サムエル記第一6章-1

サムエル記第一6章-1(6:1-11)
=本章の内容=
❶宗教指導者の巧妙な言い訳
=ポイント聖句=「9,注意して見ていなさい。その箱がその国境への道をベテ・シェメシュに上って行くなら、私たちにこの大きなわざわいを起こしたのはあの神です。もし行かないなら、神の手が私たちを打ったのではなく、私たちに偶然起こったことだと分かります。」
[神の箱の移動先と事件(2)]
[1]エクロン・・・主の箱の処遇について会議を開く
[2]エクロン・・・主の箱を牛車の載せベテ・シェメシュに向かう街道で解き放つ
[3]ベテ・シェメシュ・・・牛車到着。牛車の雌牛を全焼のささげ物として主に献げた。
[4]ベテ・シェメシュ・・・主の箱を覗いた為に70人が即死する。
[5] ベテ・シェメシュ・・・キルヤテ・エアリムの住民に主の箱の引き取りを要請した
❶1-11節:宗教指導者の巧妙な言い訳・・・・イスラエルの神の箱を奪取しペリシテに持ち運んだことに罪悪感を覚え、償いを添えてイスラエルに返す決定を下しました。「5,あなたがたの腫物の像、つまり、この地を破滅させようとしているねずみの像を造り、・・・」と提案していることから今回の疫病はネズミを介したペストの蔓延(ペストについてを参照)と思われます。ペリシテ人はエジプトやメソポタミアとの交流も多くその為衛生観念は極めて低く、このためこうした感染症は短時間で蔓延したものと思われます。これに対し極めて食物規定の厳しいイスラエル人にはペストの感染が当時見られなかったのは当然と言えます。しかし、ペリシテ人が練りに練った策は疫病の症状である腫物やネズミの偶像を金で作って神の箱に添えてみるという大変お粗末なものでした。疫病が主なる神様のペリシテ人への裁きであると理解していたのなら、主なる神様になぜ救いを求めることをしなかったのでしょう。エジプトで災いを引き起こしたのが主なる神様だったと知っていながらなぜ救いを求めることをしなかったのでしょう。それは「2,ペリシテ人は祭司たちと占い師たちを呼び寄せ」とあるように、邪悪な人が介在していたからなのです。主なる神様を信奉するようになってしまったら彼らの商売上がったりなのです。既得権が奪われるからなのです。邪悪な指導者によってペリシテ人は悔い改めの機会を失してしまったといえるのです。「9,注意して見ていなさい。その箱がその国境への道をベテ・シェメシュに上って行くなら、私たちにこの大きなわざわいを起こしたのはあの神です。もし行かないなら、神の手が私たちを打ったのではなく、私たちに偶然起こったことだと分かります。」とありますが、邪悪な指導者の巧妙な言い訳です。つまり「ベテ・シェメシュに牛が向かうならイスラエルの神が元凶で、向わないのなら疫病は偶然発生したもので我々が信奉する神々が引き起こしたのではない。」と、あくまでも自分たちが信奉する神々の責任ではないと責任逃れをしているのです。ペリシテ人にとって「神とは災いを引き起こす人間にとって不都合な存在」であり、「慈愛に富む養父としての神」などでは決してあり得ないのです。しかし暗黒の士師時代から本章に至るまでのイスラエル人にとっても「主なる神様」はペリシテ人の神々と同レベルだったのです。数千年経過した現代でも神に対する概念は一向に進歩していません。年明け三が日に寺社詣でをする日本人の数は約9000万人。そして最大関心事は「無病息災」です。「神仏のいかにおわす」かには関心が無いのです。あくまでも人間の都合に合わせた神々で十分なのです。それ以上深入りはしたくないのです。
【参考資料】ペストについて ペストはペスト菌による感染症で、ヨーロッパで大流行が繰り返され、皮膚が黒くなって亡くなるため、「黒死病」として恐れられてきました。現代では抗生物質のおかげで治療できる病気ですが、地域での流行がみられる国があり、毎年2,000人程度の患者が報告されています。感染したノミに咬まれることによって人へうつります。ペスト菌を持つノミは、ネズミによって運ばれます。また、肺に感染すると患者の咳によって、容易に人から人へとうつります。最も多いのが、ノミに咬まれた場所に関係したリンパ節に感染が起こり、腫れと痛みをきたす症状です。その後、高熱や皮膚に出血をともなう発疹がみられ、治療しないと高率で死亡します。肺への感染が起こると、発熱、咳、痰など肺炎の症状が出現します。人への感染力が強く、放置すると100%死亡します。また、血液中にペスト菌がばらまかれ、ショックをきたし、死亡する状態が10%程度にみられます。 =注目地名=地名①ベテ・シェメシュ(9):英語Bethshemesh;ヘブル語べイスシェメシュ[太陽の寺院]・・・南ユダの町
地名②キルヤテ・エアリム(21):英語Kirjathjearim;ヘブル語キリヤ―[森林都市]・・・ユダ北部とベニヤミン南西部の境界にある町