サムエル記第一9章-1

サムエル記第一9章-1
=本章の内容=
❶キシュの子サウル
=ポイント聖句=2,キシュには一人の息子がいて、その名をサウルといった。彼は美しい若者で、イスラエル人の中で彼より美しい者はいなかった。彼は民のだれよりも、肩から上だけ高かった。
7,サウルはしもべに言った。「もし行くとすると、その人に何を持って行こうか。私たちの袋には、パンもなくなったし、神の人に持って行く贈り物もない。何かあるか。」
=黙想の記録=❶1-10節:キシュの子サウル・・・この部分はサウルの出自とロバ失踪事件が記述されています。この短い文章からサウルの国王としての資質の欠如や霊性の低さばかりが目についてしまうのです。
[1]サウルの出自:五代(キシュ<<アビエル[神はわが父]<<ツェロル[包]<<ベコラテ[初子]<<アフィアハ[呼吸するようになる])にわたる家系が記載されています。この家系は特筆すべき歴史を持ってはいません。ですが家系図を持っているということはそれだけ由緒正しい家柄で地域における権力を保持し影響力のあることを表現しています。「サウル」の名前は「願望された,待望の,望ましい」とあるように父キシュにとっては家督を継げるたった一人の待望の息子だったのです。ところがサムエルの乳幼児期のように母からの信仰継承の話題もなければ、彼自身の信仰や御言葉の知識や性格については一切触れられていません。そればかりか「2,・・・彼は美しい若者で、イスラエル人の中で彼より美しい者はいなかった。彼は民のだれよりも、肩から上だけ高かった。」とあるようの人々の関心は彼の霊性にはなく際立った容姿にあったのです。つまりサウルは始めからイスラエルを主なる神に向かわせる指導者としての資質に欠けた人物だったわけです。この記述の仕方はまたサムエルとサウルの対比の個所とも言えます。サムエルが主なる神様に召命を受けたのは、母ハンナの祈りを通してでした。ハンナの信仰的な選択と歩み方がサムエルの内面の美しさを作り出したと言えます。主なる神様は「王の規定(申命記17:14-20)」で御言葉に造詣が深い人物を選択する様に命じているのですが、サウルの家系には信仰の臭いすらしないのです。 [2]雌ロバ失踪事件・・・「父キシュの数頭の雌ろば」を探しに動き回った記述から彼の管理能力あるいは勤労意欲の低さが伺えてしまうのです。雌ろばは運搬の道具として重要ですが子供を産む意味では雄ろばより貴重な存在です。父のロバが逃げ出すのを指をくわえてただ傍観していたとするなら跡継ぎとしての資質にも欠けているのです。父に命じられる前に何故率先して探そうとしなかったのでしょうか。また行方不明のロバを探す方法はいくらでもあったことでしょう。その道の達人にでも聞けば容易に探すことはできたでしょうに。推測ですがサウルにはその人脈もなかったのでしょう。この点で言えばダビデとは好対照の人物だったわけです。後にサウルが探したロバはサウルに関係なく家に戻っているのです。疑えばキリがありませんが、サウルは本当にロバを探す気があったのでしょうか。『5,・・・「さあ、もう帰ろう。父が雌ろばのことはさておき、私たちのほうを心配し始めるといけないから。」』とサウルはロバの捜索をあっさり断念しますが、この時の言い訳も何事にも情熱を持っていないサウルの情けない一面を感じさせるのです。「野獣に襲われるかもしれない。あるいは盗人に奪われるかもしれない。」というロバに対する思い入れの一かけらも感じさせないのです。臣民をとことん愛し寄り添うことのない国王として映ってしまうのです。 [3]サムエルを探す・・・6-10節のサウルと彼のしもべとの短いやり取りからもサウルの霊性の低さが露呈してしまっています。未来の国王がイスラエルを薫陶指導してきた預言者サムエルの存在を全くしらなかったのです。サムエル居住地はサウルの実家から近く(推定4km)、若いしもべでさえもその存在を知っているのです。サウルもまた様々な人生の試練に遭遇しているはずなのにその過程で一度も主なる神様に助けを求めることをして来なかったことも露呈しているのです。「主なる神様の御心を知り、また種々の問題に際し伺いを立て助けを求める習慣」が彼にも一族にもなかったのです。『7,サウルはしもべに言った。「もし行くとすると、その人に何を持って行こうか。私たちの袋には、パンもなくなったし、神の人に持って行く贈り物もない。何かあるか。」』とあるように、さらに始末に負えないのは預言者の言葉をこともあろうに金品で買おうとしたことです。サムエルに会った時サウルは何も要求されていません。これでは預言者を占い師と同等に扱っているのと同じです。何故主なる神様はこうした人物を選ばれたのでしょうか。ここにちりに等しい私達を選び基督者とした神様の深いご自愛を感じざるを得ないのです。 [su_label type="black"]=注目語句=[/su_label] 語句①雌ろば(3):英語asses;ヘブル語アソーン[ろば] 語句②予見者(9):英語Prophet(預言者・先見者);ヘブル語ナビ―[預言者] [su_label type="black"]=注目地名=[/su_label] 地名①シャリシャ(4):英語Shalisha;ヘブル語シャリシャー[3番目] 地名②シャアリム(4):英語Shalim;ヘブル語シャアリーム[きつね] 地名③ツフ(5):英語Zuph;ヘブル語ツファ[蜂の巣]・・・ツフはサムエルの先祖に当たる人物の名前でラマという地域にいたことになる [su_label type="black"]=注目人名=[/su_label] 人名①キシュ(1):英語Kish;ヘブル語キーシュ[曲がった、湾曲した 熱中している] 人名②サウル(2):英語Saul;ヘブル語シャウール[願望された,待望の,望ましい]