列王記第一10章-2

列王記第一10章-2(14-25節)
=本章の内容=
❷666タラントの金➌ソロモンに朝貢する国々
=ポイント聖句=
14,一年間にソロモンのところに入って来た金の重さは、金の目方で六百六十六タラントであった。
24,全世界は、神がソロモンの心に授けられた知恵を聞こうとして、彼に謁見を求めた。
=黙想の記録=❷14-21節:ソロモンが手に入れることのできた金は毎年666キッカル(22644kg)。現在の日本の金相場で言えば約353億円となります。さらにタルシュシュ港から入って来る地中海貿易により更に金が運ばれて来るのです。この金は他国との貿易に欠かすことのできない資金となりますが、18-21節にあるようにソロモンは宮殿の玉座を飾る家具すべてに金箔を貼り付けています。挿絵にあるのは玉座のある部屋の様子です。また金で大盾200個と盾300個を作り「レバノンの森の宮殿」とよばれる客間に飾りとしました。666キッカルの666はヘブル語でシェイシですが、黙示録13:16-18に記載されている「獣の数字」と同じです。終末時代の獣が経済を牛耳っていた様にソロモンもまた当時のイスラエルをその富によって経済的にも精神的にも思うがままに操ることができていたのです。つまり栄華を極めたソロモンは終末時代のこの世の君サタンの原型だったのです。
➌22-25節:ソロモンはヒラムの船団のほかにタルシシュの船団を保有していました。ソロモン帝国の様子はそのまま終末時代の獣が統治する世界の様子を預言しているかのようです。「24,全世界は、神がソロモンの心に授けられた知恵を聞こうとして、彼に謁見を求めた。」とありますが、前日した様に近隣諸国はソロモン帝国の朝貢国になるために進んでエルサレムに上って来たということです。ソロモンは戦争を仕掛け他国を征服していく政策をとっていないのです。現代でも経済を操る者が世界を支配するのと同様です。経済活動によっていつのまにか人々を上手に誘導し、「欲望の赴くままに生きる生き方」の方が「神を恐れる慎ましく生きる生き方」に勝るということを肯定させていくのです。全世界の人々はもちろん、かつて神を恐れ神にのみ仕えていたイスラエルの人々でさへも「ソロモンの生き方こそ本物の生き方」つまり「財産があればこの世の全ての幸せをわが身に引き寄せることができる」という生き方に憧憬を抱いて行くのです。ソロモンはソロモンの生き方を教育したり強制したりしていません。「人々の欲望を掻き立てソロモンの生き方に倣わせる」、これこそがこの世の君の人々を支配する方法なのです。この様子は黙示録13章に登場する獣とそれに平伏する全知の人々に酷似していいると思えませんか。蛇足になりますが「222,・・・猿、孔雀を運んで来た」とありますが、これは現代で言う愛玩動物(ペット)のことです。ペットを飼うことはソロモン帝国の王室の人間だけでなく、イスラエル全土、果てはこれらのペットが輸出された先の「裕福な人々のステイタス」となっていたことでしょう。
語句①六百六十六タラント(14):英語666(ESV・NASB95);ヘブル語シェイシ・キッカル・・・666キッカルは22,644kg(34kg×666キッカル)現在金は1gで約15600円なので単純計算すると約353億円。
語句②レバノンの森の宮殿(17)・・・【Ⅰ列王記7章-1からの再掲】[長さ]44.4m×[幅]22.2m×[高さ]13.32mの規模は約300坪で日本の一般的な住宅は50坪ですから6軒分に相当します。また日本のマンションの1階分の高さは3mですから3階分に相当します。日本の重量鉄骨または鉄筋コンクリート造のマンション建設で言うと約8億円の建設費がかかります。レバノンから取り寄せた合計45本の杉の柱が3列に並んでいました。これほどの数の大きな杉材に囲まれた部屋は正に森の中にいるような感覚を作り出すソロモンの演出です。レバノンの森の宮殿には金箔で覆われた木製の大盾(200個)と小盾(300個)が置いてあったとあります(Ⅰ列王記10:16-17)。金の盾をもって戦いに挑むのは実用的とは到底思えません。45本もある柱や壁に吊り下げられていたと想像できるのです。恐らくこの盾もソロモンの威光を表現する装飾品の一部でしょう。レバノンの森の宮殿は王宮出入り口にあったことからすれば、武器庫ではなく待合室や宴会場として用いられたのではないでしょうか。
注目語句
地名①アラビア(15):英語Arabia;ヘブル語アラーブ・・・現在の西アジア
地名②タルシシュ(22):英語Tharshish;ヘブル語タルシシュ[イエロージャスパー]・・・イエロージャスパーは細かな石英の結晶が凝集して形成された鉱物で、不純物の混入によって黄色に発色したも。古代から世界中で装飾品として利用され、特に東アジアでは勾玉などがその代表例。現在のトルコ地中海岸のタルススとする説とスペイン南部のタルテッソスとする二つの説がある。