サムエル記第一23章-2

サムエル記第一23章-2(7-18節)
=本章の内容=

❷ケイラの住民の裏切り➌ヨナタンとの密会

=ポイント聖句=

14,ダビデは、荒野にある要害に宿ったり、ジフの荒野の山地に宿ったりした。サウルは、毎日ダビデを追い続けたが、神はダビデをサウルの手に渡されなかった。

17,彼はダビデに言った。「恐れることはありません。父サウルの手が、あなたの身に及ぶことはないからです。あなたこそ、イスラエルの王となり、私はあなたの次に立つ者となるでしょう。父サウルも、そうなることを確かに知っているのです。」

=黙想の記録=

❷7-14節:ケイラの住民の裏切り・・・サウルにとってイスラエル南方には広範囲にわたり砂漠・山々・深い森林さらには多くの洞穴があり、小部隊を方々に遣わしてダビデを探索するのは容易なことではありません。ケイラは要塞都市です。仮にサウル王の数千人の正規軍でケイラを包囲すればケイラの住民はダビデを裏切りサウルに売り渡すために鉄格子の中にダビデを閉じ込めておくだろうと踏んだのです。ケイラの住民がダビデによってペリシテ人から解放された喜びに浸っているときサウル軍の動向が知らされ、ダビデは再び主なる神様に二度も指示を仰ぎました。そこにガドが同席していたかは明らかではありませんが、エブヤタル達祭司を呼び出したことは確かです。ある解釈では祭司の身に着けたエポデの宝石の輝きが異彩を放つ結果を見て今後を決定するとありましたが、それではまるで占いと同じです。神託を伺うとは祭司達に祈りと協議の時間を持たせてその結果に従う方法をとったという説があります。個人的には後者の方が納得できます。「①サウルが攻めて来るかどうか②ケイラの住人は裏切るか」との問いに何れもYESの回答がありました。①はサウル王がダビデの居場所を特定できたわけですから当然な行動でしょう。②はサウル王の冷酷さから考えればダビデ諸共にケイラを滅ぼすのは当然予測できます。何もこんな分かりきったことをいちいち神託など受ける必要があるのでしょうか。しかしこの余計な時間と思われる行為が主なる神様に従う者の行為なのです。これこそが神様に忠実であることの証明なのです。またダビデの同胞が確信を持って行動できる手段なのです。「13,ダビデとその部下およそ六百人は立って、ケイラから出て行き、そこここと、さまよった。ダビデがケイラから逃れたことがサウルに告げられると、サウルは討伐をやめた。」とあります。短期間で400人から600人にダビデの仲間は増えています。根無し草のような生活は不安定極まりないはずなのですが、ダビデの人望の厚さが人を呼び寄せているのです。また聖書では記載されていませんが、表立って行動は一緒にしなくても、恐らくダビデの生活を秘密裏に支援する部族や人物が数多く出て来たものと考えられるのです。主なる神様に従う潔さが人々の好感を呼ぶのです。私利私欲で王座に固執し恐怖政治で人心を操ろうとするサウルとは雲泥の差です。

➌15-18節:ヨナタンとの密会・・・ホレシュは地名ではなく「森林」のことです。広大なハレテの森の最南端にある森林地帯です。スイスの伝説のヒーローウィリアム・テルの物語を彷彿とさせるのがこの放浪時代のダビデです。玉座に座り込み侍従や女官を侍らかしていた何不自由のない絶頂期のダビデより、不自由極まりない生活を強いられているこの時のダビデに魅力を感じるのは私だけでしょうか。何愛と自由以外に何物も持っていなかったこの時のダビデの方が生き生きととしているとは思えませんか。600人もの命知らずの仲間がいるのです。サウル王に反旗を翻せば直ちに加勢するイスラエル人が集まってきたことでしょう。しかしダビデは敢えてそんな行動を取っていません。曲がりなりにも主なる神様が任命された国王がサウル王です。今反旗を翻すことは主なる神様への反逆行為となるのです。ダビデは主が立てられるまでじっと待機しなければならない事を承知しています。逸(はや)る心はないのです。ダビデのこの信仰の潔さを熟知していた信仰の友ヨナタンが隠密裏にダビデに会いにやってきます。ヨナタンは王子である自分を差し置いてダビデが次期国王になることをダビデに告げるのです。サウル王もそして自分もそう確信していると告白するのです。ヨナタンもまた潔い信仰を与えられている人物なのです。このヨナタンの告白にどれほどダビデは励まされたことでしょう。数十万の兵が集まることよりも確かな戦力は万軍の神が自分の味方でえることの確信です。今その確信を信仰の盟友ヨナタンの言葉から受け取ることができたのです。

=注目地名=

地名①ジフ(14):英語Ziph.;ヘブル語ジ~プ[砲台]・・・ケイラから更に南南東30km下にある要塞都市でハレテの森の南方に位置する。サウル軍が遠征するにはあまりにもリスクが大きい。

地名②ホレシュ(14):英語wood.;ヘブル語ホレッシュ[森,林]