列王記第一7章-4

列王記第一7章-3(7:27-39)
=本章の内容=
➌ヒラムの作品(3)十個の台⑷洗盤
=ポイント聖句=27,彼は青銅で十個の台を作った。それぞれの台は長さ四キュビト、幅四キュビト、高さ三キュビトであった。
29,枠にはめられている鏡板の上には、雄獅子と牛とケルビムがあり、雄獅子と牛の上下にある枠の表面には花模様が施されていた。
●10個の洗盤は可動式の台座の上に置かれていましたが、一つ一つのこの小型洗盤でさへもその中に入る水の量は300ガロン(1135リットル)で一斗缶(18リットル)で63個分が必要です。10個の小型洗盤すべてに水を満たすには一斗缶630個分が必要です。儀式を行う祭司以外にもこの雑用を行う役人が数多くいたはずです。
●民数記19:7の「洗い」の規定によれば沐浴は「宿営の外」となっていることから、海と呼ばれる洗盤もここに登場する10個の洗盤も沐浴用ではないと推測されます。また出エジプト30:18-21の「洗い」の規定よれば「祭壇に近づくときに手足を洗う」ことがこれらの洗盤の用途の一部であことがわかります。しかし手足を洗うだけに数十トンの水が使われていたわけではありません。広大な神殿用地で展開される犠牲を含む宗教儀式によって生じた「汚物や灰の類を洗浄する」為には相当量の水を利用したことでしょう。10個の洗盤が4輪が付いた台車であるのは、神殿用地の至るところを洗浄するのに適しているといえるでしょう。多人数でバケツリレーして水を運ぶ必要がなくなります。しかしこの小型洗盤も水が満杯の状態なら全体で2トン以上にもなるわけですが車輪が付いていれば1・2人程度で動かすことが可能です。
●「枠にはめられている鏡板の上には、雄獅子と牛とケルビムがあり(7:29)とありますが、鏡版に浮き彫りされた「雄獅子と牛」はアッシリア帝国で最も多用される装飾用の絵柄です。ヒラムはソロモン王の権力を誇示するためにアッシリヤの流行を取り入れたわけです。イスラエルの特異性だけを表現したければケルビムだけでよかったのに「雄獅子と牛」を同列に置いたところにイスラエル独特の絵柄「ケルビム」を追加することで「アッシリヤ帝国にはない力」を誇張したかったのでしょう。しかし、「雄獅子と牛とケルビム」を同列に描くことで、「神の民イスラエル」が「他の帝国」と何ら変哲もないことを証するようになってしまうのです。「雄獅子と牛」が表現する様にヒラムにとってもソロモンにとっても「力・功績」こそ彼らの神であることを暴露してしまっているのです。
語句①鏡板(28):英語borders(KJV)panels(ESV);ヘブル語ミスゲレフ[羽目板、車輪を固着させる部分のへり、コップなどの口をつけるヘリ]