サムエル記第一29章

サムエル記第一29章(1-11節)
=本章の内容=

❶幻想に憑りつかれたサウル❷ペリシテ軍からの離脱

=ポイント聖句=

9,アキシュはダビデに答えて言った。「私は、あなたが神の使いのように正しいということをよく知っている。だが、ペリシテ人の首長たちが『彼はわれわれと一緒に戦いに行ってはならない』と言ったのだ。

=黙想の記録=

❶1節:幻想に憑りつかれたサウル・・・「1,ペリシテ人は全軍をアフェクに集結し、イスラエル人はイズレエルにある泉のほとりに陣を敷いた。」とあります。前回の決戦場所(4章)はガドの近くでしたが、今回のペリシテ連合軍陣営アフェクは、ペリシテ人5大都市(アシュドド、アシュケロン、エクロン、ガザ、ガト)からかなり北に位置しています。しかしこの場所は元々要害があり多くの武器が保管されている場所でもあります。ペリシテ軍は万全の上に万全の準備をして戦いに臨むのです。一方サウル軍は首都ギブアから直線距離で90kmもあるイズレエルで陣を構えるのです。この近辺にイスラエルの要害などありませんし、過去にイスラエルに有利なことがあったなど何の曰くも出てきません。関連性があるとすればこのイズレエルは例の霊媒師の居たエン・ドルとは5kmで目と鼻の先。ギブアにまた戻るのは危険性がより高まっている時点になっているので、常備軍3000人をこの場所に呼んだ方がサウルには安全なのかもしれません。これは全くの推測ですが、霊媒師を通してサムエルに会ったと思い込んで、「戦いが不利になれば今までもあった様にきっとサムエルを介して主なる神様が助けて下さる」などと勝手に幻想を抱いていたのかもしれません。31章で出てきますがサウルの息子3人もこの戦場に呼び出されています。あれほど毛嫌いしていたヨナタンも呼び出されます。これもまた「ヨナタンを戦場に出せば主なる神様はきっとヨナタンを介して戦いに勝利できる」というサウルの幻想の続きだったのではないでしょうか。絶体絶命の危機を迎えたサウルには起死回生の方法はないのです。ところでここにアブネルの名前は出てきません。アブネルは計算高い人物です。推測ですがアブネルはこの時すでにサウロを見捨てていたのではないでしょうか。アブネルはダビデと関係性のないサウルの四男イシュ・ボシェテを次期国王として擁立する算段をとっていたのです。故に高齢であるとか病気であるとか何らかの理屈を作って出兵を拒んだのではないでしょうか。

❷2-11節:ペリシテ軍からの離脱・・・一方アキシュ王に身を寄せていたダビデも最大の危機を迎えるのです。28章でアキシュによる出兵命令を拒むことができません。拒否することはイスラエルに味方するのと同然です。そしてその時点で一族郎党はアキシュ王の軍隊に皆殺しにされるのは必至だったのです。28章-1でも記した様に、アキシュの部下であるならば当然ペリシテ連合軍の一員としてイスラエル打倒の戦いに加わらなければなりません。イスラエルと戦うということは「神の民への攻撃」つまり「主なる神様への謀反」でもあるのです。ダビデは心に葛藤があるままアキシュの軍勢の後についていきました。ここにはダビデの心持や信仰的な行動は一つも記録されていませんが、アキシュの出兵命令を受けてダビデは主なる神様に必死で解決を求めたことでしょう。それは30章でペリシテ軍から離脱した直後ツィクラグがアマレク人の略奪を受けた際直ぐに大っぴらに主なる神様に伺い求めたところに現れています。その祈りに応えられるように主なる神様は次々に奇跡的な導きを用意してくださっていたのです。その第一の奇跡はアキシュを除くペリシテ連合軍の首領たちがダビデの部隊の同行を否んだことです。つまり「ゴリヤテを殺してその首を戦利品としてサウル王に献上した男など信用できない。きっと自分たちも寝首を掻かれるかもしれない。」という疑念が湧いたことです。アキシュの説得にも拘わらずダビデとその部下は撤退することが合議で決められたのです。第二に奇跡はその合議の結果を受けアキシュ自身がツィクラグに戻ることを命じたことです。ここにはダビデの画策は一切ありません。とするなら、主なる神様の配慮以外には考えられないのです。主なる神様が人の心を動かすのに常軌に逸することはなさいません。ごく当たり前の常識を使って人の心を動かすのです。

[追記]「6,・・・主は生きておられる」「9,・・・あなたが神の使いのように」のアキシュの言葉に違和感を覚えませんか。アキシュはダゴンの神を信奉しているはずです。ダビデはアキシュに対して虚偽の言動をしてきました。これらの言葉は「主なる神様」への畏敬を匂わせる言葉ではなく、戦いに同行することを拒否された誇り高き戦士に対して丁重な断り方をしたに過ぎないのではないでしょうか。しかし、ダビデとの個人的な交流の中でイスラエル人の高い倫理観や結束力や勇気などに気付かされたいたのではないでしょうか。それが「主なる神」を信奉している故だと確信していたと思われるのです。

=注目地名=

地名①アフェク(1):英語Aphek;ヘブル語アフェク[囲い,要害]

地名②イズレエル(1):英語Jezreel;ヘブル語イェズレエイル[神は種をまく] =注目語句=

語句①落ちのびて来て(3):英語fell unto me;ヘブル語ナフェイル[墜ちる,(激しい死の)落下する,ひれ伏す]

語句②首を使う(4):英語handing(渡す) our heads over to him(NLT);ヘブル語ロシュ[首を伴う]・・・かつてダビデはゴリアテの首を切り戦勝記念としてサウルに差し出している(Ⅰサムエル記17:51)。

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