サムエル記第一13章-1

サムエル記第一13章-1(1-5節)
=本章の内容=

❶先を行くペリシテ軍

=ポイント聖句=

4,全イスラエルは、「サウルがペリシテ人の守備隊長を打ち殺し、しかも、イスラエルがペリシテ人の恨みを買った」ということを聞いた。兵はギルガルでサウルのもとに呼び集められた。

=注目聖句=

1,サウルは、ある年齢で王となり、二年間だけイスラエルを治めた。(新改訳2017)

1サウルが王位についてから、一年が過ぎました。サウルは治世の二年目に、(リビングバイブル)

1, Saul reigned(支配した) one year; and when he had reigned two years over Israel (KJV)

1, Saul was thirty years old when he became king, and he reigned for forty-two years. (NLT)

※この部分は何を表現したものかは様々な意見に分かれています。しかし在位期間がたったの2年ということは有り得ません。ヨセフスのユダヤ古代誌大6巻にはサムエルの生前18年間・死後22年間合計40年間統治したと記述されているそうです。「それから彼らが王を求めたので、神は彼らにベニヤミン族の人、キシュの子サウルを四十年間与えられました。(使徒13:21)」との記述と符合します。そこで「サウルは第一段階の治世では特に何も起こらなかった。しかし第二段階になるとこの章に記録されている出来事が起こった。」との解釈や「第一段階の治世では純真に主に従い落ち度はなかったが第二段階になるとそうではなかった」との解釈もあります。

[事件の推移] [1]近衛兵3000人の選出:(サウルの陣)ミクマスとべテル(ヨナタンの陣)ギブア

[2]ヨナタンがゲバにいたペリシテ人の守備隊長を打ち殺す

[3]サウルがギルガルでイスラエル兵を招集

[4]ペリシテ人がミクマスに陣を構える。戦車三万、騎兵六千、海辺の砂のごとき兵

[5]怖気ずくイスラエル兵。身の安全確保の為各所に隠れる。

[6]ガドやギルアデに逃亡する者がでる。兵の分散。

[7]サムエルの到着が遅れる。サウルが勝手に全焼のささげ物を献げてしまう。

[8]サウルがサムエルの叱責を受ける

[9]ペリシテ人の陣営から三つの組に分かれて略奪隊が出て来た。

=黙想の記録=

❶1-5節:先を行くペリシテ軍・・・1節の表現には「着目聖句」で説明した様に諸説あるようです。ペリシテ人は壮年期のサムエルの時代に大敗を帰しましたが、サウルの治世の初期の段階までに相当の兵力を回復してきたものと思われます。ペリシテ人は略奪を繰り返し本章後半部分にあるようにイスラエルの各所を制圧し反撃も抵抗もできないような監督下に置いていたようです。3000人の兵はイスラエル最初の常備軍ですが敵に対峙するにはあまりにも貧弱です。ですが、サウルがペリシテ軍攻略のために準備を開始していたとみることができこの常備軍は以降召集されるであろうイスラエル軍の指揮官クラスになる者達であったと推測されます。息子ヨナタンがサウルの実家を守っていたとあることから察すると、散発的なペリシテ人略奪隊の攻撃はあったかもしれませんがサウルの治世の初期段階でサムエル時代の様なペリシテ人の大規模攻勢がなかったと察せられます。ヨナタンがゲバにいたペリシテ人の守備隊長を打ち殺す事件がその後の大規模な戦闘に発展させる原因になった訳ですが、このヨナタンの先制攻撃は父サウルと立てた計画の一端だったのでしょう。ゲバはベニヤミン族の町でしたがペリシテ人に侵略され砦を築かれていたようです。このゲバを奪還する作戦がまずベニヤミン族を奮起させあわよくばイスラエル人全体を鼓舞させるものと思っていたようです。ところが、サウルが全イスラエルに招集かけるずっと前にペリシテ人は戦闘準備を完了し圧倒的な武力をもってイスラエル侵攻を始めようとしていたのです。ところで「戦車三万、騎兵六千」はペリシテ連合軍であったもあまりにも法外な数字です。この「三万」という数字は戦車が30000台あるのではなく、戦車部隊の兵の数と考えられます。戦車も騎兵も持たず当時の近代兵器が何もなかったイスラエル軍にとってはそれでも脅威となります。砦を倒されたことを知ったペリシテ人は激怒し本格的な戦闘に仕掛けてくるのです。ヨナタンの出自の詳細は以降の章でも明らかではありませんが、3人兄弟の長男であり、サウルと異なり若くして軍を指揮するほどの勇猛な軍人であったわけです。ここではサウルがヨナタンの功績をたたえるべきところなのですが「4,全イスラエルは、「サウルがペリシテ人の守備隊長を打ち殺し、しかも、イスラエルがペリシテ人の恨みを買った」ということを聞いた。兵はギルガルでサウルのもとに呼び集められた。」とあるように、ヨナタンの手柄は消されサウルの手柄としてイスラエル全土に触れ回られるのです。ダビデが手柄を立てた時もサウルはそれをひどく気にしていました。この行動はサウルの高慢の萌芽とも言える個所なのです。

=注目語句=

語句①一ピム(21):英語;ヘブル語 []・・・(約7グラム:一シェケルの約半分)

=注目地名=

地名①ミクマス(2):英語Michmash;ヘブル語ミクマース[隠れた]・・・ラマの近くエルサレムの北約16kmにあるベニヤミン族の町

地名②ゲバ(3):英語Geba;ヘブル語ギェバー[丘]・・・エルサレムの北東10キロギブアから北5キロの階段状丘の頂上にあるベンヤミンの町

地名③ベテ・アベン(5):英語Bethaven;ヘブル語ベイスアベイン[虚栄心の町]・・・べテルの西方

=注目人名=

人名①ヨナタン(2):英語Jonathan;ヘブル語ヨナサーン[エホバが与えた]