列王記第一7章-5

列王記第一7章-4(7:40-45)
=本章の内容=
➌ヒラムの作品(5)灰壺と十能と鉢(6)まとめ
=ポイント聖句=40,さらにヒラムは灰壺と十能と鉢を作った。こうして、ヒラムは、ソロモン王のために主の宮でなすべきすべての仕事を完了した。
45,そして、灰壺と十能と鉢である。ヒラムがソロモン王のため、主の宮のために作ったこれらのすべての物は、磨きをかけた青銅であった。
(5)灰壺と十能と鉢
●列王記では神殿前にある「祭壇」の装飾について何も触れていません。ところが、2歴代誌4:1では「青銅の祭壇」を製造した事実だけは明言されています。「祭壇」についての記述を省略した真の理由は分かっていません。ここからは二つの私の勝手な推測です。その第一は、ヒラムと宗教指導者との確執からと言う理由です。ヒラムの作品はどれをとっても、装飾に異教(アッシリア文明)の臭いが芬々(ふんぷん)としていたのでしょう。影響が色濃く反映されていたのをイスラエルの宗教指導者等は快く思っていなかったのではないでしょうか。衆人の目が集まる犠牲をイスラエルの神に捧げる現場「祭壇」にまで異教の雰囲気を醸し出させるのは我慢ならなかったのではないでしょうか。場合によっては宗教指導者からの「待った」がかかったかもしれません。その第二は物理的な理由です。「祭壇」は犠牲を焼き尽くすほどのかなり高温になっているはずです。真鍮であったため浮彫で装飾した場合その模様は熱でかなり変形してしまうので初めから装飾を施さなかったとも考えられます。
●「灰壺と十能と鉢」とありますが、ここで言えることは道具を使って残りかすを集め、決して素手で直接それらに触れることがなかったことを表現しています。
(6)ヒラムの作品のまとめ
●41~45節はあたかもヒラムの作品目録です。どれも見栄えのする装飾で満たされています。他の帝国の神殿と比較しても見劣りする物は何もありません。しかしこれらの建造物や調度には莫大な経費と労力を要しました。モーセの幕屋とその調度品はイスラエル全部族からの積極的な主なる神様への信仰に基づく献納物でした。しかしソロモン神殿とその調度品は、強制的な徴収・徴募によってかき集められたもので信仰の一欠けらも見えないのです。この「ヒラムの作品目録」部分は一見するとヒラムの功績を讃えているようにも思えますが、列王記を書いたのは王政に批判的な預言者です。ヒラムがいくらエリート技術者であっても異教徒の文明に染まっているのです。列王記の作者がヒラムを褒めそやすとは思えません。そこでヒントになるのが「ヒラムがソロモン王のため、主の宮のため」という表現です。つまり「為政者の一人に過ぎないソロモン王を満足させるだけの功績であり、主なる神様を決して喜ばせる所業ではなかった」と言いたかったのではないでしょうか。
語句①灰壺(40):英語lavers、ヘブル語キヨール[火鉢, 洗面器]・・・犠牲の動物の焼き尽くされた後の灰を集める容器。
語句②十能(40):英語shovels、ヘブル語ヤ―[シャベル]・・・灰を集めるシャベルのような道具
語句③鉢(40):英語basons、ヘブル語ミズラク[容器]・・・灰が飛び散らない様に水を掛けるためその水を入れた小さなバケツのような容器。あるいは動物の血を入れていた容器とも考えられる。