列王記第一9章-2

列王記第一9章-2(10-14節)
=本章の内容=
❷ヒラムに与えられた都市
=ポイント聖句=11,ツロの王ヒラムが、ソロモンの要請に応じて、杉の木材、もみの木材、および金を用立てたので、ソロモン王はガリラヤ地方の二十の町をヒラムに与えた。列王記第一9章-2(10-14節)
=黙想の記録=●「10,ソロモンが主の宮と王宮との二つの家を二十年かけて建て終えたとき、」とありますが、神殿には7年間、王宮には13年間、合計20年間も時間が経緯していたわけです。その間ソロモンとその高官たちは建築だけに注力していた為に、イスラエルの政治機能や宗教機能は停滞していたでしょうか。10節以降に続くソロモンの数々の業績を見る限り「停滞」と言う言葉は相応しくありません。20年間という期間についてはこう想像できるのです。「首都整備」は「技術者ヒラムと建築大臣などの高官」に一切を委ね、ソロモンとその他の高官はもっぱら地方の整備、地方と中央を結ぶインフラ整備、またソロモン帝国を飛躍的に躍進させた他国との交易の下地作りに注力していたことが本章には記されているのです。
●10~14節でヒラムが神殿・宮殿建築に用立てた木材や建築部材としての金、また多くの技術者の派遣費用を惜しみなく注いできたのは、詩慢性的な食糧不足を満たすために必要な肥沃なイスラエルの農地をそれらの代償として手に入れるためだったのです。恐らくソロモンとヒラムの間で密約がなされていたと思われるのです。ところがソロモンが代償として当てがったのはアシェル族の分割地にあった20の町でした。これらは全て山岳地帯に位置しており、食料生産には適していなかったのです。これではまさにだまし討ちです。しかしヒラムは文句をくちにしたもののそれ以上の反抗には至りません。なぜなら圧倒的な武力を持つに至ったソロモン軍を相手にできなかったのです。今までソロモンの王国とは「同盟関係」とばかり思っていたヒラムはこの時ソロモン王国の「属国」に過ぎなかったことを思い知らされるのです。ここで重要なポイントはソロモンがヒラムに代償を払ったタイミングです。つまりこの代償を払ったのは神殿建立の儀式を終えた直後だったのです。霊に燃えているのなら果たしてこんな慇懃無礼(いんぎんぶれい)なことができるのでしょうか。この短いフレーズには、ソロモンが他者に分け与えることを惜しむだけではなく、ゆっくりと貪欲に陥ったことを説明しているのです。さらにこれらの町はアシェル部族の同意を得ることなく勝手にヒラムに渡したものなのです。アシェル部族の貧弱さを良いことに強引に渡してしまうのです。このソロモンの強引さがイスラエル北部を北王国として独立させてしまう大きな要因となるのです。
語句①金百二十タラント(14):英語sixscore talents of gold(KJV);120 talents of gold[ESV],ヘブル語メイアー・キカール・ザハーブ[100と20・丸重(タラント)・金]・・・33kg×120=3960kg・・・日本での相場価格は1gで15000円。計算上594億円(推定人口3万人以上)。群馬県(人口191万人)の年度予算は約8000億円と比較すると大変な負担と言える。一説によるとこの金額はソロモンとの密約で割譲される土地の代価と言われている。この20の町はいずれも山岳地帯にありツロの食糧需給を賄うにはほど遠いと言える不毛地帯である。
=注目地名=地名①カブル(13)荒れ果てた(リビングバイブル)値打ちの無い(新共同訳):英語Cabul;ヘブル語カブール[本の装丁, 縛ること,束縛,結合;包帯,留め具]・・・アシェル族の分割地(ソロモンの治世には12行政区の1区になっていた)にある都市で、アッコ(イスラエル北部の西ガリラヤ地方に位置する北部地区にある市)の東約16kmに位置している。