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サムエル記第一17章-1

サムエル記第一17章-1(1-11節)
=本章の内容=

❶ペリシテ人の台頭・ゴリアテ登場

=ポイント聖句=

10,そのペリシテ人は言った。「今日、この日、おれがイスラエルの陣を愚弄してやる。一人をよこせ。ひとつ勝負をしようではないか。」

[戦いの経緯①] [1]ペリシテ連合軍の招集。エラ渓谷の南側に陣取る

[2]サウル軍はエラ渓谷の北側に陣取る

[3]ゴリアテの挑発。一騎打ちで決着をつけることを要求

=黙想の記録=

❶1-11節:ペリシテ人の台頭・ゴリヤテ登場・・・サウルがアマレク軍に勝利してからどれくらいの時間が経過したのか何も語られていません。13章でペリシテ軍はサウル・ヨナタン親子によってかなりの深手を負ったはずですが、恐らく約30年後のこの時点で軍事力を再び取り戻したと思われます。イスラエルの情報は逐次伝えられているはずです。サムエルとサウルの関係がギクシャクしていることでイスラエルの国王サウルが精神的に不安定な状態でいることも筒抜けだったことでしょう。ですから今期に乗じてペリシテ連合軍は再攻撃を仕掛けて来たと思われるのです。エフェス・ダミムはその名の通りサウル軍とペリシテ軍が血で血を洗う激しい戦闘が繰り返された場所と思われます。このエフェス・ダミムはエルサレムの南西25kmの場所に位置しダビデの故郷ベツレヘムから西へ山を越えて約20kmの所にあります。エラ渓谷を挟んで両軍が陣取ります。この戦場から西へ5kmのガテには巨人族の末裔が住んでおり、中でもゴリヤテは290cmの背丈もある勇士でした。5-7節で細かく表現されたゴリヤテはかなりの重装備で兜・鎧・胸当て・すね当ての総重量は優に80kgと思われます。これに穂先だけで6.8kgの槍を持ち歩いているのです。なぜこれほどまでにゴリヤテの装束を詳しく描写する必要があったのでしょう。兜・胸当て・すね当てに使われた青銅は加工しやすい合金ですが非常に高価で一般の歩兵が身に着けられるような代物ではありません。また盾持ちが彼の前を歩いていたと書かれているところから、ゴリヤテは一部隊を率いる軍団長または将軍であったと思われるのです。8-10節でゴリヤテはサウル軍を挑発します。挑発の内容は以下の通りです。

[1]イスラエル兵は全て奴隷で兵士ではない。・・・未熟な兵士ばかりである

[2]一騎打ちで勝敗を決めよう・・・自分に適うような兵士はおるまい

一騎討ちとは、戦闘状態にある戦場において戦士同士が一対一を原則として決着をつける戦闘手法ですが、イスラエルの戦闘方法ではありえないことです。ゴリヤテが「サウルの奴隷」と愚弄しているのは、一騎打ちの相手は当然サウル軍の総司令官サウルであることを指名したのも同然です。が同時に「腰抜けのサウルは出て来られまい」とサウル自身を愚弄したものなのです。「11,サウルと全イスラエルは、ペリシテ人のことばを聞き、気をくじかれて非常に恐れた。」とあります。一国の命運が1対1の対戦で決まるのです。サウルには元から一騎打ちに出られるような戦闘能力はおろか戦いに出る勇気さえなかったのがここで露呈してしまう場面です。では勇敢な戦士である息子ヨナタンを登場させればよいのではないでしょうか。14章でヨナタンを断罪してしまった都合サウルは息子を表舞台にしばらく敢えて出さなかったと思われるのです。

=注目語句=

語句①キュビト(4)・・・44.5cm。長さの単位。大体,肘から中指の先までの長さ

語句②シェケル(5)・・・11.4g。重さの単位。胸当ての重さは57kg。(防弾プレートを入れた自衛隊の防弾チョッキの約5倍)槍の穂先は6.8kg。

語句③エパ(17)・・・23ℓ。容量の単位。

=注目地名=

地名①ソコ(1):英語Shochoh;ヘブル語ソホー[茂み、やぶ]・・・ユダの低地の町

地名②アゼカ(1):英語Azekah;ヘブル語アゼカー[掘り下げて]・・・ユダの低地の町

地名③エフェス・ダミム(1):英語Ephesdammim;ヘブル語エフェス・ダミーン[血の境界]・・・エルサレムの南西25kmの場所

地名④エラの谷(2):英語valley of Elah;ヘブル語エメック・エラ[ナラの木の谷]

地名⑤ガテ(4):英語Gath;ヘブル語ギャス[ブドウの果汁を搾るのに使われる圧搾機]・・・ペリシテ人の5つの王都または主要な都市の1つで、ゴリアテの出身都市

=注目人名=

人名①ゴリヤテ(4):英語Goliath;ヘブル語ゴリアトゥ[栄耀、壮麗、栄え、映え、豪壮]・・・身長約290cm。当時はアナクの巨人族の子孫(民数記13:32–33)が生存していたと思われる。