サムエル記第一21章-2

サムエル記第一21章-2(10-15節)
=本章の内容=
❷ガテの王アキシュとダビデ
=ポイント聖句=13,ダビデは彼らの前でおかしくなったかのようにふるまい、捕らえられて気が変になったふりをした。彼は門の扉に傷をつけたり、ひげによだれを垂らしたりした。
=黙想の記録=❷10-15節:ガテの王アキシュとダビデ・・・
アヒメレクの所にサウルの家事奴隷の長ドエグがいたことを知ったダビデはここも安全な場所ではないと直ちにそこを去り、約50km西南西のガテの王アキシュのところにやってくるのです。ここでも素朴な疑問が湧いてきます。それは秘密裏に再びサムエルの所に戻ればいいのでは、辺境の地にいるユダ部族のところや他部族のところに身を隠すことができたはずではないでしょうか。ところがよりによって自分が一騎打ちで倒したゴリヤテの故郷ガテに行くのです。いったいどんな根拠があってそんな場所を選んだのでしょうか。想像するに「サウルはイスラエル領内ならどこまでも追いかけて来る。敵国に逃亡すればリスクを冒してまで捜索することはあるまい。」また「ペリシテ人の敵はサウルである。自分はそのサウルに敵視されている。つまり敵の敵は味方になる。」また「すでに例の戦から12年も経過しているので熱(ほとぼり)が冷めたのではあるまいか。」とダビデの脳裏にあったのではないでしょうか。また「ゴリヤテの剣を持参すれば、『自分こそはあの時のイスラエルの英雄だ』と即断させる材料になるだろう。こんな実力あるを人物をガテの王アキシュが抱え入れないわけがない。所詮アキシュ王もサウル王とご同類だろう。」と己惚れているのです。過信しているのです。こんな根も葉もないことを自分に信じ込ませようとしたのです。根拠のないことを自分意都合のいいように解釈し自分自身に信じ込ませようとするのが青年期の弱点なのです。つまりダビデの信仰の脆さがここにも表れてしまったのです。ところが物事は自分の思う通りには動きません。いくら年月が経ち風貌が変わってもダビデを見分けることのできる人物がガテの王アキシュの臣下にはいたのです。さらにダビデはガテの勇者ゴリヤテの剣を持参しているのです。敵地に乗り込めばたちまちダビデとばれてしまうのは当然です。『11,・・・皆が踊りながら、『サウルは千を討ち、ダビデは万を討った』と言って歌っていたのは、この人のことではありませんか。」』とありますが、凱旋の微細な様子をなぜ知っていたのでしょうか。考えられることは間者と思しき人物がイスラエルに忍び込んでいたか、ガテと交易をしている商人たちがいたと思われるのです。凱旋した時民が歌う『サウルは千を討ち、ダビデは万を討った』はとても心地よく聞こえていたのに、たった今この歌は自分の命を脅かす風聞になっているのです。ダビデの思惑は全て外れて言い知れぬ恐怖が彼を襲います。数々の命知らずの武勲を立ててきたダビデがなぜ恐れる必要があったのでしょう。ここが重要なポイントです。ダビデを召命したのは主なる神様です。主なる神様に人生の一切を委ね忍耐を持って次の主の御命令を待つことがダビデに任されていたのです。その間必ず主なる神様の保護下にあるのです。約2年間もその保護下に置かれていたのです。しかしその貴重な期間、ダビデは預言者サムエルと共に今後のことを神様に伺うことをしていません。問題を打開しようと全て自力で画策しようとし、いよいよ自分を窮地に追い込んでいくのです。単なる自惚れと自分を過大評価してしまう熱情が彼の最大の信仰の脆さだったのです。主なる神様は「肉の人」に一変してしまったダビデを再び「信仰の人・霊の人」に作り替えたかったのです。ダビデが危機に追い込まれて取った態度は自分を狂人のように思わせることです。「13,ダビデは彼らの前でおかしくなったかのようにふるまい、捕らえられて気が変になったふりをした。彼は門の扉に傷をつけたり、ひげによだれを垂らしたりした。」このくらいでアキシュを騙せるのは信じ難いのですが、「かつての英雄がプライドをかなぐり捨て果たしてこんな演技までするだろうか。」と思わせるくらい鬼気迫った演技だったのでしょう。ダビデはガテから追放されてしまうのです。この脱出劇はこの場を見る限りではダビデの機転のなせる技と思えるのですが決してそうではありません。ペリシテ人に捕縛された時点でダビデは切実な思いを持って瞬間的な祈りをしたのではないでしょうか。その瞬間に思い浮かんだのが「狂人を装う」だったのではないでしょうか。詩篇34編(ダビデの詩。ダビデがアビメレクの前で狂気の人を装い、追放されたときに)を並行して読んでみるとそれが伺えるのです。
地名①ガテ(10):英語Gath;ヘブル語ギャァス[ブドウの果汁を搾るのに使われる圧搾機]・・・ペリシテ人の5つの王都または主要な都市の1つで、ゴリアテの出身都市
=注目人名=人名③アキシュ(10):英語Achish;ヘブル語アヒッシュ[焦がす,炙る,黒ずむ,焙る]・・・ペリシテ人の町ガテの王