サムエル記第一23章-3

サムエル記第一23章-3(19-26節)
=本章の内容=
❹ジフ人の密告
=ポイント聖句=28,サウルはダビデを追うのをやめて帰り、ペリシテ人の方に向かった。こういうわけで、この場所は「仕切りの岩山」と呼ばれた。
[ダビデ逃亡生活の経緯] [1]ジフ人が上京してサウルに密告 [2]サウル軍がジフまで南下してくる [3]ダビデ一行がマオンの荒野に避難 [4]サウル軍がマオンの荒野の南端(シャラ・ハ・マカリコフ)に到着・峡谷を挟んで西東に対峙する [5]ペリシテ軍侵略の一方が入りサウル軍は北に帰る =黙想の記録=❹19-29節:ジフ人の密告・・・ジフ人はユダ族(Ⅰ歴代4:16,29:12)なのですが、それでも二度にわたってダビデのことをサウルに密告しています。(Ⅰサムエル26:1)。ダビデが移動していたエシモンは白い石灰岩の台地で、山の尾根から死海の喫水線までほぼ垂直な崖になっています。西側から追い迫られれば逃げ場所がありません。不毛で荒涼としたところですから、はるか遠方からでも人々の動きは容易に観察できます。ましてや600人の集団は目につきやすいのです。ケイラの住人はペリシテ人から救い出された恩義があるのにダビデを売り飛ばしそうになったのです。ジフ人はダビデに何の恩義となることはなく、ただサウルの報復を恐れあっさりとダビデ一行の存在をサウルに密告しにサウルの元に上京します。「20,・・・私たちが彼を王の手に引き渡します。」との言葉はサウルに忖度して出て来た大言壮語です。ジフ人には敵う相手ではないはずです。するとサウルはこの密告に有頂天になります。サウルの横柄で自己中心の政策は部下だけでなく様々な部族の長の協力を得られない状態でした。それを小さな部族であってもダビデと同部族のジフ人がダビデを裏切って自分への協力を申し出ているのです。21-23節でサウルがジフ人に返答していますが、悪魔が乗り移ったかのようにあまりにも作為的で滑稽な内容です。「21,・・・主の祝福があなたがたにあるように。あなたがたが私のことを思ってくれたからだ。」主なる神様に反逆している身でありながら抜け抜けと言えたものです。これは光の天使にも装うことのできる悪魔の言い方です。ジフ人が自分に忖度して動いていることへの賞賛です。「22-23,さあ行って、さらに確かめてくれ。彼が足を運ぶ場所と、だれがそこで彼を見たかを、よく調べてくれ。彼は非常に悪賢いとの評判だから。彼が潜んでいる隠れ場所をみな、よく調べて、確かな知らせを持って、ここに戻って来てくれ。そのとき、私はあなたがたと一緒に行く。彼がこの地にいるなら、ユダのすべての分団のうちから彼を捜し出す。」などともっともらしいことを言っていますが、要は片付けることができるならジフ人が大言壮語した様に「ジフ人だけでダビデを捕縛して欲しい」ということなのです。あるいは「それができない様なら足止めしていて欲しい」ということなのです。こうすればサウル軍が直接攻撃をして傷つくことはないのです。一国の長でありながらサウルは自分の手を汚したくないのです。サウルの言葉を受けてジフ人は行動を開始します。ところがダビデ一行はサウルがジフにやって来ることを察知して南方に避難します。ところが洗練されたサウル軍は谷を隔てて西側の山にまで迫っています。ダビデ一行はその谷の東側の山に位置していました。サウル軍からは丸見えです。しかしヘブロンの南東にはマオンの近郊の間には、『岩の谷』と呼ばれる大きな峡谷があり、狭くそして深い裂け目となっていたので、たとえダビデが目の前に見えていてもダビデを捕獲するにはおよそ10kmも迂回しなければなりませんでした。10kmの距離なら速足で1時間で追いつけます。攻撃の命令を下そうとした寸前サウルの元に伝令がやってきます。ペリシテ人が再攻撃を仕掛けて来たというのです。恐らくサウル軍本体の留守を狙ったペリシテ人の作戦と思われます。サウル軍は急遽戻らなければなりません。この絶妙なタイミングは偶然ではありません。主なる神様の完全なる介入だったのです。詩篇54篇はジフ人の密告で危険に晒された時のダビデとその仲間の様子を歌い上げたものです。「7,神がすべての苦難から私を救い出し、私の目が敵を平然と眺めるようになったからです。」の最期の言葉はいかなる時も主なる神様の保護下にあるとの確信に満ちています。主なる神様がダビデをその度に窮地から救い出されるのはダビデ自身の為ではなくダビデに関わる人々の救いの為です。ダビデは主なる神様の道具として用いられているのです。私達基督者が救いを受けたのはダビデ同様自分に関わる人々の救いの為でもあるのです。
=注目語句=語句①ジフ(19):英語Ziphites;ヘブル語ズィフ[製錬所]
語句②要害(19,29):英語strong holds;ヘブル語メトゥサドゥ[要塞,拠点]
語句③悪賢い(22):英語dealeth very subtilly;ヘブル語アラム[狡猾である, 巧妙である、抜け目がない]
語句④分団(23):英語thousands;ヘブル語コウォル[数千,仲間]
語句⑤仕切りの岩山(28):英語Selahammahlekoth;ヘブル語シャラ・ハ・マカリコフ[脱出の崖,分裂の崖]・・・ヘブロンの南東にはマオンの近郊の間には、『岩の谷』と呼ばれる大きな峡谷があり、狭くそして深い裂け目となっていたので、たとえダビデが目の前に見えていてもダビデを捕獲するにはおよそ10kmも迂回しなければならなかった。サウルでの必死の追跡をダビデはこの地形ゆえに逃れることができた。
=注目地名=地名①ハキラ(19):英語Hachilah;ヘブル語ハヒラ[暗闇]・・・南ユダ、ジフの荒野の端にある丘
地名②エシモン(24):英語Jeshimon;ヘブル語イェシモン[荒れ地,荒野,砂漠]
地名③マオン(24):英語Maon;ヘブル語マオン[居住地]・・・ヘブロンの南13kmに位置するユダの都市
地名④エン・ゲディ(29):英語Engedi;ヘブル語エン・ゲディ[子供の泉]・・・死海の西岸にあるユダの荒野の町