サムエル記第一14章-1
サムエル記第一14章-1(1-15)
=本章の内容=
❶ヨナタンの活躍とサウルの焦り・
=ポイント聖句=6,ヨナタンは道具持ちの若者に言った。「さあ、この無割礼の者どもの先陣のところへ渡って行こう。おそらく、主がわれわれに味方してくださるだろう。多くの人によっても、少しの人によっても、主がお救いになるのを妨げるものは何もない。」(新改訳2017版)
6ヨナタンは従者に言いました。「さあ、あの主を知らない者たちを攻めよう。主が奇跡を行ってくださるに違いない。主を知らない兵の力など、どれほど大きかろうと、主には物の数ではない。」(リビングバイブル)
※ヨナタンがこのような確信を持てたのは第一に以下の律法に基づいたものです。「あなたがたは敵を追い払い、さんざん打ちのめす。五人で百人を、百人で一万人を追い散らし、敵の息の根を完全に止める。(レビ26:7-8; リビングバイブル)」第二にギデオンの戦い(士師記7:1-25)の前例があったからです。しかし信じるに値する根拠があってもそれを適応する信仰がなければ実行できません。
[事件の推移] [1]ヨナタンが行動を開始する [2]サウルはミグロン(ゲバに直近した場所)に滞留 [3]ヨナタンと道具持ち(最側近の従者)のたった二人で敵地に乗り込む [4]敵地に乗り込むか否かのしるしを求める [5]30人のペリシテ人を撃ち殺す [6]ペリシテ軍の陣営に混乱が広がる =黙想の記録=❶1-15節:ヨナタンの活躍とサウルの焦り・・・ヨナタンは父サウルの内諾も得ず独断でペリシテ人に向かおうとしていました。13・14章でみるヨナタンの行動は一見すると若者特有の猪突猛進の無謀なもの様に見えます。しかし『6,ヨナタンは従者に言いました。「さあ、あの主を知らない者たちを攻めよう。主が奇跡を行ってくださるに違いない。主を知らない兵の力など、どれほど大きかろうと、主には物の数ではない。」(リビングバイブル)』の表現は聖霊が彼の心を押し出し義憤ゆえの冷静な行動をとっていることを感じさせます。ヨナタンの生育過程は明かされていませんが幼少期から青年期までに律法やイスラエルの歴史について多くを学んでいた節が見られるのです。一方サウルはどうでしょう。前回のペリシテ軍攻撃も自ら矢面に立つことをせずヨナタンにさきがけを命じたり、2000人もいたサウルの常備軍を胡散霧消させてしまうほど指導力に欠けていることを露呈しているのです。この姿を見るにつけ、ヨナタンは父サウルの王としての指導力や勇気に欠けていることを感じ取っていたのです。さらに言うならサウルの霊性の低さを見破っていたとも言えます。主なる神様はイスラエルを救うと約束したのですがサウルがその約束を履行する状況にないと見なしたヨナタンは父の代わりに使命を担う責任を痛感していたわけです。大祭司アヒヤが突然挿入されています。「エポデを身に着けていた」との表現は、アヒヤもまたサウル王のお飾りの一つに過ぎないことを揶揄しているかの様です。サウル王に諫言できる人間が誰もいなかったことが分かります。またサウルにとっても信仰は政治に生かすための手段であったのです。「7,・・・何でも、お心のままになさってください。さあ、お進みください。私も一緒に参ります。お心のままに。」ヨナタンの従者の言葉にはヨナタンとこの従者が主従関係以上の固い絆で結ばれていたことが分かります。目指す戦場は断崖絶壁で登りきるのも命がけです。またこうした場所は敵の見張りにも見つかりやすい狙われやすい場所でもあります。命を神様に託すことなしには戦闘が始まらないのです。上りきることも「この戦いが主の御心である」との判断材料になるのです。ところが絶壁を上る前に敵に見つかってしまいます。しかし敵は二人に攻撃を仕掛けません。「11-12,・・・おい、ヘブル人が、隠れていた穴から出て来るぞ。・・・おれたちのところに上って来い。思い知らせてやる。」と二人を馬鹿にして煽るのです。ペリシテ人には完全に油断していたのです。仮にこの二人が相当の武芸者であってもこの断崖絶壁をよじ登れば手足は使い物にならないくらい体力を消耗しているはずだからです。ところが戦闘はあっという間に決着がついてしまったようです。保育園や幼稚園の運動場くらいの場所で見張りをしていた屈強の兵20人をやっつけてしまったのです。この小規模な戦闘がやがてペリシテ人の大群に恐慌をもたらした要因になるのです。これが神様の用いられる戦闘方法なのです。
=注目語句=
語句①無割礼(6):英uncircumcised;ヘブル語アレルォ[割礼を受けていない,ユダヤ人でない]
語句②1ツェメド(14):英語;ヘブル語[]・・・1頭の雄牛が一日で耕すことのできる畑の面積で1エーカー(1200坪)サッカーグラウンド1面分。したがってヨナタンたちはサッカーグラインド半面分の所で戦ったことになる
=注目地名=地名①ミグロン(2):英語Migron;ヘブル語ミグローン[崖]・・・ミクマスの北ギブアの近く
地名②ボツェツ(4):英語Bozez;ヘブル語ボツェツ[際立って白い]・・・ミクマス近くの岩壁
地名③センネ(4):英語Seneh;ヘブル語セネ[不気味]・・・ミクマスへの通路上にある岩壁