サムエル記第一17章-2
サムエル記第一17章-2(12-21節)
=本章の内容=
❷ダビデの遣いとペリシテ連合軍の作戦
=ポイント聖句=16,例のペリシテ人は、四十日間、朝早くと夕暮れに出て来て立ち構えた。
[戦いの経緯②] [4]ダビデが兄たちへの陣中見舞いに戦場に来る =黙想の記録=❷12-21節:ダビデの遣い・・・「ダビデはサウルの道具持ちとなった(16:21)」とあるのならこの戦場にも居ていいはずです。しかし「15,・・・ベツレヘムの父の羊を世話」していたとあることから次の様に考えられるのです。ダビデは竪琴を弾きサウル王の気を静めさせる時だけ呼び出しのある「臨時職の道具持ち」であったと想像されます。12-15節は後からわざと挿入したと思われます。しかし三人の息子はすでに16:6-10で説明されているはずなのになぜまたここで登場させる必要があったのでしょう。想像の域を出ませんが長男・次男・三男のダビデへの嫉妬心があったからではないでしょうか。末っ子のダビデは宮廷勤めをし見た目に華やかな生活を送っているのに自分たちはベツレヘムの田舎で未だにくすぶっているのです。そこで老いた父エッサイに口添えをしてもらい表舞台に無理やり出させてもらったのが裏事情にあったのではないでしょうか。戦場は名を挙げられる大好機だからです。ところが上3人の兄弟がダビデと共に活躍した記事は以降ありません。作者はダビデには相談できる心を許せる兄弟がいなかったことを明記したかったのかもしれません。ダビデの生涯で戦場に送り出したものの心配だったので息子たちの安否確認が目的でエッサイはダビデを遣いに出しました。ダビデはサウル直属の部下です。フリーパスでどこにでも顔を出せるからです。サウル軍とペリシテ連合軍は40日間も膠着状態にありました。これだけ長引けば兵糧は底をつくはずです。ペリシテ連合軍の物資補給は潤沢でした。なぜなら戦場の近くにガテというペリシテ5大都市国家の一つがあり、また西方には物資を容易に送ることができる4つのペリシテの都市国家が控えていたからです。一方サウル軍は物資補給に事欠く場所に陣を置いていたのです。そもそもこんな不便な所に陣を置くのは如何なものでしょう。サウル軍の参謀は何を考えているのでしょう。補給ルートも確保しないまま戦闘を開始するのです。そもそもこの戦争以前にサウルは12部族との連携は取れていたのでしょうか。サウル軍が如何に未熟な状態であったかをペリシテ軍はお見通しだったのです。実はこの40日間の膠着状態こそはペリシテ連合軍の思う壺。始めからの狙い「兵糧攻め」だったのです。サウル軍はまんまとこの罠にかかってしまったと言えるのです。エッサイがダビデに持たせた3人の息子の食材はせいぜいもっても2・3日程度で何の役にも立ちません。ましてや兵の家族に食料補給をさせるなど正規軍ならありえない事です。サウルが最高司令官としての責務を全く果たしていないことを露呈させる表現でもあったのです。エッサイは3人の息子が属している部隊の長に10個のチーズを贈ります。チーズは精製に手間暇がかかるので当時も貴重品です。ダビデが持ち運びできるほどの小さな塊と推測できますから、部隊長への個人的な贈り物で「息子を良しなにお取り扱いください」との気持ちが込められているのでしょう。「18,・・・しるしを持って来なさい。」のしるしは「兵士の髪の毛の束や爪など」のことで戦死していては健全な身体の部分は採取できないからです。エッサイはダビデの務めをここまでと考えていて息子たちのしるしを受け取ればさっさと帰宅すると思っていたのです。「20,・・・彼が野営地に来ると、軍勢はときの声をあげて陣地に向かうところであった。」とありますが、サウル軍の軍勢のときの声が空元気だったと容易に想像できるのです。が、ダビデの好奇心を沸き立たせるのには十分だったようです。
=注目語句=語句①千人隊の長(18):英語;ヘブル語セエル・エリファ[千人の指導者]