サムエル記第一25章-1
サムエル記第一25章-1(1-12節)
=本章の内容=
❶ナバルに見返りを求める
=ポイント聖句=10-11,ナバルはダビデの家来たちに答えて言った。「ダビデとは何者だ。エッサイの子とは何者だ。このごろは、主人のところから脱走する家来が多くなっている。私のパンと水、それに羊の毛を刈り取る者たちのために屠った肉を取って、どこから来たかも分からない者どもに、くれてやらなければならないのか。」
=黙想の記録=❶1-12節:ナバルに見返りを求める・・・サムエルは89歳でその生涯を閉じました。サムエルはカナン侵攻後混乱したイスラエルを復興し、エリの死後16年以上、サウルの治世で40年間の長きにわたりイスラエルを統率した偉大な預言者でした。。しかし彼の最たる事業は預言者学校創設とその基礎作りにあったと言えます。その目的はイスラエルに律法を広く行き渡らせる為の預言者を育成することにありました。また輩出する預言者を介し歴代の王に事あれば進言や諫言を行わせる為でもありました。そのサムエルが亡くなったことはサウルにとって目の上のたんこぶが亡くなったことを意味し、ダビデには霊的指導者の喪失となったのです。しかしダビデには預言者ガドや大祭司エブヤタルという心強い味方がいたのです。ダビデを擁護するサムエルが亡くなったことでサウルは大手を振ってダビデを亡き者にすることができるようになるのです。一方ダビデは更に危険性が増したので、点々と行く先を換え逃避を繰り返さなければなりませんでした。また部下たちの食糧確保の為広大なユダの領地各地を移動しなければなりませんでした。ある程度の武力を持っていたため、ユダ族の放牧地に出現する略奪隊を追い払う役割を果たし、それぞれの地域住民から食料などの報酬を受けていました。ナバルと言う人物がカルメルで多くの使用人を雇用し手広く事業を行っていました。生活の豊かさとは反比例で彼の人物評価は極めて低く地域住民から酷評されていました。イスラエルの慣習で行けば本来富裕者は貧者を慈しみその富を分配するのが正義でした。あの勇者カレブの子孫ではありましたが、イスラエルの正義など追及する人物では元よりありません。羊の毛の刈り取りは6・7月に行われ、収穫後には宴会を開き使用人の労をねぎらい報酬を与えるのが慣わしです。ナバルの人格からすると使用人に対し正当な報酬も支払わないどころか慰労の為の祭りを開いてもてなすことなど一切なかったのでしょう。そもそもアビガイルの牧用地もダビデ一行が略奪隊から守られていたわけですから何らかの報酬と歓待を受けても差し支えない立場でした。推測ですがダビデが遣わした十人の若者はナバルの使用人たちも見知った者達で、家畜だけでなく使用人の命を守る防壁だった若者たちだったのです。ダビデから丁寧な挨拶をともなう言付けを伝えるためですがナバルの応答は謝辞ではなく冷酷な侮蔑の言葉でした。「10,・・・エッサイの子とは何者だ。このごろは、主人のところから脱走する家来が多くなっている。」とあるように、ナバルはダビデの正体を知っていました。「10,主人のところから脱走する家来が多くなっている。」の家来はヘブル語でエベッド。「家来」の他に「召使い」や「奴隷」を意味します。逃亡する奴隷は今後逃亡しないように鎖で繋がれるか見せしめの為に死罪にします。しかも逃亡奴隷を匿(かくま)っただけで匿った者も死罪となるのです。つまりダビデと行動を共にするこの若者たちも死罪となるのです。「主人のところから脱走する家来」という言葉を持ち出したのはこの若者たちに対する脅かしです。つまりジフ人同様「サウルに密告する」ことを舌下に含んで脅かしているのです。「11,私のパンと水、それに羊の毛を刈り取る者たちのために屠った肉を取って、どこから来たかも分からない者どもに、くれてやらなければならないのか。」とのナバルの言葉の中に大事な要素が含まれています。それは「8, どうか、しもべたちと、あなたの子ダビデに、何かあなたの手もとにある物を与えてください。」のダビデの要求に対する返答だからです。つまり、「今後も食料や生活必需品の供給を我々に継続して欲しい。」との暗黙の了解を求めるものでしたが、ナバルはそれを拒否したことになるのです。ダビデはナバルとの間に盟約を結ぶことをの了解を求めたのに拒否されたのです。ということはジフ人同様今後ダビデの敵となることを意味しているのです。
=注目語句=語句①カレブ人(3):英語Calebite;ヘブル語レイブ[カレブの子孫]・・・ユダ族
語句②事業(2):英語possessions(KJV), owned property(所有財産);ヘブル語メエサイ[事業,仕事] =注目地名=
=注目地名=地名①パラン(1):英語Paran.;ヘブル語パラン[洞窟のある場所]・・・シナイ半島からユダヤの南方領土のパレスチナの国境まで伸びる場所のことで放牧期に牛を送り込んだ広大な自然の牧草地を示している。そこではアラブ人による絶え間ない激しい略奪にさらされていた。ダビデとその部下たちはカレブ人の放牧されている家畜を略奪隊から守ることを任されていた。報酬として食糧などを与えられていたと思われる。
地名②カルメル(2):英語Carmel;ヘブル語キャルメール[庭園のある土地]・・・死海の西側とヘブロンの南部にあるジフとマオンの間の山の町。
=注目人名=人名①ナバル(3):英語Nabal;ヘブル語ナバォール[愚か者]・・・カレブ人(ユダ族)ナバルについてサムエル記の作者は次の様に表現している。
[1]頑迷(3):英語churlish;ヘブル語カシェー[残酷な,厳しい,頑固な]
[2]行状が悪い(3):英語evil in his doings;ヘブル語ラ・メイイル[行い(行為)が・悪い(邪悪,不快,最悪,不幸)]
[3]よこしまな者(25):英語Belial;ヘブル語ベリヤエール[無価値,役立たず,何の役にも立たない,卑しい者,邪悪な,破滅的]
[4]愚か者(25):英語folly;ヘブル語ネバラ[恥ずべき愚行,不道徳な行為]
人名②アビガイル(3):英語Abigail;ヘブル語アビガ・イル[私の父は喜びです]