サムエル記第一22章-2

サムエル記第一22章-2(6-23節)
=本章の内容=
❷アヒメレクと一族の処刑
=ポイント聖句=19-20,彼は祭司の町ノブを、男も女も、幼子も乳飲み子も、剣の刃で討った。牛もろばも羊も、剣の刃で。アヒトブの子アヒメレクの息子のエブヤタルという名の人が、一人逃れてダビデのところに逃げて来た。
=黙想の記録=❷6-23節:アヒメレクと一族の処刑・・・「6,・・・サウルはギブアにある高台のタマリスクの木の下で、槍を手にして座っていた。彼の家来たちはみな、彼のそばに立っていた。」とありますが、「槍を手にして座る」のは軍の総司令官としていつでも軍事命令を発することができる様子を表しています。ダビデは今や一人ではないのです。ダビデと400人以上の集団がアドラムの洞から表舞台に踊り出してきたのです。この様子をサウルにはダビデの軍事行動と思われ、サウルを震え上がらせます。少人数で大群を撃破する例をサウル自身も見聞きしています。引き締めを図るためサウルは臣下に檄を飛ばします。「7-8,聞け、ベニヤミン人。エッサイの子が、おまえたち全員に畑やぶどう畑をくれたり、おまえたち全員を千人隊の長、百人隊の長にしたりするだろうか。それなのに、おまえたちはみな私に謀反を企てている。息子がエッサイの子と契約を結んでも、だれも私の耳に入れない。おまえたちのだれも、私のことを思って心を痛めることをせず、今日のように、息子が私のしもべを私に逆らわせて、待ち伏せさせても、私の耳に入れない」とありますが、この投げかけられたサウルの言葉は心ある臣下なら呆れてしまうものばかりの筈です。第一にサウルを取り巻くのは同族ベニヤミン人だけで他部族はサウルに同調していないと自分で認めてしまっているのです。第二に自分に忠誠を誓う臣下は財産(畑)や地位(軍人の階級)という報酬が目当てであると言っているようなものです。第三に第一王子のヨナタンがダビデに加担していると暴露しているのです。そして決定的なのは「おまえたちはみな私に謀反を企てている」との言葉です。臣下を誰も信用していないと表明してしまったのです。しかしサウルの恐怖政治の為臣下は震え上がっているだけで何かを進言する者など誰もいなかったのです。ところがこの時とばかりにエドム人ドエグがしゃしゃり出てきます。前述した様にドエグは形式的な改宗者です。ただ自分の栄達だけを虎視眈々と狙っている人物です。アヒメレクがダビデと結託しているかのような敢えて誤解を招く報告をするのです。ダビデの行動で知りに火がついていたサウルは何か行動しなければ落ち着かないのです。さっそくアヒメレク達を呼びつけますが、これは始めからアヒメレクとその一族、さらにアヒメレクと同職にあった祭司たちの根絶を企んでいたものです。この企てはダビデびいきの臣下に対する見せしめでもあったのです。ところが自分の前に立っているアヒメレクの第一声は命乞いではありませんでした。かえって自分の潔白を証明する前にダビデがサウルの忠実な臣下であり婿であるのに何故ダビデを断罪しようとするのかと諫言してしまうのです。アヒメレクが自分の前で手をすり合わせて命乞いをすると踏んでいたサウルはこの諫言に激怒します。即刻死刑を申し付けます。ところが「17,しかし王の家来たちは、主の祭司たちに手を下して討ちかかろうとはしなかった。」とあります。アヒメレクの陳述に何の落ち度もないのです。それを根拠もなく殺害することは律法に抵触しています。ましてや主なる神様が任命をされた祭司たちに手を掛けることは神への反逆です。躊躇する臣下に業を煮やしたサウルはドエグに公式装束を身に纏うアヒメレク以下無抵抗な祭司たち85人を次から次へと処刑していくのです。さらにドエグに命じてノブの町の住人を全て虐殺するのです。街の住民を皆殺しにする光景は正に聖絶の光景と被るところがあります。ところが主なる神様の命に背きこの時サウルはアマレクを聖絶していません。しかし、サウルに神の正義を持って諫言したアヒメレク一族と聖職者を根絶するのは明らかに主への反逆行為です。昔も今も神のしもべを抹殺しようとするのはこの世の君悪魔の常套手段です。「20,アヒトブの子アヒメレクの息子のエブヤタルという名の人が、一人逃れてダビデのところに逃げて来た。」とありますがこの事実はエリに宣告された「わたしは、あなたの家の一人だけは、わたしの祭壇から断ち切らないでおく。(Ⅰサムエル2:33)」という預言の成就だったと解釈があります。父アヒメレクの死後ダビデの厚い保護の元彼は大祭司を継承しダビデの生涯において重要なポジションを占めています。『22-23,ダビデはエブヤタルに言った。「私はあの日、エドム人ドエグがあそこにいたので、彼がきっとサウルに知らせると思っていた。私が、あなたの父の家の者全員の死を引き起こしたのだ。私と一緒にいなさい。恐れることはない。私のいのちを狙う者は、あなたのいのちを狙う。しかし私と一緒にいれば、あなたは安全だ。」ダビデはアヒメレクとその一族また祭司たちに起こった悲劇を激しく嘆いた筈です。善良な人人々を自分の保身のために嘘までついて巻き込んでしまったのです。ダビデは自惚れと自己過信の過ちが他人にまで塁をもたらすことを再度神様に突き付けられたのです。
=注目人名=人名①エブヤタル(20):英語Abiathar;ヘブル語エビヤサール[私の父は偉大である]
人名②アヒトブ(20):英語Ahitub;ヘブル語アヒトゥーブ[私の兄弟は善良だ]