サムエル記第一2章-1

サムエル記第一2章-1(1-10節)
=本章の内容=

❶ハンナの歌

=ポイント聖句=

10,主は、はむかう者を打ち砕き、その者に天から雷鳴を響かせられます。主は地の果ての果てまでさばかれます。主が、ご自分の王に力を与え、主に油注がれた者の角を高く上げてくださいますように。」

=黙想の記録= [ハンナの歌を巡る議論] ・ハンナの歌の中で10節は議論される個所です。「主が、ご自分の王に力を与え、主に油注がれた者の角を高く上げてくださいますように。」で、イスラエルの王が出現する前に「王」について触れています。この点でこの歌はハンナの作ではないとの説をとる方々が居ます。この説ではハンナの時代から500年後、捕囚帰還時代以降の編集者がハンナの言葉として創作したものと考えています。しかし申命記17:14-20にはすでに「イスラエルの王」についてモーセ自身が言及しています。王が擁立されていない時代の記述です。ハンナはこの聖書箇所を熟知しているはずです。ですからこの個所をハンナの預言的洞察と見ても不自然ではありません。ハンナが自分の息子サムエルの活躍により王朝時代の幕開けが起きようとしていることを預言的に語ったとも説明できます。後者の説を取るとハンナが如何に聖書に造詣が深かったかを読み取ることができるのです。

❶1-10節:ハンナの歌・・・ハンナはひとり息子を手放したばかりです。そんな状況下にあれば世の母親なら悲嘆に暮れる日々を過ごすことでしょう。しかし彼女は晴れやかに神様への賛美の歌を歌うのです。主なる神様に我が子を託すことが我が子にとってもハンナ自身にとっても最善の策であると確信しているからにほかなりません。ハンナの歌の内容を確認します。

[1]1節:ハンナ自身の状況・・・「角を高くする」とは「敵に勝利する」「栄光を取り戻す」「名誉を回復される」ことを意味しています(詩編75:10,112:9,148:14)。「敵(1)」とはぺニンナと特定するとぺニンナによって貶められた居た状態から回復し名誉を取り戻したことを表現するものと言えますが、この歌を預言と捉えることもできます。つまり士師記に記録されている「イスラエルの霊的腐敗・亡国」の時代から「霊的覚醒・国家の威信を取り戻す」時代がやって来るという預言と見ることもできるのです。

[2]2-3節:主なる神様について・・・主なる神様を「聖なる方・岩の様に不動な方・全知全能の神」として表現しています。士師時代のイスラエルはあらゆる不道徳を蔓延させ、他国の侵略に揺れ動き、未来に希望を抱くことができない状態でしたが、新たな状態が訪れることを預言しているところです。

[3]4-9節:両極の者について・・・この個所はぺニンナの所業とハンナの苦悩という両極端が入れ替わる様子を表現したものととれます。霊的不毛・亡国状態のイスラエルは、主なる神様に対して思い上がり・尊大な振舞をしてきた(3)ことで、貧しくなり・飢餓状態になり・ちりや灰の中を這いつくばり・暗闇の中を歩むしかなかった(5,8,9)のです。しかし今からの地は霊的不毛亡国の時代が終わりを告げ、主なる神様を「信仰する(9)」する健全で力のあるイスラエルとして生まれ変わるという預言なのです。

[4]10節:王国の到来預言・・・この節はサムエルが導くことになる霊的覚醒したイスラエルとそこに立てられる油注がれた者つまり国王のことを預言したものです。しかしハンナ自身にも理解できなかった遥か未来のメシヤについての預言が隠されていると思われるのです。

=注目語句=

語句①角(1):英語horn;ヘブル語クェレン[角]・・・角笛(ラッパ)として用いられた(ヨシュア6:4)。動物が角を攻撃や防御する為の道具として用いる様子から、力と支配、栄光と激しい力の象徴として用いる言葉である。

=注目地名=