サムエル記第一5章

サムエル記第一5章
=本章の内容=

❶神の箱を奪ったペリシテ人

=ポイント聖句=

4,次の日、朝早く彼らが起きて見ると、やはり、ダゴンは主の箱の前に、地にうつぶせになって倒れていた。ダゴンの頭と両手は切り離されて敷居のところにあり、胴体だけがそこに残っていた。

=注目聖句= 4,・・・ダゴンは主の箱の前に、地にうつぶせになって倒れていた。(新改訳2017)

4,・・・ダゴンの像は神の箱の前にうつぶせに倒れ(リビングバイブル)

4,・・・Dagon was fallen upon his face to the ground before the ark of the LORD(KJV)

4,・・・Dagon had fallen face down before the Ark of the LORD(NLT)

※ダゴンはただ倒れていたわけではなく、神の箱に向かって顔を伏せ身体全体を地につけていた。これは仏教でいう五体投地と同様で、両手・両膝・額(五体)を地面に投げ伏して礼拝する姿勢。ダゴンは下半身が魚なので足はないが

[神の箱の移動先と事件(1)] [1]アシュドデ・・・ダゴンが倒れていた。ダゴンが破壊されていた。アシュドデとその地域の人たちに奇病(腫物ができる)で死者が多数出る。ペリシテの領主を集め移動先を決める。

[2]ガテ・・・奇病(腫物ができる) で死者が多数出る。

[3]エクロン・・・奇病(腫物ができる) で死者が多数出る。ペリシテの領主を集めイスラエルに送り返すことを決定。

=黙想の記録=

❶1-5節:ダゴンの礼拝・・・神の箱によって翻弄されるペリシテ人について書かれた章です。ペリシテ人は神の箱をダゴンの神殿に運びこみます。イスラエルに対する勝利を国内外にアピールするためでした。「3-4,アシュドデの人たちが、翌日、朝早く起きて見ると、なんと、ダゴンは主の箱の前に、地にうつぶせになって倒れていた。次の日、朝早く彼らが起きて見ると、やはり、ダゴンは主の箱の前に、地にうつぶせになって倒れていた。ダゴンの頭と両手は切り離されて敷居のところにあり、胴体だけがそこに残っていた。」とあります。英語では「顔を地面につけ」とあり「地にうつぶせる」という姿勢は明らかに「礼拝の姿勢」です。その礼拝の先には契約の箱が安置されていたのです。二度目は他の建築物に被害はなくただ「ダゴンの頭と両手は切り離されて」いたのですから、地震の様な自然災害で倒壊したのではないと理解するべきだったのです。衆人が見ているところで何者かによって意図的に頭と両手が切り分けられていたのです。超自然的な力つまりイスラエル人の信奉する主なる神様以外にこのようなことはできないのです。二度も同じことが起きたのですから気づいてもよいのですが。霊的に死んでいる国民ですからこの事件の意味するところが読み取れなかったのです。

❷6-12節:事件はそれだけではすみません。アシュドデ・ガテ・エクロンのペリシテの諸国に大きな災いをもたらします。死を伴う疫病(腫物)が神の箱の移動先に次々と襲うのです。腫物ができる疫病は出エジプト記9章にある第六番目の災いに似ています。出エジプトでは撒かれたすすが原因でしたが死者は出ていません。ところがペリシテの主要都市で起こった奇病では死者が多数出ています。原因は明らかに神の箱を軽視した結果です。また黙示録の世界では、獣の刻印を受けその像を拝む民に悪性の腫物ができ人々を苦しませます。(黙示録16:2)。腫物の災いには一定の規則性が見いだせます。それは、主なる神様に敵対する国民がイスラエルを苦しめる時に報復として行われる裁きなのです。ところが出エジプト記もサムエル記本章もまた将来の人々もこの災いの原因を探ることさへしていないことが発見できます。本当の神様に対する悔い改めが決して起こりません。彼らのしたことは何れも災いを自分から遠ざけることだけでした。「12,死ななかった者は腫物で打たれ、助けを求める町の叫び声は天にまで上った。」の表現は10番目の災いに見舞われたエジプトの住民の様子(出エジプト12:30)に酷似しています。腫物を伴う疫病やこの聖句の表現は作者が出エジプト記を参照していることが伺えるのです。つまりサムエル記上巻は第二の出エジプト記として位置付けたかったのではないでしょうか。

=注目語句=

語句①ダゴン(1):英語Dagon;ヘブル語ダゴーン[魚]・・・多産のペリシテ人の神。男性の顔と手と魚の尾で表される

=注目地名=

地名①アシュドデ(3):英語Ashdod.;ヘブル語アシュドッド[強力な]・・・エルサレム西方にある地中海の主要なペリシテ人都市

地名②ガテ(8):英語Gath;ヘブル語ギャース[ブドウ搾りの桶]・・・ペリシテ人の5つの王都または主要な都市の1つで、ゴリアテの出身都市

地名③エクロン(10):英語Ekron;ヘブル語エクロン[移住・根こそぎ引き裂かれて]・・・ペリシテ人の5つの主要都市の中で最も北にあり、ユダの低地に位置し、後にダンに与えられた