サムエル記第一8章-1

サムエル記第一8章-1
=本章の内容=
❶サムエルの子達とイスラエルの願い(8:1-6)
=ポイント聖句=6,彼らが、「私たちをさばく王を私たちに与えてください」と言ったとき、そのことばはサムエルの目には悪しきことであった。それでサムエルは主に祈った。
=黙想の記録=【イスラエルの王政】・・・「5,・・・ほかのすべての国民のように、私たちをさばく王を立ててください。」とありますが、「王を立てる」政治体制は大きく二種類あります。「絶対王政と専制君主制」です。「絶対王政」とは王朝(王家)を中心とする官僚機構が強大な権力を集め国を統治する政治体制です。官僚機構には身内を登用したり、武力や財力のある有力な人物が重要なポストを握っています。「専制君主制」とは国王「個人」に強大な権力が集中し、国を治める政治体制のことです。長老たちが願っていたのは12部族を束ねる「絶対王政」で長老たちも口を出せる機構だったのです。ところが実際は官僚機構も口を出せない専制君主制にすぐに移行してしまうのです。
=黙想の記録=
❶1-6節:サムエルの子達とイスラエルの願い・・・大祭司はアロンの子エルアザルの家系の者で、その最年長者が世襲で継承することになっています。ですからサムエルも二人の子も大祭司ではありません。サムエル自身は預言者という立場です。サムエルが指名したのかそれとも子供たちの希望だったかは定かではありませんが、サムエルの指導の届かない辺境のベエル・シェバが二人のさばきつかさとしての赴任地でした。サムエルは、自分の子供たちを誰よりもよく知っていたはずです。主なる神様も彼らが「正しい信仰の道を歩んでいない」ことを知っていたでしょう。「3しかし彼らには、父のような高潔さが欠けていました。金に目がくらんでわいろを取り、公平であるべき裁きを曲げていました。(リビングバイブル)」二人の子供は与えられた権限を他者の幸福の為に用いず世俗の欲を追求する為の道具としてしまったのです。サムエルは子供達を主のしもべとして教育できなかったのです。さらに預言者やさばきつかさが自分の子供を後継者に任命した事例はありません。世襲制は王朝を作り上げる行為と同様なのです。王朝を作り出すことは主なる神様の御心ではありません。壮年のサムエルならまた問題の無い家庭生活を送っていれば、長老たちの申し出を一蹴することができたはずです。イスラエルの長老たちがイスラエルに国王擁立を要求して来たのは、サムエルの家庭にほころびが見えるこの時だったのです。人の弱みに付け込んで要求するのは悪魔の手法です。ヨシュアの時代にも士師の時代にも主なる神様は何度も何度も戦いの矢面に立ってくださっていたのです。主なる神様こそイスラエルを統治される王であったのです。国家の危機が訪れたなら神様に求めて訴えて解決を図ることができたはずです。『すると、民は言いました。「私たちが主を捨てて、ほかの神々を拝むなどありえないことです。私たちの神、主は、エジプトで奴隷だった先祖を救い出してくださったお方ではありませんか。そして、荒野を旅する間にも、私たちの目の前で数々のくすしいわざを見せてくださったお方です。また、敵地を進む私たちを、いつも守ってくださいました。エモリ人をはじめ、この地の全住民を追い出してくださったのも主です。もちろん、私たちは主に従う道を選びます。私たちにとって、神様は主おひとりだけですから。」(リビングバイブルヨシュア24:16-18)』のヨシュアの前で誓った宣誓は200年後には見事に反故にしてしまうのです。長老たちはサムエルと共に主なる神様にイスラエルの今後について御心を求めるべきです。それができなかったのはサムエルの宗教改革が徹底していなかった証拠です。以前のイスラエルは12部族が自治権をもってそれぞれが独自の政治体制を持っていました。ところが士師時代からの外敵(ペリシテ人等)の巨大な圧迫に対し12部族のそれぞれが対応できなくなってきたのです。12部族の長老たちからすれば・・・。確かにサムエルはイスラエルを主なる神様の前に一つとすることができた指導者です。しかし各部族の長老たちには他国の様に「富国強兵」政策を何一つ実行していないと見えたのです。さらに「外敵に対峙する際に生贄を献げるなどの宗教行事を行うだけで解決するサムエルの方法はあまりにも心許ない。」と見えていたのです。彼らが見ていたのはサムエルと言う人物であり、イスラエルの歴史に介入されてきた主なる神様ではなかったのです。サムエルにはこの長老たちが荒野時代にモーセに逆らったコラの子達の様に思えたことでしょう。サムエルはこの窮地を迎えた時に怒りに任せて行動することなく主なる神様に祈り求めました。
※現代教会も本章に登場する長老たち同様の態度を取ってはいないでしょうか。教会の繁栄は誰の為でしょうか。動機はどこにあるのでしょうか。教会は「富国強兵」を必要としません。
人名①ヨエル(2):英語Joel;ヘブル語ヨエイール[エホバは神である]
人名②アビヤ(2):英語Abiah;ヘブル語アビヤァ[エホバはわが父である] =注目地名=
地名①ベエル・シェバ(2) :英語Beersheba;ヘブル語べイェール・シェバ[七重の誓いの井戸]・・・ラマから直線距離で約120km
=注目語句=語句①さばきつかさ(2) :英語judges;ヘブル語シャフェットゥ[裁判官・知事]・・・法律や裁判官や知事を務め地域を統治する