのために苦しんでいます:あなたは私にとって非常に愉快でした:あなたの私への愛は素晴らしく、女性の愛を通り過ぎました。
26,あなたのために私はいたく悲しむ。私の兄弟ヨナタンよ。あなたは私を大いに喜び楽しませ、あなたの愛は、私にとって女の愛にもまさって、すばらしかった。(新改訳2017)
26わが兄弟ヨナタン。あなたのために、どれほど涙を流したことか。あなたをどれほど愛していたことか。(リビングバイブル)
※ヨナタンはダビデと同じ方向つまり自分が主なる神様の栄光として用いられる器になる志を持っていた存在であり、ダビデが心から尊敬する人物であった。まさに同志を今失った。父親への思いまたダビデにいつも気に欠ける様子は母親の愛に匹敵していた。
27,How are the mighty fallen, and the weapons of war perished(滅ぼされた)! (KJV)【直訳】強い者はどのように倒れ、戦争の武器は滅びましたか
27,ああ、勇士たちは倒れた。戦いの器は失せた。(新改訳2017)
27ああ、勇士たちは倒れ、武具は奪い取られ、彼らは死んだ。(リビングバイブル)
※サウルもヨナタンもまた彼らに従ってペリシテ軍と戦った勇士たちが散って行ってしまった。
この哀悼の歌がユダの子弟への武道教育で用いられる頌歌として用いられるとするなら、「主なる神様を無視する輩に蹂躙されることの悔しさを決して忘れるな。戦うのは己の栄達の為ではなく全て主の栄光の一部となるためであることを忘れるな。」という教訓となったことだろう。
語句①歌った(17):英語lamented;ヘブル語ク―ン[嘆き悲しむ、 哀悼する]
語句②哀歌(17):英語lamentation;ヘブル語キナー[哀歌,挽歌,悲歌]・・・死者を追悼する哀歌や詩の専門用語。アブネル(Ⅱサムエル3:33)、ヨシヤ(Ⅱ歴35:25)の哀歌が存在する。
語句③ヤシャルの書(18):英語the book of Jasher;ヘブル語セフェイル・ヤシャール[本(記録簿,経典,預言書)・適切な(正しい,真っすぐ,ぴったり)]・・・ヨシュア10:13でも言及されている。イスラエルの初期の歴史における記憶に残る出来事や人物に関する歌を集めたものとされ、この哀歌もその中に含まれていた。真偽のほどが不明。(例)ノアの洪水以前に雪があったとの記述もある。