ソロモンの裁きの意図するもの

なるほどTheBible2024/05/22
=ソロモンの裁きの意図するもの=
Q:一国の王が遊女の為に裁判をすることなどあるのでしょうか?
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[参考聖書箇所] 列王記第二3章
24-25,王が「剣をここに持って来なさい」と言ったので、剣が王の前に差し出された。王は言った。「生きている子を二つに切り分け、半分をこちらに、もう半分をそちらに与えよ。
26,すると生きている子の母親は、自分の子を哀れに思って胸が熱くなり、王に申し立てて言った。「わが君、お願いです。どうか、その生きている子をあの女にお与えください。決してその子を殺さないでください。」しかしもう一人の女は、「それを私のものにも、あなたのものにもしないで、断ち切ってください」と言った。
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A:結論から言うと「NO」です。この個所で使われている「遊女」は本来「異国人の女性」を表す言葉です。列王記の作者エレミヤがイスラエル人と婚姻関係をもった「異国人の女性」のことをわざと「遊女」と記録したのです。イスラエルが北王国も南王国が滅んでしまったそもそもの要因はソロモンの異国人との婚姻にあったことを批判した個所がこの個所なのです。
●そもそもなぜこんな末端の民事裁判をソロモンが引き受けたのか疑問に思えませんか。しかも登場する二人の女性はこともあろうに遊女(売春婦)なのです。律法は遊女の存在を認めていません。(レビ記19:29)。なのでこんな公の場所に遊女が自分の権利を主張するために法廷を開ける筈がありません。この二人が同じ家に住んでいるとの記述から、場合によると裕福なイスラエル人が娶っていた異国人の妻であった可能性があります。場合によるとソロモン同様エジプト人の女性だったかもしれません。つまり、ソロモンはエジプトのファラオの娘を娶ったことを正当化するために、自分の臣下にもエジプト人や異国の女性を娶らせていたかもしれないのです。この二人の女性を裕福なイスラエル人の異国人の妻と仮定して話を進めると以下のようになります。この二人はちょうどヤコブに嫁いだレアとラケルのように競って子供を持とうとしていたと思われるのです。子供をより多く持つことが夫の寵愛を受ける証となります。仮にその子供が長男であれば長子の権を我が子のものとでき将来生母として権利を行使できるのです。となるとこの事件は彼女たちにとって重大事となるのです。「18,私が子を産んで三日たつと、この女も子を産みました。家には私たちのほか、だれも一緒にいた者はなく、私たち二人だけが家にいました。」との訴えにあるのは誕生の順番です。つまり長子の件は我が子にあるとの意味が舌下に含まれているのです。訴えを起こした最初の女性(A)は、三日の後に子供を産んだ女性(B)は不慮の事故か病気が原因で我が子が死んだので、女性Aの子供と取り違えたとの内容をソロモンに裁いて欲しいとのことなのです。日々富国強兵で頭がいっぱいのソロモンがこんな低レベルの係争にかかわるくらいですから、この訴えを起こした女性も訴えられた女性も異国の王女レベルだったのではないでしょうか。ですから下級裁判官に任せることができなかったのではないでしょうか。物語に戻りますが、双方とも生きている子供が自分の子供であると主張して平行線をたどります。すると『24-25, だれか、刀を持って来なさい。」刀を受け取った王は、こう言いました。「生きている赤ん坊を真っ二つにして、半分ずつ分けてやりなさい。」』と、ソロモンはとても残酷な裁定を下します。この切り分けて等分する裁定は、律法で規定されている家畜における紛争の解決方法なのです。「牛がほかの人の牛を傷つけて死なせた場合は、生きているほうの牛を売り、その代金と死んだ牛を、双方の持ち主が半分ずつ分ける。(出エジプト記21:35)リビングバイブル」。ソロモンの冷酷極まりない裁定に二人の母親は一瞬身震いしたはずです。ところが赤子の本当の母親はこの非情なソロモンの裁定に怯まずに子供の延命を必死で訴えるのです。純真無垢な赤子を家畜扱いする国王です。一旦決定したソロモン王の裁定を覆そうとするのは、国王の逆鱗に触れ母親も切り殺される可能性もあるのですが自分の命に代えても必死に延命を訴えるのです。一方赤子の命を取ってしまえば長子の権など発生しないのは分かりきっているはずなのに女性Aは「「それを私のものにも、あなたのものにもしないで、断ち切ってください」と主張するのです。いったいどうしてこんなことを言うのでしょう。女性Aはソロモン王は自分の厳命した裁定を絶対に覆さないと確信し諦めてしまったのです。しかし訴えた建前上ソロモン王の裁定を受け入れるのが得策と感じたのです。国王の裁定にけちをつければ国王の逆鱗に触れ今度は自分の命を取りかねないからです。そこでソロモンは二人の反応を見た後で赤子の本当の母親が誰なのかを告げるのです。確か並外れたソロモンの洞察力の高さを感じさせる名裁きに違いありません。しかし別の見方をすれば3章冒頭にある異国人ファラオの娘を娶ったことでイスラエル全土に異国人との混血が次々に誕生することを予感させるものでもあるのです。決してソロモンを褒め称えている文章とは思えなくなってくるのです。