サムエル記第一15章-1

サムエル記第一15章-1(1-9節)
=本章の内容=

❶アマレクを聖絶せよ❷サウルの失態

=ポイント聖句=[/su_la

3,今、行ってアマレクを討ち、そのすべてのものを聖絶しなさい。容赦してはならない。男も女も、幼子も乳飲み子も、牛も羊も、らくだもろばも殺しなさい。
9,サウルとその兵たちは、アガグと、肥えた羊や牛の最も良いもの、子羊とすべての最も良いものを惜しんで、これらを聖絶しようとしなかった。ただ、つまらない値打ちのないものだけを聖絶したのである。

[アマレク人との関わり]
[1]アマレクはエサウの孫(創世記36:12)・・・アマレク人はネゲブの南の砂漠で遊牧民として暮らしていたが次第に武力を強める様になった。強盗と略奪を生活の糧にしている野蛮な種族になっていった。

[2]アマレクとの戦いの始まり(出エジプト17:8-13)・・・侵入してきたイスラエルを一方的に攻撃するも敗戦。

[3]アマレク人への宣告(出エジプト17:14-16)・・・主はモーセに言われた。「このことを文書に書き記して記念とし、また、ヨシュアに読み聞かせよ。『わたしは、アマレクの記憶を天の下から完全にぬぐい去る』と。」(新共同訳)

[4]アマレクとの不毛の戦い(民数記14:39-45)・・・主なる神の警告を無視してイスラエルが攻撃を仕掛けるもイスラエルは敗戦する

[5]モーセがアマレクを聖絶することを厳命(申命記25:17-19)・・・あなたたちがエジプトを出たとき、旅路でアマレクがしたことを思い起こしなさい。彼は道であなたと出会い、あなたが疲れきっているとき、あなたのしんがりにいた落伍者をすべて攻め滅ぼし、神を畏れることがなかった。あなたの神、主があなたに嗣業の土地として得させるために与えられる土地で、あなたの神、主が周囲のすべての敵からあなたを守って安らぎを与えられるとき、忘れずに、アマレクの記憶を天の下からぬぐい去らねばならない。(新共同訳)

[6]士師の時代度々アマレク人の攻撃を受けている(士師記3:13、ギデオンの戦い:士師記6:33、7:12)

=黙想の記録=

❶1-3節:アマレクを聖絶せよ・・・ペリシテ人の戦いはペリシテ人の侵攻がきっかけでした。どうしても防衛しなければならなかった民の要望がありました。13章でサムエルの叱責を受けサウルの王位を剥奪することやサウルの子孫は王位につけないことを宣告されているので、汚名挽回とばかりにサムエルの助言を待たずペリシテ人との戦いを勝手に開始してしまうのです。この戦いの勝因はサウルにはなく息子ヨナタンの功績があったればこそなのです。またこのペリシテ人との戦いでは主なる神様の介入が明らかであったにも拘わらず、サウルは謙遜にそのことを受け止めることができませんでした。サムエルがアマレク人の聖絶を命じたのは、サウルの対する再試験であったと考えられるのです。「アマレク人との関わり」で記述した様にアマレク人はモーセの時代から約200年間も悔い改めの猶予を与えられた来た民族でしたが一向にその様子はなく反ってイスラエルを攻撃し主なる神様に反抗してきました。残念ながらサウルには「アマレク聖絶」の意義は理解されていません。前回のペリシテ人掃討で味を占めた「略奪行為」をアマレク人掃討でもできると感じる程度だったのでしょう。サムエルがサウルに課した再試験は「略奪」ではなく「聖絶」にあるのです。主なる神様が天の軍勢を呼び出せば忽ちアマレクの聖絶は決まります。しかし、神様はサウルに法の執行者としての任務を与え神様に仕える国王としての自覚を促そうとしたのです。
❷4-9節:サウルの失態・・・サウルは兵を招集します。すると21万人もの兵が集まってきます。ここでもサウルは大きなミスを犯しています。それは21万人の兵に対して今回の戦いの意義や戦いのルールを語っていません。それどころか主なる神様に伺いを立てることも忘れています。大祭司や長老たちにも相談はありません。もはや主なる神様の戦いではなく兵の数に頼った略奪戦争をサウルの独断で開始しようとしているのです。サムエルはただただ静観していたようです。恐らくサウルへの手助けを神様から禁じられていたと思われるのです。ケニ人はアマレク人ではありませんが彼らと共存していました。ケニ人の出自と士師記での恩義を返すためでしょうか、聖絶対象から除外します。アマレクの領土ほぼ全域で掃討作戦が展開されました。一説によるとこの時のアガグはヘブル語を話すことができたようです。アガグを生け捕りにし陣営に連れて来たのはサウル流の政治パフォーマンスでしょう。アマレク人を統治する国王が今サウルの前に傅いているのです。民は自ずとサウルの功績を褒めたたえるに違いないと思われたのです。同様に見栄えのする上等の戦利品である羊や牛を連れて来たのも同様のパフォーマンスです。主なる神様の任務を遂行しなかったばかりか自分を際立たせるパフォーマンスに注力するサウルはあまりにも惨めで滑稽な存在でしかありません。

=注目語句=

語句①聖絶(3):英語utterly destroy;ヘブル語へラェーム[捧げる,完全に破壊する,絶滅させる]・・・申命記13:17・ヨシュア記6:18に「聖絶の物には手を出すな。」との規定が明言されている。 サウルの二度目のテストはこの点であった。民族浄化は大量虐殺、強制移住などの手段で特定の民族を殲滅させるという国策の一つで1990年代から使われてきた言葉。聖絶と民族浄化については多くの議論がなされている。聖絶を死刑(極刑)と同一視する考えもある。超えてはならない創造主の規定を犯した者を処罰するという考えのようだ。アマレクがその対象にされたのは第一に出エジプトしたばかりのイスラエルに攻撃を仕掛け略奪の限りを尽くしてきたからであり、第二に彼らの宗教と風俗が野蛮極まりないものであったから。
語句②ケニ人(6):英語Kenites;ヘブル語ケニ・・・この部族は、モーセの舅でミディアンの祭司(出エジプト記3:1)であるイテロが、士師記1:16でケニテ人と呼ばれていることから推測できるようにミディアン人の分派だった。士師記4章では敵将のシセラを殺害したのはケニ人ヤエルでありイスラエルはこの部族に恩義があった。

=注目地名=

地名①テライム(4):英語Telaim;ヘブル語テライム・テリー[子羊]

地名②ハビラ(7):英語Havilah;ヘブル語ハェビラ[円陣]

地名③シュル(7):英語Shur;ヘブル語シュウル[壁]・・・エジプト国境にある場所

=注目人名=

人名①アガグ(8):英語Agag;ヘブル語アガェーグ[私は上に行く]・・・アマレクの国王に対する称号