サムエル記第一14章-2

サムエル記第一14章-2(16-30節)
=本章の内容=
❷ご都合主義のサウルとイスラエル➌蜜を食べるヨナタン
=ポイント聖句=19,サウルが祭司とまだ話している間に、ペリシテ人の陣営の騒動は、ますます大きくなっていった。サウルは祭司に「手を戻しなさい」と言った。
=注目聖句=18,サウルはアヒヤに言った。「神の箱を持って来なさい。」神の箱は、そのころ、イスラエル人の間にあったからである。(新改訳2017版)
18,And Saul said unto Ahiah, Bring hither the ark of God. For the ark of God was at that time with the children of Israel.(KJV)【直訳】そこでサウルはアヒヤに言った、「神の箱をここに持って来なさい」。 なぜなら、神の箱はその時イスラエルの子らと共にあったからです。
18,Then Saul shouted to Ahijah, “Bring the ephod here!” For at that time Ahijah was wearing the ephod in front of the Israelites(NLT)【直訳】そこでサウルはアヒヤに叫んだ、「エホバをここに連れてきなさい」 当時、アヒヤはイスラエルの人々の前でエフォドを身に着けていたからです
※Bringはヘブル語ではナゲーシュで意味は「(人)を連れて来る,引き寄せる」で本来神の箱を「運ぶ」という意味では使われていない。また契約の箱を安置してある場所から安易に持ち出すことは考えずらいことから、NLT訳の様にウリムとトンミムを乗せた「エポデ」を持って来るように命じたものと思われる。民数記27:18-22にあるように出陣の際その指導者を大祭司の前で選出しなければならない。その例に倣いサウルはアヒヤに音頭を取ってもらい今回の指導者が自分で王たる自分であることを公式としたかった。
[事件の推移②] [7]サウルが宗教儀式を中途半端に終わらせる・進撃を始めて開始する [8]ペリシテ軍が同士討ちを行う [9]サウルによる無益な誓いをさせる。兵の疲弊が増す。 [10]ヨナタン一行が森で蜜を食べる。父への非難を口にする =黙想の記録=❷17-23節:ご都合主義のサウルとイスラエル・・・サウルの陣営とペリシテ軍との間は渓谷を挟み直線距離にしておよそ3km。敵が混乱している様子が手に取る様に分かる位置に居ます。ペリシテ軍で起きていたこの恐慌がサウル王に報告された時、サウルは総司令官として部下の誰にも攻撃の指示を与えていません。そこで今回の原因を探ります。小さなイスラエルの軍隊では点呼が呼ばれると誰が行方不明になっているかがすぐにわかりました。点呼を取るとヨナタンと従者のたった二人が抜け出していただけでした。今回も息子ヨナタンの功労だったのです。身内以外の他の将軍だったとすればサウルの人気は下落します。ヨナタンの行動はどこか神懸かり的な所があると察したサウルは、自ら敵地に乗り込む公式指揮官として認めさせるために形ばかりの宗教儀式をアヒヤを呼んで執り行おうとします。ところが戦況が大好転しているのを見ると居ても立っても居られず、こんな茶番の宗教儀式を中断しサウルは戦場に乗り込むのです。ペリシテ軍は同士討ちになってしまうほどの大混乱が起きていました。「21-22,それまでペリシテ軍に徴兵されていたヘブル人も、寝返ってイスラエル側につきました。ついには、山地に隠れていた者まで、ペリシテ人が逃げ出すのを見て、追撃に加わりました。(リビングバイブル)」はイスラエル人のご都合主義を暴露する表現ですが同時にサウル王の心そのものをも表しているのです。「23,その日、主はイスラエルを救われた。」と作者は戦いの記録を一旦締めくくっています。が、この戦いの勝因はヨナタンでもサウルでもなくまたイスラエルでもなく主なる神様にあったことを強調しているかのようです。
➌24-30節:蜜を食べるヨナタン・・・サムエルにやがて王位を剥奪されることを宣言されサウルはかなり焦っていました。サウルは軍隊の疲労困憊の様子を見て、兵たちが食料目当てに奔走しペリシテ軍追撃を投げ出してしまうのではないかとの恐れが出てきました。そこで「24夕方まで、つまり、私が完全に敵に復讐するまで、食べ物を何も口にするな。もし食べる者がいれば、のろわれる。」という誓いを強要するのです。ところがこの誓いの強要が反って敵の追撃中の兵をいよいよ疲弊させ、その様子を見たヨナタンがその誓いを反故にし、その結果かえって兵は律法を破ってまでも食欲を満たす行動に出てしまわせるのです。ペリシテ兵を追撃する途中に伐採されていない密林を通過します。野生のミツバチは石灰岩の岩の裂け目や木々に大量に住み着きます。この場所はまさにミツバチの住みかとしては格好の場所であり、当然滴り落ちるほどの蜜を目にすることができたのです。しかし兵の大半はサウルの誓いを恐れ手を付けようとしません。慌ただしい戦いと追撃の中でヨナタンは父の軽率な誓いについて何も聞いなかったのです。そこでヨナタンは手に持っていた杖の先を蜂の巣に差し入れ蜜をすくい取り口にしました。「27,・・・すると彼の目が輝いた。」とあるようにヨナタンは気力体力を回復できたのです。『28,その時、ヨナタンにだれかが耳打ちしました。「お父上は、今日、食物を口にする者にのろいをおかけになったのですよ。ですから、みんなへとへとに疲れているのです。」(リビングバイブル)』ヨナタンの行動に同行していた兵の一団はどれほど安堵したでしょうか。さらにヨナタンは兵を安心させるために「父の命令を反故にしても良い」と言葉を継ぎます。その場の兵士たちは蜜を食べることができたので律法を犯したことにはならないのです。
=注目地名=地名①ベテ・アベン(23):英語Beth Aven;ヘブル語ベイス・アベイン[虚栄心の家・悪の家・偶像の家]