サムエル記第一30章-1

サムエル記第一30章-1(1-6節)
=本章の内容=
❶アマレク人の略奪事件
=ポイント聖句=6,ダビデは大変な苦境に立たされた。兵がみな、自分たちの息子、娘たちのことで心を悩ませ、ダビデを石で打ち殺そうと言い出したからだった。しかし、ダビデは自分の神、主によって奮い立った。
[アマレク追撃の経緯] [1]アマレク人の略奪事件・兵の家族が奪われる [2]石打ちに遭いそうになるダビデ [3]主なる神様に伺いを立てるダビデ [4]ベソル川で兵が分かれる [5]アマレク人の奴隷(エジプト人)との遭遇 [6]略奪隊への攻撃・家族の奪還 [7]分捕り物についてのいざこざ [8] ユダの長老たちに戦勝品を送る =黙想の記録=❶1-6節:アマレク人の略奪事件・・・ツィクラグからアフェクまでの距離は140kmを優に超えています。ダビデの部隊は「らばやラクダ」を保有していません。恐らく歩兵ばかりでだったことでしょう。一日平均25km移動ができたとしても3日以上かかります。アフェクで一泊したわけですから帰還するのに凡そ7日間もツィクラグは無防備の状態のままです。この隙を狙ったのがアマレク人です。27:8でダビデの部隊はアマレクを略奪していますから、この攻撃はその報復であったことは間違いありません。安全安心そして安定した生活の確保という理由だけで、故郷イスラエルを捨てペリシテ人に隷属してきた結果が目の前の惨状です。「3,ダビデとその部下が町に着いたとき、なんと、町は火で焼かれていて、彼らの妻も息子も娘も連れ去られていた。」とあります。住居を火で焼かれただけでなく家族までそこに居ないのです。奴隷にされるのかあるいは別の場所で殺さるのかは定かではありません。この時点で兵達は「全てを失った」という悪い想像しか出て来ないのは当然です。ペリシテ人の軍門に下りしかも何度も命がけで近隣の部族を襲撃してきたのです。ダビデに身を寄せることがなければこんな命を削る思いをする毎日ではなかったはずなのです。兵達の不満はピークに達し、「元凶であるペリシテ人への投降」を選択したダビデに矛先を向けるのです。主なる神様の奇跡的な介入により戦わずして帰還できたのです。しかも「ツィクラグは攻撃を受け火で焼き払らわれていた(1)』ということはペリシテ人の領地に居場所がない。もっと言うなら寸分も自分たちがそこに居たという痕跡が残らないという主なる神様のこれまた配慮になるのです。ここに兵達にもダビデと同様信仰の目が育っていたのなら、「見ている光景は惨状に非ず。イスラエルへの帰還への入り口也。」と反って希望が湧いてくるはずなのです。「2,そこにいた女たちを、子どもも大人もみな捕らえ、一人も殺さず、自分たちのところへと連れ去っていた。」との確かな情報があるのですからアマレク人を追撃して家族を奪還すればいいのです。「6,・・・ダビデを石で打ち殺そうと言い出した」とありますが、ダビデを殺害したければ密かに誰かが剣で暗殺すれば良い所を「石打ち」で殺そうとするのは違和感がありませんか。「石打ちの刑」はイスラエルの重罪人をに対する死刑の方法ですが、複数人が寄って集って(よってたかって)公の場で時間を掛けて殺すものです。じわじわ殺していくのは可愛さ余って憎さが百倍という心理からでしょうか。また同時にダビデの家族も全員同じ刑に処せられるのです。しかしここで気になるのはこの「石打ちの刑」は必ず合議の末に決定されるもので会衆の同意が必要なのです。ダビデがいるところで合議されたとするのならダビデにとってそれはあまりにも情けないことです。命がけで部下たちを守り抜いてきたのはダビデです。それを今更ダビデに責任転嫁して何の得策になるのでしょう。兵達は復讐する相手を間違えているのです。ダビデは自分が刑に処せられることよりもこの部下たちに信仰の目、主なる神様に信頼する心が育っていなかったことに今更ながら気づかされるのです。「6,・・・しかし、ダビデは自分の神、主によって奮い立った。」とあります。アキシュから「イスラエルとの戦いに参戦せす帰還する様」に命じられた時、すでにダビデには、「見ている光景は惨状に非ず。イスラエルへの帰還への入り口也。」との信仰による確信が与えられていたのです。
=注目語句==注目語句=
語句①苦境に立つ(6):英語was distressed;ヘブル語ヤセイル[縛る,苦悩する,窮屈になる]
語句②心を悩ませる(6):英語was grieved;ヘブル語マラー[不従順であること,反抗的であること]
語句③石で打ち殺す(6):英語spake of stoning;ヘブル語アメー・サケール[命令する(宣誓する)・石で打ち殺す]・・・「石打ち刑にすることを宣誓した」のならその前に刑が妥当か合議する前提の時間が必要になる
語句④奮い立つ(6):英語encouraged himself;ヘブル語ハザック[勝つ,強くなる,勇気を持つ、しっかりする,毅然としている]